熱測定
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34 巻, 3 号
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  • 飯島 美夏, 高橋 正人, 畠山 立子, 畠山 兵衛
    2007 年 34 巻 3 号 p. 104-112
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    多糖水溶液は濃度や温度によってヒドロゲルを形成する。アガロース,κ-カラギーナン,ジェランガムのような多糖類は冷却により,熱可逆性ゲルを形成し,ゲル-ゾルおよびゾル-ゲル転移は熱測定により測定することができる。一方,メチルセルロースやカードランのような多糖類は昇温によりゲル化する。メチルセルロースヒドロゲルは熱可逆性ゲルであるが,カードランヒドロゲルは熱処理温度により異なる熱不可逆ゲルを形成する。これらの多糖類とは別に,ザンタンガムやヒアルロン酸のように従来単独ではゲル化しないと報告されていた多糖も,ゲル-ゾル転移温度以上で水溶液を熱処理後,冷却するとゲル化する。本報では,多糖物理ヒドロゲルの熱的性質に関する最近の研究ついて述べる。特に,ゲル化メカニズムに及ぼすゾル状態での熱処理の影響に注目する。
  • 中村 成芳, 城所 俊一
    2007 年 34 巻 3 号 p. 113-119
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    天然(N)状態,変性(D)状態と構造的に区別される状態であるモルテングロビュール(MG)状態はいくつかの蛋白質の変性の平衡論的な中間状態として発見された。MG状態は,N状態と同程度の2次構造を持ったコンパクトな球状であるが3次構造は大きく揺らいでいる。最近,我々は等温滴定熱量計を用いて,蛋白質のpH転移に伴うエンタルピー変化を評価する手法として等温酸滴定熱量測定法(IATC)を開発した。本法を用いて,シトクロムcのN状態からMG状態へのpH転移を直接熱量計で観測し,N状態からMG状態への転移は小さいエンタルピー変化を伴う2状態転移であることを確認した。またシトクロムcのN状態からD状態への熱転移を高精度DSCで解析することで,転移の際にMG状態が観測されることを示した。
  • 山室 修, 守屋 映祐, 稲村 泰弘
    2007 年 34 巻 3 号 p. 120-127
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    1-butyl-3-methylimidazolium(bmim)イオンおよびその関連の陽イオンをもつ様々なイオン液体の熱容量と中性子散乱の実験結果を解説する。熱容量測定から,上記のイオン液体は大きな熱容量ジャンプを伴うガラス転移を室温以下で起こすことが明らかになった。中性子散乱データから決めた平均二乗変位の温度依存性から,THzオーダーの速い緩和がガラス転移温度以上で起こることが分かった。イオン液体のガラス転移温度(Tg)と融解温度(Tfus)の関係は分子液体における経験則(Tg/Tfus=2/3)とよく一致する。Tgと陰イオンサイズの関係から,比較的強固な陰イオンフレーム中の陽イオンの再配置運動が,イオン液体のガラス転移に対して支配的な役割を果たしていると推察される。イオン液体の構造エントロピーと協同的再配置領域(CRR)の温度依存性は分子性液体と類似していた。熱容量と中性子非弾性散乱の両方の実験結果から,イオン液体ガラスにおいてもいわゆるボゾンピークが2meV付近に存在することが明らかになった。以上の結果をまとめると,bmim系のイオン液体は色々な意味で分子液体と類似していると結論できる。
  • 井上 美香子, 川路 均, 東條 壮男, 阿竹 徹
    2007 年 34 巻 3 号 p. 128-135
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    トランス1,4-シクロヘキサンジカルボン酸銅(II)についてSPring-8での放射光粉末X線構造解析とヘリウム温度から室温に至る温度領域での精密熱容量測定を行った。160Kに1次相転移を持ち,結晶構造が変化した。これにトルエンを吸蔵させると,吸蔵量の増加とともに転移温度が高温側にシフトしながら相転移が消失した。一方,四塩化炭素を吸蔵させると転移温度は低温側にシフトしながら吸蔵量の増加とともに熱異常が消失し,構造相転移を起さなくなった。トルエンの場合は吸蔵により格子が収縮するが,四塩化炭素の場合は吸蔵により格子が膨張した。1次元細孔に吸蔵されたこれらの分子鎖は融解現象を示さないことなどが明らかになった。
  • 竹谷 純一
    2007 年 34 巻 3 号 p. 136-143
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
    電子やスピンの自由度を介した熱伝導率の測定が,銅酸化物高温超伝導体の超伝導状態及び一次元量子スピン液体の物性研究の手段になることを紹介する。銅酸化物高温超伝導体では,絶対零度近くまで金属的伝導を示す準粒子が存在し,またそのことが超伝導状態を発現する必要条件になっていることが明らかになった。一方,一次元量子スピン液体のスピン自由度が,格子熱伝導や電子熱伝導に匹敵する大きさの熱を運ぶ担い手となることを見出した。これらの結果から,様々な興味深い強相関電子系の低エネルギー物性の研究手段として,今後益々熱伝導率測定が役立てられることが期待される。
  • 2007 年 34 巻 3 号 p. 144-146
    発行日: 2007/06/15
    公開日: 2009/09/07
    ジャーナル フリー
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