医学研究では, リアル・ワールド・データ (real world data) に代表されるビッグデータを用いて, 新規治療が既存治療に比べて顕著に有効な部分集団を抽出する方法, すなわち, サブグループ抽出法 (Subgroup identification method) が注目されている. これらの研究では, CART (Classification and Regression Trees, Breiman et al., 1984) などのプロダクション・ルールで解釈可能なモデルに基づいて提案されているものが多く, 生存時間データに対する方法も例外ではない. 例えば, Negassa et al. (2005) は, 比例ハザード・モデルの治療×共変量の交互作用に対して樹木モデルを仮定し, RECPAM (Ciampi et al., 1988, 1991; Ciampi & Thiffault, 1988) のアルゴリズムのもとでモデルを構築している. また, Kehl & Ulm (2006) は, Bump Huntingの1つであるPRIM法 (Patient Rule Induction Method; Friedman & Fisher, 1999) に基づいて新治療に対するresponderを抽出している (以下, SPRIM法と呼ぶ). さらに, Lipkovich et al. (2011) は, ルール・ベースでの再帰的アルゴリズムを用いてサブグループを抽出する方法, すなわち, SIDES (Subgroup Identification based on Differential Effect Search) 法を提案している. ただし, これらの方法では, サブグループ内における新治療と既存治療の比例ハザード性を仮定しなければならない. 一方で, 免疫チェックポイント阻害剤などの臨床試験では, 治療群間の比例ハザード性の仮定を満たさないことは広く知られている.
本論文では, 比例ハザード性の仮定を満たさない場合にも適用可能なBump Hunting法を提案した. そこでは, 治療効果の評価基準にサブグループの境界内平均生存時間 (RMST : Restricted Mean Survival Time) の差を評価基準に用いた. RMSTに基づく生存時間PRIM法の有用性を文献事例により提示し, 性能を数値検証により評価した. その結果, RMSTに基づく生存時間PRIM法はSPRIM法およびSIDES法に比べてRMSTが高いサブグループを適切に捉えることが示された.
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