項目反応理論(IRT: item response theory)は,TOEFLのような試験などで広く使用されている.それにもかかわらず,日本の教育機関ではあまり知られていない.これまでの研究で,項目反応理論は古典的テスト法よりも優位であることが多くの試験で明らかになっている.しかし,数学の試験のように問題数に量的制約がある場合などでは,より公正に公平に学生能力を評価する方法がこれまで以上に必要とされている.ここでは,学生能力および問題の難易度の両方に確率変数を仮定したときの学生能力値を推定する方法として,stress-strengthモデル(SS)にベイズ理論を加えたモデル(SSB)を提案する.SSとSSBでは,能力に対してばらつきを表すパラメータを含んだ確率変数を仮定しているため,従来のIRTモデルによる学生の能力推定値だけではなく,そのばらつきの情報も与えている.しかしながら,特にSSBでは,パラメータ数の増加にもかかわらず,パラメータ推定値は従来のIRTモデルのそれと矛盾せず,良好な推定結果を保っている.
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