共変量を生存時間分布のハザード関数に結合させるハザード・モデルは,乗法型モデルと加法型モデルに大別できる.生存時間研究において,代表的に利用されている比例ハザード・モデルは乗法型モデルの特殊な場合に相当する.本稿では,乗法型と加法型を包括するモデル(データ適応型ハザード・モデル)のあてはめを通して,共変量の影響を乗法型モデル,とくに比例ハザード・モデルで評価することの適切性を検討する.さらに,乗法型モデルの枠内で比例ハザード・モデルの適切性を診断するために,比例ハザード・モデルにおける線形予測子を加法予測子に拡張したモデル(一般化加法比例ハザード・モデル)のあてはめを検討する,この一般化加法比例ハザード・モデルと比例ハザード・モデルのあてはめを対比して,共変量の影響を比例ハザード・モデルで表現することの適切性を二三の実際例で評価する. データ適応型ハザード・モデルは乗法型モデル,とくに比例ハザード・モデルの適合度診断,および一般化加法比例ハザード・モデルのあてはめは比例ハザード・モデルの「線形性」の仮定の点検に有用であることを示唆する.
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