糖およびリグニン構造を分子鎖中に有するポリウレタンおよびポリカプロラクトン誘導体の熱的性質を示差走査熱量測定(DSC),熱重量分析(TG),TG-フーリエ変換赤外分光法(TG-FTIR)等により調べた。その結果,ポリウレタン誘導体の場合には,シートや発泡体等の形状,あるいは軟質か硬質かで,その熱的特性が大きく変化することが明かとなった。また,ポリカプロラクトン誘導体の場合には,カプロラクトン鎖の長さを調節することにより,非晶性あるいは結晶性を有する誘導体の調製が可能となり,分子設計的には非常に興味深い結果が得られる。リグニンにカプロラクトンを付加した場合には,ポリカプロラクトン鎖の長さを変えていくと,ポリカプロラクトン鎖の長さが一定以上になると,結晶構造が出現する。本来無定形構造を有するリグニンをコアとする結晶性高分子が比較的容易に得られる。一般的には,ポリウレタンおよびポリカプロラクトン誘導体のいずれにおいても,糖類やリグニン等の植物構成分は高分子鎖中における剛直な成分となり,高分子の分子運動を抑制する要素として働くことが明かとなった。また,TG-FTIRの結果から,熱分解によって生成するガスの主成分はC-O-C,C=O及びC-H構造を有する化合物で,ポリカプロラクトン鎖の分解によるものであることが明らかとなった。
抄録全体を表示