Cardiovascular Anesthesia
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18 巻, 1 号
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巻頭言
2011年大会基調講演
  • 丹羽 公一郎
    2014 年 18 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     成人先天性心疾患の多くは,QOL が良好で,就業率,既婚率も高い。しかし,大部分の先天性心疾患手術は根治手術ではなく,術後の残遺症,続発症,合併症を伴う。また,修復術の有無を問わず,加齢に伴い,心機能悪化,心不全,不整脈,突然死,再手術,高血圧,冠動脈異常などにより病態が影響されることがある。成人期は,妊娠,出産,遺伝,社会心理的問題,社会保障,保険など,心臓以外にも解決すべき問題がある。また,未手術或いは姑息術のみ行われたチアノーゼ型成人先天性心疾患は,一定数存在し,チアノーゼによる多臓器異常を伴い,継続的な加療を必要とする。単純先天性心疾患も,成人後も経過観察必要とする場合が少なくない。心房中隔欠損,大動脈二尖弁などのように,成人となって,心不全,不整脈を認め,初めて先天性心疾患と診断される疾患もある。また,大動脈拡張,解離など,無症状に進行し,突然発症することもある。非心臓手術の周術期リスクは,先天性心疾患の種類,チアノーゼ型心疾患での多臓器合併症,出血凝固異常の程度,内服薬剤などに左右される。また,心臓にかかる負荷のため,病状が悪化する場合がある。複雑先天性心疾患は,修復術後も心不全,肺高血圧,不整脈などの危険因子を伴い,周術期リスクが高い。成人先天性心疾患は,小児とは異なる多彩な問題点を抱えるため,循環器を専門とする医師のみではなく,麻酔科医,産科医,産科医,専門看護師,臨床心理士などの多くの専門家が参加する共同診療システムが不可欠である。
2014年度 教育講演2
  • 貝沼 関志
    2014 年 18 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     心臓血管麻酔専門医は麻酔科専門医のサブスペシャルティーであるが,同時に,集中治療専門医とは並列したサブスペシャルティー領域であるという位置づけである。筆者自身の経験からは,心臓血管麻酔経験が基礎研究での個別臓器保護研究の重要性に気づかせ,心臓血管麻酔周術期管理経験が集中治療における診断治療能力の養成につながっていった。後者は具体的には,画像診断,感染症・敗血症診断治療,手術侵襲の意味の掘り下げ,各種手技能力の拡大,血液浄化療法を含む体液管理,栄養管理などの能力である。心臓血管麻酔の狭き門から入ることは手術室の外で医師として多様な疾患を診断治療する広い道に出る最短コースになりうる。
第18回日本心臓血管麻酔学会・藤田昌雄賞 受賞記
症例報告
  • 平井 絢子, 大野 長良, 今井 洋介, 寺嶋 克幸, 山田 芳嗣
    2014 年 18 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     ヘパリン起因性血小板減少症 2 型(HIT type II)はヘパリンの重大な副作用であり,HIT 抗体陽性患者へのヘパリンの投与は禁忌であるが,抗体陰性化後はヘパリンを使用しても必ずしも HIT を再発しない。しかしヘパリン再投与による HIT 再発のリスクは明らかでないため,人工心肺での使用を除いては他の抗凝固薬を使用することが推奨されている。今回,HIT type II 既往患者で,人工心肺中のみヘパリンを使用し安全に管理できた。人工心肺の使用中を除いては周術期にアルガトロバンを使用した。
  • 並里 大, 高木 治, 竹田 智浩, 宇山 真司
    2014 年 18 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     虚血性心疾患に対する冠動脈再建術の外科的危険因子の一つとして,性差の影響について多くの検討がなされている。しかし,本邦での麻酔管理上での文献的検討はない。そこで,当施設における冠動脈再建術症例 92 例で,周術期管理中の性差について検討してみた。
     術前・術中・術後合併症に関しては,統計学的に有意差はなかった。院内死亡症例は 5 例あり,3 例が男性,2 例が女性であった。死亡率にも性差はなかった。しかし,死亡原因として,男性は手術前の胸部大動脈瘤破裂 1 例と感染 2 例,女性では心不全 1 例と不整脈 1 例であった。症例数が少なく,確定的な事は言えないが,女性症例に対しては,個々の全身状態や循環動態の把握に努め,それぞれに応じたより良質な循環管理を心がける必要があると考えた。
  • 松川 志乃, 石井 久成, 福田 和彦
    2014 年 18 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     心室頻拍(VT)を頻発する狭心症に対し緊急冠動脈バイパスならびに僧帽弁形成術を施行された症例の麻酔を経験した。アミオダロンを投与中であったが,人工心肺(CPB)離脱中に再度 VT となった。頻回の電気的除細動を行ったが回復せず,難治性心室頻拍(VT ストーム)となり,CPB 離脱困難となった。ニフェカラントの投与により,一時的に心静止しその後洞調律に復帰した。心房ペーシングを行い,安定した循環動態を得たのち CPB を離脱し手術を終了した。ニフェカラント投与後は心室頻拍の再発を認めなかった。アミオダロンならびに電気的除細動に治療抵抗性の VT ストームにニフェカラントは有効であると考えられた。
  • 大谷 太郎, 濱口 眞輔, 五月女 俊也, 長嶋 祥子, 古川 直樹, 高橋 良享, 永尾 勝
    2014 年 18 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     完全内臓逆位と診断された冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting: CABG)症例で経食道心エコー(TEE)を用いた術中麻酔管理を行った。症例は77歳男性で,既往歴に完全内臓逆位があったため,麻酔管理での術中の TEE は通常と正反対に180°を 0°と考えて操作した。典型的な 4 腔像は180°,長軸像は55°で描出でき,術中の操作が正反対である違和感解消のために,鏡を通してモニターをみる操作も行った。完全内臓逆位患者に TEE を行う際には,心奇形合併の見落としを回避するために,胸部 X 線で右胸心であっても腹部臓器も逆位であるかをエコー前に確認し,基本的な画像描出法は正常心患者と変わらないこと,走査面は正常面±180°で行うこと,構造が逆であるために TEE の走査に違和感がある場合は鏡に映して走査するなどの工夫も必要な場合があると考えられた。
  • 高橋 京助, 佐藤 奈々子, 加藤 剛, 杉浦 孝広, 鎌田 高彰, 森 庸介
    2014 年 18 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     Kommerell 憩室は鎖骨下動脈起始部に発生した囊状瘤であり,まれな疾患である。当院では 6 年間で 10 名の Kommerell 憩室を有する患者の胸部大動脈置換術を行ったが,そのうち 1 例で,二腔チューブと経食道心臓超音波プローベの挿入困難を経験した。Kommerell 憩室を有する患者は,大動脈瘤のみならず大動脈の走行が通常と異なる場合がある。その麻酔管理においては,術中の血行動態に配慮した動脈圧のモニタリングを行うことが必要になる。また,瘤や大動脈の走行異常による気管や食道への圧迫を考慮する必要があり,画像を含めた術前評価を行うことが重要である。
  • 斎藤 淳一, 橋場 英二, 小野 朋子, 丹羽 英智, 木村 太, 橋本 浩, 廣田 和美
    2014 年 18 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     64 歳,男性。9 か月前発症の B 型解離性大動脈瘤に対し,胸部ステントグラフト内挿術が施行された。ステント留置直後,急激な徐脈と血圧低下を認め,A 型急性大動脈解離を発症した。約 30 分経過後,急激な Bispectral index(BIS)の上昇を認め,その直後から suppression ratio が増加し,BIS が低下した。血管造影を行ったところ右腕頭動脈と左総頚動脈に解離が認められた。頚動脈へのステント留置と右内頚動脈-左総頚動脈バイパス術を施行後,上行弓部大動脈置換術を施行した。術後 10 時間で集中治療室にて抜管した。意識レベルはグラスゴー昏眠尺度 14 点,右不全麻痺を呈していた。頭部 CT では左基底核に出血性梗塞を認めた。BIS が全身麻酔中の中枢神経系合併症発見に有用なモニターである可能性が示唆された。
  • 内海 潤, 宮本 知苗
    2014 年 18 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     植え込み型除細動器(ICD)装着患者の緊急手術中に,電気メスの電磁干渉(EMD)によって抗頻拍ペーシング(ATP)が作動し,ショック放電のための充電が開始されていたことが事後に判明した。たとえ局所麻酔下で可能な短時間の小手術であっても,ICD の抗頻拍機能は事前に停止させる,モノポーラ電気メスをなるべく使用しない,末梢動脈の脈波形を常時モニタリングする,術後に ICD の作動プログラムに異常が起きていないかチェックする,など ASA ガイドラインに従い周術期管理を行う必要がある。
  • 佐藤 慎, 国沢 卓之, 林 大, 飯田 高史, 遠山 裕樹, 岩崎 寛
    2014 年 18 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     今回我々は,閉胸時に初めて発生した closed stuck valve を TEE にて診断した症例を経験した。
     70 代,女性。弁輪部石灰化が著明な重度 MR,重度 AS に対し機械弁による二弁置換術が施行された。手術は順調に進み閉胸となったが,胸骨閉鎖直後の TEE にて僧房弁位の前外側の弁葉が閉鎖位で stuck していることが初めて確認された。この時循環動態に大きな変化は見られなかった。再開胸となったが,心膜縫合解除時点で stuck していた弁葉が再び動き出したことが TEE にて確認された。再閉胸時には stuck は起こらなかった。
     弁輪部石灰化が著明な複数弁置換術の周術期には,stuck valve は特に起こりやすい可能性がある。しかし閉胸時には,胸腔内は既に直視できない状況であり,そのモニタリングには TEE が有用であった。
原著
  • 大友 純, 馬場 知子, 大吉 貴文, 徳永 祐希子
    2014 年 18 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/21
    ジャーナル フリー
     予定大血管手術における術後の高次脳機能障害(postoperative cognitive dysfunction: POCD)発生率および危険因子を前向きに検討した。対象は選択的脳灌流を用いた予定の上行および弓部置換術患者 110 例とし,POCD の発生率および POCD を認めた症例と認めなかった症例で危険因子,周術期因子および頭頸部動脈硬化性病変を比較した。
     POCD の発生率は 39%と高率で,危険因子は手術時間(odds ratio [OR], 2.05:95% confidence interval [CI], 0.87~4.88),虚血性心疾患(OR, 3.31:95%CI, 1.33~7.50),頸動脈プラークスコア(OR, 1.69:95%CI, 0.98~2.96)だった。大血管手術では,POCD 発生と動脈硬化との関連性,特に頸動脈への手術操作により生じる微小塞栓子が POCD 発生に寄与する可能性が示唆された。術前に頸動脈エコー検査で硬化性病変の評価を行い,ハイリスク患者を同定して手術戦略をたてることが重要である。
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