子育て研究
Online ISSN : 2189-7581
Print ISSN : 2189-0870
5 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 川上 清文
    2015 年 5 巻 p. 3-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    本論で、筆者は心理学者・丹羽淑子によるダウン症児の発達的研究を要約している。丹羽による3 冊の著書と3 本の学術論文が展望されている。丹羽は繰り返し、ダウン症の子どもたちの多くの面の発達が定型発達児に比べ遅れることを指摘している。さらに彼女はダウン症の子どもたちの発達の個人差に言及している。そして、ダウン症の子どもたちとその母親の関係に教育的介入することの重要性を示すデータを呈示している。これらのデータは、子どもの発達を維持するために、セラピストが母親に子どもの発達の様相を示し助言を続けることが必要であることを明らかにしている。丹羽はまた、セラピストが母親に共感的理解をすることの重要性も強調している。
  • 寺村 ゆかの
    2015 年 5 巻 p. 9-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    地域子育て支援拠点は,地域の子育て家庭に対し相互交流の場を提供しそれを促進することを通して,親が主体的に育児に取り組めるよう支援することを主たる事業としている。本研究では,こうした主体的な育児への変容を育児にかかわるエンパワメント状態への変容と捉え,拠点を新規に利用し始めた母親たちの仲間づくりを活性化するためのコネクション・プログラム(6 か月以下の子どもを持つ母親対象の交流会)が,彼女らのエンパワメント状態をもたらすかどうかを検討するために,予備調査と本調査を実施した。予備調査では,ほぼ同時期に拠点を利用し始めた母親のうち,当該プログラムに参加した者と参加しなかった者4 名ずつをランダムに選び,彼女らを対象として,拠点利用開始からおよそ4 か月後に実施した半構造化面接によって,10 項目からなるエンパワメント評定尺度を導出した。本調査では,ほぼ同時期に拠点を利用し始めた母親のうち,コネクション・プログラムに参加した者と参加しなかった者を対象として,利用開始後およそ6 か月後に,上記のエンパワメント評定尺度を含む質問紙に回答するよう依頼した。その結果,参加者53 名のエンパワメント状態は,非参加者38 名のエンパワメント状態に比べて高いことが明らかとなり,拠点が提供するコネクション・プログラムには,利用者である育児早期の女性のエンパワメント状態を導く効果があることが示唆された。
  • 佐々木 由美子
    2015 年 5 巻 p. 21-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、保育園における外国籍児の適応の過程を検討することから、そこに関わる外国籍保育士による支援がひとりの外国籍児にどのような心理的効果を及ぼすのかを見出すことである。本研究では、南米系の外国籍保育士が勤務する群馬県大泉町の保育園の3 歳児クラスを対象として、そこに入園した外国籍児に焦点を当て参与観察を行った。その結果、外国籍児は、困った事や伝えたいことがあると、外国籍保育士を探して母語で意思疎通を図り、それにより気持ちを落ち着けているような場面が多く観察された。また、外国籍保護者は外国籍保育士を介して保育園との情報交換を行い、良好な連携を築き始めた。これらのことから、外国籍児やその保護者にとって自分の気持ちを伝えることのできる母語でのコミュニケ―ションは重要であり、外国籍保育士による支援が両者に安心感を与え、外国籍児の保育園への適応を促進させる心理的効果をもたらすことが示唆された。
  • ―保育者養成校の学生に対する意識調査から―
    加賀谷 崇文, 髙橋 貴志, 寺澤 美彦, 望月 雅和
    2015 年 5 巻 p. 30-40
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    現代の保育者は、保護者の子育てに関する悩みに対して援助を行うことが求められている。また、援助の際には「相談」という方法を用いることが多い。ところが、保育者の中には保護者とのコミュニケーショ ンに対して、苦手意識を持っている場合があることも明らかとなっている。本研究では、保育者養成校の学生の保護者からの相談に関する意識や、保育者になるために必要だととらえている知識・技術などを調 査した。その結果、養成校の学生の多くが、保護者の相談を受けることに自信がないことや、「経験」や「ア ドバイス」を重視していることなどが明らかとなった。また、保護者の相談を受けることに対して調査の対 象となった学生の中でも自信が無い学生は、保護者支援に対する意識が低く知識がないことや、保育者と しての視野が狭いことなどが明らかとなった。今後は、保護者支援に対する学生の意識を高めるとともに、 ソーシャルワークや心理カウンセリングの方法などを伝え、「経験」や「アドバイス」に頼らない保護者支援 の方法を学生に伝えていくことが、保育者養成を行っていくうえで重要であると思われる。
  • 渡邉 茉奈美
    2015 年 5 巻 p. 41-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,近年,育児中の母親による報告の増えつつある「虐待不安」がどのような内容の不安なのかということを明らかにすることであった。具体的には,まず,育児中の母親を対象に半構造化面接を行い, ボトムアップに「虐待不安」を捉え,そこで得られた語りをもとに虐待不安尺度を作成した。次に,虐待不安尺度の信頼性や妥当性の検討のために0-5歳児を育児中の母親1077名を対象とした質問紙調査を行い,虐待不安尺度の因子構造の把握を試みた。その結果,「虐待自己評価不安(自分の育児について「虐待」と関連 させて評価する際生じる不安) 」と「虐待他者評価不安(自分の育児について他者から「虐待」と関連させて 評価されることへの不安) 」の2因子構造が得られた。従って「虐待不安」とは,「虐待」という観点から自身 の育児をネガティブに評価し不安を抱くという場面で,その評価を育児を行う当事者として行っているか, 他者の視点を含めて行っているかという2つの概念軸から捉えることができることが示唆された。
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