1997年から,数理計画法を用いた判別分析の種々のモデルを研究してきた.最初,整数計画法(Integer Programming,IP)を用いた誤分類数最小化(Minimum Misclassification Number,MMN)基準による最適線形判別関数(Optimal Linear Discriminant Function,OLDF)のIP-OLDFと線形計画法(Linear Programming,LP)を用いた誤分類されるケースの判別超平面からの距離の和(L_1ノルムという)を最小化するLP-OLDFという2つの判別モデルを考えた.IP-OLDFは,データと判別係数の両方の空間で解釈できる.このため,判別係数とMMNの関係,MMNの単調減少性,MMNによる他の判別関数の評価などが行えた.しかし,整数計画法を用いているため計算時間がかかることと,一般位置にないデータ(Haar条件を満たさない)で問題もわかった.LP-OLDFは,この分野で広く研究されているL_1ノルム型の判別モデルの一種である.2003年に,LP-OLDFで得た解を参考に,IP-OLDFの探索領域を狭める高速なIPLP-OLDFを開発した.2005年以降,マージン概念を導入した改定IP-OLDFを考えることで一般位置にないデータにも対応できた.これによって,2万件の正規乱数データとリサンプリングデータを用いた評価が可能となった.SVMとの比較を行うことで,ソフトマージン最大化SVMが,改定LP-OLDFを用いて,サポートベクタに選ぶケースを逐次選択する高速なアルゴリズムを考えた.これを用いると,ソフトマージン最大化SVMより良い結果,場合によりMMN基準による判別でないにもかかわらずMMNを選ぶことが可能になった.また,MMNを用いた新しい変数選択法を提案する.これとあわせて,数理計画法による判別モデルの歴史を概観した.
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