日本CT技術学会雑誌
Online ISSN : 2434-2750
Print ISSN : 2434-2769
9 巻, 1 号
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原著
  • 范 睿恒, 木暮 陽介, 稲毛 秀一, 佐藤 英幸, 横田 卓也, 工藤 晃, 富澤 信夫
    原稿種別: 原著
    2021 年 9 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    重要な要点

    1) 本研究のdual energy computed tomography(DECT)では,3-material decomposition 法に関する解析がユーザーに開放されているため,各種パラメータの関係性およびその原理を解明することができる.

    2) 仮想ヨード除去画像virtual non-contrast(VNC)及び仮想カルシウム除去画像virtual non-calcium(VNCa)は,仮想単色X 線画像virtual monochromatic imaging(VMI)をベース(basis image)として作成されるため,画質はVMI のノイズ量に大きく左右される.

    3) パラメータ設定画面に入力するVMI の高keV と低keV のエネルギー域は広げるほどいいわけではなく,VNC 及びVNCa のCT 値及びstandard deviation(SD)値のバランスを考慮した上で設定することが重要である.

    4) 外挿するヨードとカルシウムの傾きは,入力した2 種類のVMI のエネルギーによって既知の傾きとして求められるため,安易に物質弁別効果のために変更してはいけない.

    5) プロットする基準物質の組合せもVNC 及びVNCa のCT 値及びSD 値のバランスを考慮した上で設定することが重要である.

    要旨

    【目的】本研究は3-material decomposition 法に関する画像解析パラメータの関係性及びその原理を解明する.そして,パラメータの調整に着目し,血液・ヨード及び血液・カルシウムにおけるVNC 及びVNCa の画質改善及び弁別効果の向上を目的とした.

    【方法】マルチエナジーCT ファントムで撮影を行った.挿入物は3 種類の血液,2 種類の血液+ヨードの混合物,2 種類のカルシウム,脂肪,水,脳,合計10 本の固体ロッドとした.DECT で取得されたraw data より,40〜135 keV の範囲でVMI を作成した.画像解析パラメータの検討は,①VMI におけるエネルギー毎の各固体ロッドのCT 値とSD 値を計測した.②計測された結果から40〜80 keV の範囲内で高keV と低keV の組合せを変化させ,VNC 及びVNCa を作成し,対象とする固体ロッドのCT 値及びSD 値を計測した.③最適なVMI のエネルギー組合せ下での各基準物質の組合せを変化させ,VNC 及びVNCa を作成し,対象とする固体ロッドのCT 値及びSD 値を計測した.

    【結果】①全ての固体ロッドにおいて,60 keV 時のVMI のSD 値が最も低かった.②最適なVMI のエネルギー組合せは60 keV と70 keV であり,その際のヨードおよびカルシウムの傾きはそれぞれ0.70,0.78 であった.③最適な基準物質の組合せは脳と血液であった.

  • 影山 凌太, 佐藤 和宏, 茅野 伸吾, 高野 博和, 齋藤 春夫
    原稿種別: 原著
    2021 年 9 巻 1 号 p. 6-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/22
    ジャーナル フリー

    重要な要点

    1) VNC 画像のCT 値の精度には,DE 比(高管電圧画像のCT 値に対する低管電圧画像のCT 値比)が影響する.

    2) ヨード濃度が10 mg/ml を超える領域では,VNC 画像のCT 値の精度の向上のために線質硬化補正が必要.

    3) ヨード濃度が10 mg/ml 以下の領域では,線質効果補正を行ってもCT 値の精度向上は見込めない.

    4) 収集管電圧の選択がCT 値の精度に与える影響は小さい.



    要旨

    【目的】3-material decomposition のアルゴリズムを推測することで,仮想単純 (VNC) 画像の解析誤差を抑制する方策を明示する.

    【方法】1.0~40 mg/ml の9 種類の濃度に希釈した造影剤を直径20 cm のファントムに挿入しDual energy 撮影した.管電圧の設定は80-Sn140 kV および100-Sn140 kV(Sn は錫フィルタ)とした.解析用画像を線質硬化補正有りの関数 (D33s) と無しの関数 (D30s) にて再構成した.解析時の線質硬化補正であるIodine BHC 有りと無しでそれぞれの画像を解析し,VNC 画像の希釈造影剤領域のCT 値を計測した(以下,実測値).また,アルゴリズムを推測してVNC 画像の希釈造影剤のCT 値を算出し(以下,計算値),実測値と比較した.解析用画像から高管電圧画像のCT 値に対する低管電圧画像のCT 値比(以下,DE 比)を算出した.

    【結果】Iodine BHC はCT 値の精度に影響しなかった.計算値と実測値はすべての濃度域でおおよそ一致し,10 mg/ml を超える濃度域ではほぼ一致した.D30s では高濃度域ほど誤差は大きくなり,最大誤差は80-Sn140 kV で46.6 HU,100-Sn140 kV で58.2 HU であった.D33s では線質硬化の補正効果により最大誤差は80-Sn140 kV で6.9 HU,100-Sn140 kV で13.2 HU であった.解析用画像のDE 比が装置既定のDE 比に近いほど 実測値はゼロに近づいた.

    【結語】VNC 画像の精度低下は,線質硬化現象や散乱線によって低管電圧の解析用画像のCT 値が低下したことに起因すると推測される.ヨード濃度が10 mg/ml を超える領域では,線質硬化補正を施すことでCT 値の精度が向上する.

  • 藤本 一真, 川嶋 広貴, 市川 勝弘, 蕪 俊二, 日髙 信輔
    原稿種別: 原著
    2021 年 9 巻 1 号 p. 11-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/04
    ジャーナル フリー

    重要な要点

    1) 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像の優位性は,画像ノイズの増加による画質劣化以上に,コントラストの増強効果が得られた場合にあり,ヨードを対象とした場合に画質は改善されるが,軟部組織では劣化する.

    2) 40 keV の画像は,大幅にヨードのCT 値を増強することができるが,低周波ノイズの増加が顕著となる.

    3) 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像の画質評価には,単純なCNR の計測よりも,周波数特性を加味したdetectability index の方が臨床と一致した結果が得られやすい.


    要旨

    [目的] 低エネルギー仮想単色X 線CT 画像(低keV 画像)の優位性を検証するため,ヨードおよび軟部組織等価物質の画質特性を評価すること.

    [方法] 22 cm 径の水ファントム内に,2 mg/mL のヨード含有ロッドおよび軟部組織等価ロッドをそれぞれ配置した.このファントムを高速スイッチング方式のdual energy 撮影モードを用いて,CTDIvol =7.9 mGy でスキャンし,仮想単色X 線CT 画像 (40,50,60,および70 keV) を生成した.得られた画像から各ロッドファントムのcontrast-to-noise ratio (CNR) を測定した.さらに,task transfer function (TTF) とnoise power spectrum (NPS) を測定し,5 mm 径の造影,非造影の腫瘍を想定した場合のdetectability index (d’) を推定した.

    [結果] ヨードのCNR は,エネルギーが低くなるほど増加したが,軟部組織では大幅に低下した.低keV 画像のTTF は70 keV とほぼ同等であったが,NPS はエネルギーが低下するほど大幅に増加し,特に低周波領域での増加が顕著であった.d’値は,CNR と似た傾向を示したが,造影を想定した場合に40 keV と50 keV の結果は同程度となった.

    [結論] 低keV 画像の優位性は,CNR の結果どおり,画像ノイズの増加よりもコントラスト増強効果が得られた場合にある.しかしながら,CNR 測定では,周波数特性が含まれず,低周波ノイズに起因する画質劣化を評価することができない.d’の結果より,ヨードの画質改善は,40 keV と50 keV では同程度であり,より低周波ノイズの少ない50 keV の方が優れた画像を提供できる可能性がある.

テクニカルノート
  • 渡邊 翔太, 坂口 健太, 村田 大輔, 石井 一成
    原稿種別: テクニカルノート
    2021 年 9 巻 1 号 p. 16-
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/04
    ジャーナル フリー

    重要な要点

    1) 頭部 CTP における 4DCT 画像に対し,各ボクセルの造影効果に適応するように改良した新たな画像処理手法を開発した.

    2) 開発手法により,優れたCNR を示すCTA 画像が作成できた.

    3) 開発手法を使用することで,末梢側の血管においてもより高い血管描出能を得た.


    要旨

    [目的] 頭部4D computed tomography (4DCT)を対象に,各ボクセルの造影効果に適応するように改良した新たな時相間画像処理手法を開発した.本研究の目的は開発手法がCT perfusion (CTP)から作成するCT angiography (CTA)画像に与える効果を評価することである.

    [方法] CTP を施行した11 症例に対して,開発手法の適用有無に応じてCTA 画像を作成し,conventional CTA およびproposed method CTA とした.両画像に対し,白質-灰白質間のcontrast-to-noise ratio (CNRtissue)と,血管‐周囲脳実質間のCNR (CNRvessel)を測定した.また,3D-maximum intensity projection 表示における血管の描出能を観察者実験により評価した.

    [結果] Proposed method CTA のCNRtissueおよびCNRvesselはconventional CTA よりも高値を示し,有意差を認めた (P <0.05).観察者実験においても診断に利用できる画質を有していると評価された血管の割合はproposed method CTA でより高くなった.

    [結論] 開発手法によって,より優れた画質と血管の描出能を有するCTA 画像がCTP から作成可能となった.

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