日本臨床腎移植学会雑誌
Online ISSN : 2760-1714
Print ISSN : 2187-9907
1 巻, 1 号
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序文
総説
  • ─免疫学的禁忌の克服と臨床応用の普及─
    高橋 公太
    2013 年1 巻1 号 p. 3-16
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    わが国は,献腎提供が少ないので,われわれは,腎移植の適応を拡大するために1989年,わが国で初めてのABO血液型不適合腎移植を実施した。それ以来この四半世紀に2,500例以上の不適合腎移植が実施された。2001年以降の1,768例の生着率をみると1年で96%,5年で90%,および10年で84%であり,ABO血液型適合腎移植の成績と遜色なくなっている。その結果,不適合腎移植の割合は生体腎移植の約30%を占めている。さらにこの成果は,他の臓器移植にも応用され,肝移植では700例以上,最近では膵移植にも実施されている。Karl Landsteinerが1901年にヒトに血液型があることを発見して以来,この移植をするとただちに超急性拒絶反応が発生して移植腎機能が失われるので,免疫学的に禁忌とされてきた。しかし,疫学調査の結果,ABO関連による急性抗体関連型拒絶反応は経験するものの,24時間以内に発生する超急性拒絶反応はみられなかった。今回は,なぜ超急性拒絶反応が発生しないのか,その謎に迫りたい。

  • 剣持 敬, 伊藤 泰平, 圷 尚武, 浅野 武秀, 星長 清隆
    2013 年1 巻1 号 p. 17-23
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    膵・腎同時移植は重症1型糖尿病腎不全に対する根治療法として1966年に初めて実施された。1980年代シクロスポリンの登場で,成績は向上し,現在は腎移植,肝移植と同等の成績である。本邦では1984年脳死膵・腎同時移植が行われたが,1997年の臓器移植法施行後に本格的に開始された。2013年4月末までに189例の膵臓移植(脳死161例,心停止2例,生体26例)が実施された。本邦ではマージナルドナーが多いが,欧米と遜色ない好成績を示している。藤田保健衛生大学では2013年5月現在,26例の膵臓移植(脳死24例,生体2例)を施行した。2012年8月以降の7例の脳死膵・腎同時移植症例では,大きな合併症なく退院し,膵,腎ともに良好な機能を維持している。千葉東病院にて施行した16例の生体膵・腎同時移植症例では14例(87.5%)がインスリン離脱,全例透析離脱した。ドナーも糖尿病の発症はみられていない。脳死および生体SPKは,糖尿病性腎症V期の治療法として極めて有効である。

  • 升谷 耕介, Parmjeet Randhawa
    2013 年1 巻1 号 p. 24-29
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    BKウイルス腎症は腎移植患者における重要な感染症の1つである。本症でみられる尿細管間質性腎炎はT細胞関連拒絶との鑑別が困難な場合も多く,正確な診断のためには血漿や尿を用いた核酸同定検査,および生検組織を用いたウイルス特異的な染色が必要である。ウイルスが感染した尿細管上皮細胞は特徴的な核内封入体を伴い,障害が進むと上皮細胞は壊死に陥り,尿細管基底膜から脱落する。間質には炎症細胞浸潤を伴い,進行に伴い間質線維化と尿細管萎縮を認める。本症の組織学的ステージ分類については,2001年にDrachenbergらにより提唱され,米国移植学会が踏襲している炎症を重視した分類と,2009年のBanff会議において提唱された,尿細管細胞の壊死・脱落を重視する分類がある。現在,Banffワーキンググループにより後者の妥当性について検証が行われている。本稿では,BKウイルス腎症の病理所見と組織分類,および自験例を用いた予後不良因子の解析結果を概説する。

  • 梅木 恵理, 萩原 邦子, 植田 江梨子, 野口 文乃
    2013 年1 巻1 号 p. 30-38
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    献腎移植の少ない本邦では献腎移植希望者は長期透析を余儀なくされる。登録待機中に合併症を有する患者の移植手術は生命予後につながる危険が高く,登録待機中の管理が重要とされているが,登録待機者の管理は各移植施設に任されているため,その管理状況は異なる。今回,12施設の認定レシピエント移植コーディネーターを対象に献腎移植に関する現状調査を行い,東・中・西日本地域に分けて分析した。各地域において献腎移植システムに相違点が認められたが,認定レシピエント移植コーディネーターの役割に相違点は認められなかった。献腎移植においてはレシピエント移植コーディネーターが中心となって,他職種と協働して自施設の登録待機者管理を行うことが,移植医療の質の向上と安全で円滑な移植医療を実践する上で重要な役割といえる。

  • 芦田 明, 吉田 瑤子, 範 新萍, 松本 雅則, 服部 元史, 宮田 敏行, 藤村 吉博
    2013 年1 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    溶血性尿毒症症候群(HUS)は微小血管症性溶血性貧血,血小板減少,急性腎障害を三主徴とする疾患で90%以上は志賀毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症に関連する典型的HUSである。残りの約10%がいわゆる非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)であり,補体制御因子異常症を含むさまざまな原因によって生じる。典型的HUSと異なりaHUSの予後は悪く,頻回に再発し末期腎不全に陥る。とくに腎移植後の再発率が高いことが問題で,補体制御因子異常症の種類によるとされ,aHUSを正確かつ迅速に診断することは非常に重要である。今回,奈良県立医科大学におけるADAMTS13活性測定,溶血試験,抗H因子抗体測定による変異遺伝子の推定および国立循環器病研究センターで遺伝子解析による最終診断に至る系が確立した。本解析系では解析開始より診断確定まで約1ヵ月と非常に短期間での診断が可能となった。

原著
  • 大月 和宣, 圷 尚武, 丸山 通広, 西郷 健一, 長谷川 正行, 青山 博道, 松本 育子, 浅野 武秀, 剣持 敬, 伊藤 泰平, 松 ...
    原稿種別: 原著
    2013 年1 巻1 号 p. 45-49
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    2004年4月から2012年10月までの腎移植323例中21例(6.5%)のニューモシスチス肺炎(PCP)を経験した。診断ではβ-D-glucanにより早期に診断しPCRで確定診断を行う。治療ではステロイドを併用したST合剤1日9錠を上限に体重と腎機能により減量する。病棟および外来での治療と予防を同時に進行させることがPCPを封じ込めるには重要である。1年間のST合剤による予防内服終了後に7例のPCPアウトブレイクを発症したことにより,腎移植後のPCPは重症例が多く予後不良のため1年間以上のST合剤1日1錠の予防内服が原則と考えられた。

  • 林田 有史, 上田 修史, 土肥 洋一郎, 呉 秀賢, 末永 武寛, 松岡 祐貴, 加藤 琢磨, 平間 裕美, 杉元 幹史, 筧 善行, 乾 ...
    原稿種別: 原著
    2013 年1 巻1 号 p. 50-54
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    【目的】移植前の透析期間が生体腎移植に及ぼす影響について検討した。【対象・方法】当院で生体腎移植を施行した,A群:透析歴5年以上の生体腎移植患者(15例)とB群:先行的腎移植患者(29例)の治療成績を比較検討した。【結果】レシピエントの平均年齢はA群:51.3歳,B群:45.7歳,A群の透析期間は137.7ヵ月(61~285ヵ月,中央値94ヵ月)であった。ドナーの平均年齢はA群:60.7歳,B群:58.1歳であった。観察期間中央値はA群:42(14~103)ヵ月,B群:26(8~113)ヵ月であった。移植後の動脈硬化性疾患をA群:20%,B群:3.4%に認めた(p=0.07)。両群間で,生着率,拒絶反応,CMV感染に有意な差を認めなかった。【結論】当院の短期の検討では透析歴5年以上の患者と先行的腎移植患者の治療成績の間に有意な差を認めなかったが,移植前透析群において動脈硬化性疾患が多い傾向にあった。

  • 山内 淳司, 八木下 尚子, 安藤 仁, 佐藤 知雄, 新谷 奈津美, Ariella Coler-Reilly, 今井 直彦, 中澤 龍斗 ...
    原稿種別: 原著
    2013 年1 巻1 号 p. 55-60
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    Human T-lymphotropic virus type I(HTLV-1)感染者における腎移植の安全性評価を目的とし,文献収集により成人T細胞白血病(ATL)およびHTLV-1関連脊髄症(HAM)の発症について解析した。さらに,免疫抑制療法によるATL,HAM発症リスク増加への影響を検討するため,ステロイド治療によるHTLV-1プロウイルス量の変動を解析した。その結果,腎移植後にATL11例,HAM6例の症例報告を認め,そのうちATL2例およびHAM6例では移植が感染源であった。また,ATL11例のうち9例は若年発症であり移植との関連性が示唆された。またステロイド治療前後のプロウイルス量に有意な変化はなかった。HTLV-1陽性ドナーからの腎移植はレシピエントに感染および関連疾患発症の危険がある。またHTLV-1陽性レシピエントの関連疾患発症率については症例数が少ないため明確なエビデンスは得られず,腎移植の適応については慎重な判断が求められる。

  • 清水 朋一, 野崎 大司, 尾本 和也, 石田 英樹, 田邉 一成, 橋本 恭伸
    原稿種別: 原著
    2013 年1 巻1 号 p. 61-68
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    【緒言】腎移植後の移植腎尿管結石に対する結石破砕術の経験を報告する。【症例1】64歳男性。2006年12月,中国で渡航献腎移植施行。移植腎盂尿管移行部狭窄にて移植腎盂・自己尿管新吻合術施行。術中より尿管ステント留置。2008年3月10日尿管結石の付着により尿管ステント抜去不可能となった。2008年3月31日,経皮的腎盂結石破砕術(percutaneous nephrolithotomy:PNL)施行し結石を一部破砕採石し,尿管ステント抜去。2次性副甲状腺機能亢進症が結石形成の原因と診断し選択的副甲状腺腺腫摘除術を施行。その後3回の軟性尿管鏡およびholmium yttrium-aluminum-garnet(Ho-YAG)laserを使用したPNLにて結石を完全破砕,完全採石した。【症例2】66歳男性。2004年7月,中国で渡航献腎移植施行。2011年1月4日移植尿管結石嵌頓による腎後性急性腎不全と診断され紹介,移植腎尿管に尿管ステント留置。2011年10月31日,軟性鏡下経尿道的尿管結石破砕術(flexible transurethral ureterolithotripsy:f-TUL)施行。Ho-YAG laserを用いて結石破砕しバスケット鉗子で摘出した。その後新たな移植尿管結石も認め2回f-TUL施行。結石は完全破砕した。【結語】軟性尿管鏡とHo-YAG laserの出現により,移植尿路結石の治療は格段に進歩している。

  • 土屋 朋大, 堀江 憲吾, 永井 真吾, 安田 満, 横井 繁明, 仲野 正博, 出口 隆, 伊藤 慎一
    原稿種別: 原著
    2013 年1 巻1 号 p. 69-73
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    近年の腎移植医療の進歩,生着率の向上とともに腎移植後の妊娠・分娩例が増加してきており,今後もさらなる増加が予想される。腎移植後の女性患者の妊娠分娩は,比較的安全となったもののハイリスクの範躊に属する妊娠には相違ない。今回,当科において腎移植後妊娠で分娩となった6症例,計8分娩について検討を行った。妊娠時年齢は平均32.9(25~38)歳,移植後妊娠までの期間は平均38.8(12~88)ヵ月,妊娠時平均血清クレアチニン(Cre)は0.92(0.79~1.09)mg/dLであった。分娩様式としては,経膣分娩1例,帝王切開7例であり,平均在胎週数37週,平均出生時体重は2,772(2,166~3,425)gであった。全例で重篤な合併症を認めず,出産時奇形・死産ともに認めなかった。一定の基準を満たす場合に計画的に妊娠することで,リスクを最小限にとどめることができ,安全に妊娠・出産が可能であると考えられる。

臨床研究報告
  • 祖父江 理, 乾 政志, 原 大雅, 藤田 拓朗, 野上 浩子, 河上 和代, 守時 政宏, 西岡 聡, 西島 陽子, 森脇 久美子, 林田 ...
    原稿種別: 臨床研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 74-77
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    【目的】近年,生体腎移植ドナーの適応拡大に注目が集まっている。今回われわれは当院でのマージナルドナー(MD)からの腎移植成績を検討することで,当院の適応基準が適正かどうかを検証した。【方法】当院にて生体腎移植後の83例の生体腎移植症例のうち,年齢,eGFR,高血圧,肥満の各因子について,当院における適応内で提供を行ったMD群とマージナル因子を持たない非MD群の群間で移植成績を比較した。【結果】83例中48例ものドナーが何らかのマージナル因子を有していた。60歳以上のドナー,eGFR<70mL/minのドナーからの移植ではドナー,レシピエントともに腎機能は低値で推移したが,生着率やドナーの腎機能回復率は対照群と同等であった。ドナーの高血圧,肥満は拡大適応内では移植成績に影響を与えなかった。【結語】当院の基準での生体腎移植において,移植成績は短期的には確保されていた。今後も継続的な観察が必要であるが,当院の適応基準はおおむね適正であった。

  • ─移植1年まで─
    佐藤 滋, 新岡 丈典, 加賀谷 英彰, 沼倉 一幸, 井上 高光, 斎藤 満, 小峰 直樹, 秋濱 晋, 成田 伸太郎, 土谷 順彦, 羽 ...
    原稿種別: 臨床研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 78-81
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    【目的】プログラフ(Tac-BID)と同等のトラフ値(Cmin)を得るにはグラセプタ(Tac-QD)は多くの投与量が必要であることが示唆されている。しかし,同じCminが同等の24時間血中濃度時間曲線下面積(AUC0-24)となるか否か,十分に検討されていない。【方法】CYP3A5 のアレル頻度を同一にしたTac-BIDとTac-QD各24例で服用直後,移植後1月,1年の薬物動態と薬理遺伝学を比較した。両薬とも初期投与量は0.2mg/kg/dayとした。【結果】両群の移植後1年までの腎機能に差はなかった。投与量補正CminとAUC0-24は服用直後から1年後までに2倍になった。しかし,投与量補正CminはTac-QDが常に低値であったが,投与量補正AUC0-24は両群間で差がなかった。AUC0-24/Cminの相関性はいずれも良好であった。CYP3A51/3 多型はTac-QDの薬物動態に強く影響していた。CYP3A5 expresserとnon-expresserでは,両者とも投与量補正CminはTac-QDが低かったが,AUC0-24はCYP3A5 expresserのみ低値であった。【結論】Non-expresserでは,目標Cminがやや低値でもTac-BIDと同等のAUCが得られる可能性がある。

  • 岡本 雅彦, 片岡 桂子, 小田垣 美江子, 平野 美香子, 神谷 エリカ
    原稿種別: 臨床研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 82-85
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】消化器癌(胃/大腸癌,膵臓癌,胆道癌)の早期発見を目的とした網羅的遺伝子発現解析による「マイクロアレイ血液検査」を腎移植患者のがん検診へ導入することが可能か検討する。【方法】2012年6月から12月までに当施設で本検査を施行した29名(腎移植患者5名,健常者24名)を対象とし,末梢血液細胞の発現量の変動したRNA数の測定,パターン分析,階層クラスタリング解析により消化器癌有無の判定を行い,腎移植患者と健常者で比較検討した。【結果】消化器癌の存在判定(最終判定)は29名すべて陰性であった。RNAの平均変動数は腎移植患者で有意に多かったが,パターン分析と階層クラスタリング解析では,いずれも腎移植患者で陽性側に傾く傾向にあるものの,健常者と比べ有意差は認めなかった。【結論】本検査法は低侵襲,高感度で特異性も高く早期がんの発見が可能,特定臓器に絞られたリスクが提示されるなどの利点があり腎移植患者の早期がん検診のオプションとして期待される。

  • 安藤 忠助, 岩崎 和範, 瀬治山 伸也, 住野 泰弘, 野村 威雄, 佐藤 文憲, 三股 浩光
    原稿種別: 臨床研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 86-88
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】腎移植後の慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)に対するミノドロン酸水和物(MAH)の有効性についての臨床試験短期成績を報告する。【対象と方法】腎移植後成人17名を対象に薬剤添付文書にしたがいMAH50mg錠を4週に1回投与し,定期的な骨密度,骨代謝マーカー,副甲状腺ホルモンの測定で治療効果を判定した。【結果】患者は移植後1年未満の男性3名,移植後1年以上経過した男女各7名,平均観察期間は10.3ヵ月であった。骨密度では2例が骨粗鬆症と診断されたが骨代謝マーカーでは15例が骨折の高リスク群であった。MAH投与6ヵ月後の骨折の高リスク群は6例に減少していた。特記すべき副作用はなかった。【結論】MAH50mg錠はアドヒアランス向上が期待でき,腎移植後CKD-MBDに有用である。KDIGOの記載に加え,移植後1年以降も骨密度と骨代謝マーカーを組み合わせたCKD-MBDの診断治療は重要である。

症例報告
  • 瀬戸 親, 野原 隆弘, 宮城 徹, 山村 雄太, 志田 しのぶ, 篠崎 康之, 山端 潤也, 川端 雅彦, 上田 哲之, 宍戸 清一郎
    2013 年1 巻1 号 p. 89-92
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    2012年6月当施設において,本邦初の6歳未満脳死ドナーから60歳超レシピエントへの献腎移植術を行った。2腎を分割することなく1人に移植するen block kidney transplantationを行い,術後5日目の血中Cr 0.7mg/dL,10ヵ月後の血中Cr 0.51mg/dLと良好な経過をたどっている。欧米の大多数例をもとに,ドナー体重15~20kgがsingleあるいはen block kidney transplantationを選択する境界と考えられる。今後,臓器資源の有効利用を考慮して,脳死ドナーでかつレシピエントが小さめの体格であれば,ドナー体重15kg以下でもsingle kidney transplantationを検討する余地がある。

  • 花井 孝宏, 寺西 淳一, 高本 大路, 石田 寛明, 古谷 一裕, 服部 裕介, 野口 和美, 槙山 和秀, 窪田 吉信
    2013 年1 巻1 号 p. 93-96
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    症例は44歳女性。39歳時に献腎移植を施行され,移植後3年時の生検で慢性抗体関連拒絶と診断されたが,移植後からウイルス感染を反復していたため免疫抑制剤を増量できず,S-Crも安定していたため経過観察とされていた。しかし,移植後4年より蛋白尿が顕在化,浮腫も出現したためエベロリムスが追加された。その後蛋白尿や浮腫は改善し,1年5ヵ月経過した現在もS-Cr 2.5mg/dL前後と安定して経過している。

  • 西山 慶, 浅野 達雄, 菅原 典子, 石塚 喜世伸, 近本 裕子, 秋岡 祐子, 本田 一穂, 服部 元史
    2013 年1 巻1 号 p. 97-100
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    腎移植後には移植腎機能障害に伴ってさまざまな原因による蛋白尿が出現する。私たちは,移植12年後に蛋白尿を認めた小児2例を経験し,その成因を臨床組織学的に検討したので報告する。症例:16歳および15歳男児。それぞれ4歳,3歳時に父をドナーとする生体腎移植を行った。良好な移植腎機能を獲得したが,14歳および15歳で出現した蛋白尿が漸増したため腎生検を施行した。腎組織には,ともに軽度~中等度の間質線維化・尿細管委縮と,分節性硬化を伴う巨大糸球体を認め,ネフロン量減少による糸球体過剰濾過を機序とした蛋白尿漏出が示唆された。さらに,蛋白尿が成長スパートに一致して漸増したことから,思春期の単一糸球体あたりの血流量増加が糸球体過剰濾過の増幅要因となり,蛋白尿漸増に関与したと考えた。

  • 神澤 太一, 瀬戸口 誠, 斉藤 直, 溝口 翔悟, 羽田 圭佑, 東間 紘
    2013 年1 巻1 号 p. 101-102
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    日本における結核の発生率は先進国のなかで高率であり免疫抑制状態の患者にとって重要な感染症である。下部消化管出血精査により腸結核と診断された1例を経験したので報告する。症例は60歳代男性で慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性腎不全に対し1993年1月透析導入した。2005年1月血液型適合生体腎移植術を施行した。2012年7月持続する38度台の発熱と食欲不振を主訴に外来受診し精査目的に入院となった。第4病日より下血を認め下部消化管内視鏡を施行したが活動性出血は認められず大腸憩室出血と考えられた。新鮮血の下血が持続したため第8病日に再度下部消化管内視鏡を施行した。回盲部から約30cm口側に全周性の潰瘍病変を認め出血源と考えられた。生検の結果,類上皮肉芽腫,異型多核巨細胞を認め,チールネルセン染色陽性,便中結核菌PCR陽性であり腸結核と診断した。全身状態が安定した後,結核専門病院へ転院となった。

  • 白井 博之, 角田 隆俊, 深川 雅史, 中村 道郎
    2013 年1 巻1 号 p. 103-106
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    症例は32歳,男性。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)のため16年前から透析導入となっている。今回,母親をドナーとした生体腎移植術を予定した。術前検査で,IgA欠損症を合併していることが判明し,新鮮凍結血漿(FFP)などIgAを含む血液製剤を使用できなかった。FSGSの原因が30〜50kDaの循環因子であることが指摘されており,凝固因子を保持しつつ,この分子量の物質を除去できる膜型血漿分離器(エバキュアー )を用いた選択的血漿交換を行い,腎移植術を行った。選択的血漿交換は,FFPを使用できない FSGS症例の術前処置として有用である可能性が示唆された。

  • 甲斐 文丈, 石井 保夫, 永田 仁夫, 谷島 崇史, 鈴木 孝尚, 杉山 貴之, 大塚 篤史, 高山 達也, 古瀬 洋, 大園 誠一郎
    2013 年1 巻1 号 p. 107-110
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【緒言】同一ドナーからの持ち込み緑膿菌感染症をきたした献腎移植の2例を報告する。【症例概要】ドナー:51歳女性。蘇生後脳症。心停止下腎臓採取。移植前の尿培養で緑膿菌,MRSAが検出。症例1:66歳男性。術前感染症なし。2012年,献腎移植術施行(ドナー左腎)。術直後にドナー尿培養の結果が判明し,抗菌剤を変更。術後,血液培養から緑膿菌,創部培養から緑膿菌とMRSAが検出。骨盤内膿瘍に対し開放ドレナージを施行,術後76日目に退院。症例2:38歳男性。術前感染症なし。献腎移植術施行(ドナー右腎)。術後,尿培養・血液培養・創部培養から緑膿菌が検出。抗菌薬の変更とともに,MRSAも想定しVCMも併用。骨盤内膿瘍に対するドレナージは施行せず,抗菌剤投与を継続。術後66日目に退院。【結論】少なくとも重症な難治性感染に関しては,ドナー発生前後の可及的早期の段階で否定しておく必要がある。

看護研究報告
  • 伊藤 智恵子, 百々 菜津子, 門脇 眞希子
    原稿種別: 看護研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 111-114
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
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    先行的腎移植を行ったドナーが意思を決定した経緯を知ることは,ドナー側への情報提供の改善につながると考え,ドナーの情報収集方法,時期,意思決定要因を調査した。結果,ドナーはレシピエントが保存期腎不全までの時期に腎内科医より腎移植の情報を得ており,治療選択に関わっていた。ドナーの意思決定要因としてレシピエントを助けたいという強い意志が見受けられ,自発性や積極性に繋がっていた。家族やキーパーソンへ,その立場と意志を尊重した情報提供ができるよう,レシピエントにかたよりすぎない情報発信も必要と考える。

コーディネーター研究報告
  • 成田 健之介
    原稿種別: コーディネーター研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 115-117
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】学校現場では,命の教育や人権教育の重要性が強く叫ばれている。しかし,臓器移植の啓発活動をするにあたって,学校関係者からは,「移植を強く薦めるような内容は困る。」「臓器提供意思表示カードの記載を強いるのではないか。」という不安と不信感が聞かれることが多い。これを解消するための実践に取り組んだ。【方法と結果】学校関係者に対し,移植に関しての情報を提供することや事前に十分打ち合わせすることが不可欠である。これまでの5年間で,教職員対象の各種研修会や教師を目指す学生への講義,中学校での全校生徒対象の命の教育,中学校社会科や高等学校公民科での出前授業,高等学校衛生看護科や医療系短期大学などでの啓発活動を実施した。【結論】移植医療の推進を前面に出すよりも,移植医療を通した命の教育を行うことによって,臓器移植に対するより深い理解が得られ,臓器移植に対する負の先入観を払拭することができる。

  • 中目 真理子, 斎藤 由美子, 櫻井 裕子, 佐々木 秀郎, 力石 辰也, 河原崎 宏雄, 今井 直彦, 柴垣 有吾, 木村 健二郎
    原稿種別: コーディネーター研究報告
    2013 年1 巻1 号 p. 118-123
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2025/08/29
    ジャーナル 認証あり

    【目的】生体腎移植者との交流を通じて献腎待機者への情報提供とは何か,待機者にとっての情報交換会の意義を検討した。【対象と方法】事前調査は献腎待機者68例を対象に郵送による記名アンケートを行った。情報交換は献腎待機者と生体腎移植者が同席するグループミーティング方式で行った。開催後調査は終了後に無記名アンケートを行った。【結果】献腎待機者が話し合いたいテーマは,移植後の生活指導が50%を占め,ミーティングは生体移植者と一緒に話したい希望が52.9%となった。開催後アンケートは無記名式のため献腎待機者のみの感想が反映できなかったが,記載内容から献腎待機者の回答と思われる感想意見を抽出した結果,生体腎移植者の体験談を聴くことで移植への再認識と交流会に満足感が得られたと考察された。【結論】腎移植に対する意思の継続と移植への不安を軽減させるための一助として,われわれの行った献腎待機者と移植者との情報交換会は意義あるものと思われた。

謝辞・編集後記
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