知的ファジィコンピューティングの発想の背景には,日常言語学派による20世紀の言語観がある.それは,言語の日常的使用にこそ言語の本質が見い出せると主張するものである. 私は「ヒトの知」は「言語の使用」によって生み出されたものであると考える.従って,知的システムの実現を考えるとき,言語自体あるいはヒトの言語能力と直接的連関においてでなければならない.ファジィコンピューティングは「言語の曖昧性」への着眼,「言語によるモデリング」への考えという2点において言語と連関している. 一方,ヒトの言語システムにおいて,文法システムではなく,意味のシステムとして言語を扱う理論の中で現在最も強力といわれているのは,ハリデーが提案している選択体系機能言語学(Systemic Functional Linguistics)である.知的ファジィコンピューティングのパラダイムの中では,言語は情報の意味処理のためのメタ言語として捉えられ,選択体系機能言語学はメタ言語の意味解釈の理論である.知的コンピューティングではファジィコンピューティングの技術を利用しつつ,言語の意味処理をすることになるが,このためには大規模状況データベースが必要となる.ヒトの活動領域の数が有限であることを考慮すると,このデータベースの構築は夢ではない.
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