比較眼科研究
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27 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 坂 芳樹, 友廣 雅之, 稲垣 覚, 久野 博司
    原稿種別: 原著
    2008 年 27 巻 p. 9-15
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2013/09/11
    ジャーナル フリー
    2004年から2007年に当研究所で実施したCrl:CD(SD)ラットの眼科検査の背景対照データを収集し、自然発生眼病変を解析した。眼科検査は一般毒性試験22試験の対照群(10-20匹/性/試験)に用いた484匹(検査時週齢:8-31週)について、倒像検眼鏡とスリットランプを用いて実施した。高頻度で認められた病変は角膜と水晶体の混濁であり、その頻度は各々47%と31%であった。結膜、虹彩、硝子体、網膜及び脈絡膜の自然発生眼病変頻度は2%以下であった。角膜混濁は、ほとんどのケースで眼瞼裂に沿って内側から中心部または外側に観察された。水晶体混濁は前部被膜直下、前部皮質、核皮質移行部、核部、後部皮質及び後部被膜で観察され、核部の混濁が23%の高頻度で認められ、次いで前部皮質の混濁が8%の頻度で認められた。角膜と水晶体混濁の頻度を試験単位に分け解析した結果、角膜と水晶体の混濁には動物のロット間差が大きいことが示唆されたが、検査した週齢の範囲において角膜と水晶体の混濁の頻度と週齢の間に関連性は認められなかった。
原著
  • 喜田 徹郎, 藤井 千恵, 樋口 剛史, 榊 秀之, 牛尾 和道, 山形 静夫
    原稿種別: 原著
    2008 年 27 巻 p. 17-22
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2013/09/11
    ジャーナル フリー
    3% N-アセチルシステイン点眼液(パピテイン®、千寿製薬株式会社、大阪)は、抗コラゲナーゼ作用によりイヌ・ネコの創傷性角膜炎、角膜潰瘍における角膜障害の治療に有用性が認められている。その一方で、高濃度のN-アセチルシステイン溶液をウサギに反復投与することにより眼表面のムチンが除去されることも知られている。そこで、今回ビーグル犬を用いて、左眼に3% N-アセチルシステイン点眼液を、右眼に生理食塩液をそれぞれ2時間間隔で1日6回、2週間反復点眼投与し、本剤のイヌ眼表面への影響について検討した。イヌ眼表面への影響については、角膜あるいは角結膜をフルオレセイン及びリサミングリーンで染色し、前眼部所見の評価を行った。さらに2週間の反復点眼後に眼球を摘出し、角膜の病理組織学的検討も行った。その結果、いずれの生体染色法ならびに光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡を用いた病理組織学的検討においても眼表面への影響は認められなかったことから、3% N-アセチルシステイン点眼液の1日6回、2週間の反復点眼投与は、イヌの眼表面のムチンを減少させることはなく、角膜上皮に障害を起こさないと考えられた。
原著
  • 川崎 一哉, 宮本 実, 青木 正美, 杉本 眞次, 中下 富雄, 繁田 真樹, 今井 良悦
    原稿種別: 原著
    2008 年 27 巻 p. 23-29
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2013/09/11
    ジャーナル フリー
    網膜毒性は失明の恐れから重大な毒性の一つと考えられており、網膜電図(ERG)検査は網膜毒性を検出するための有効な手段である。一方、ICR系マウスは薬物の前臨床安全性評価に汎用されるクローズドコロニーマウスである。実験に使用する実験動物の特性を把握することは、精度の高い安全性評価を行う上で重要であるが、ICR系マウスにおいて、どのような網膜機能異常がどの程度の頻度で存在するのか、その詳細は不明である。そこで、本検討ではCrlj:CD1(ICR)マウス(計154匹)について、ERG検査を行い、自然発生性網膜機能異常のタイプ及び頻度を調べた。
    12時間以上の暗順応後、麻酔下で暗順応ERGを記録し、続いて10分間の明順応後に明順応ERGを記録した。網膜機能異常のみられた動物は、検眼鏡的検査を実施し、一部の動物は交配実験及び眼球の病理組織学的検査に供した。
    ERG検査では、明順応ERGが記録されない錐体系機能異常が8.4%、暗順応及び明順応ERGが記録されない杆・錐体系機能異常が0.6%認められた。これらの動物の眼底及び網膜の組織像にERGの異常を反映する所見はみられなかった。
    各タイプの網膜機能異常を示す雌1匹を、ICR由来の杆・錐体系機能異常モデルであるICR-derived retinal dysfunction (IRD)1マウスの雄と交配させたところ、F1マウスはいずれも母動物と同じ表現型を示したことから、これら網膜機能異常が遺伝性である可能性が示唆された。
    以上より、Crlj:CD1(ICR)マウスにおいて網膜形態の異常を伴わない自然発生性の網膜機能異常を有する動物が潜在することが示された。本マウスを網膜機能評価に用いる際には使用前のERG検査による選別が有益であると思われた。
原短報
  • 森村 智美
    原稿種別: 原短報
    2008 年 27 巻 p. 31-37
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2013/09/11
    ジャーナル フリー
    眼毒性を評価する試験において、我々は検疫期間中に供試動物を選別するための眼科学的検査を実施している。その際、観察された自然発症性の眼病変のうち、眼底出血について、Fischer系(F344)およびSprague-Dawley系(SD)ラットの症例をまとめたので一部経過も含めて報告する。
    5週齢で検査したF344ラットでは、雌雄各249匹中雄5例雌1例で斑点状の眼底出血が、雄1例で火炎状の眼底出血が観察された。斑点状出血の症例のうち、雄4例で出血に伴って帯状の眼底反射の亢進が観察され、さらに、雄2例雌1例では、9ないし13週齢で、び漫性の眼底反射の亢進が認められた。火炎状出血の症例では、10週齢で出血部位に褐色点が認められ、12週齢では褐色点も含めて眼病変は観察されなかった。4週齢で検査したSDラット雌雄各441匹中雌1例で帯状の眼底反射亢進を伴う斑点状の出血が、雄1例で網膜動脈を軸として環状に認められる眼底出血が観察された。環状の眼底出血の症例では、16週齢で眼底出血は認められず、出血部位に限局性の眼底反射の亢進が認められた。び漫性の眼底反射の亢進が観察されたF344ラット2例の病理組織学的検査を11または13週齢で実施し、内顆粒層、内網状層および神経節細胞層の減少あるいは消失が観察された。
    今回の結果から、斑点状の眼底出血と眼底反射の亢進との関連性が示唆され、び漫性の眼底反射の亢進を示す症例では、組織学的に内顆粒層より内層の萎縮が観察された。
症例報告
  • 金井 一享, 藤沢 顕子, 池口 舞, 堀 泰智, 島村 俊介, 中尾 るり子, 星 史雄, 岡野 昇三, 伊藤 直之, 樋口 誠一
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 27 巻 p. 39-41
    発行日: 2009/02/20
    公開日: 2013/09/11
    ジャーナル フリー
    7歳、メス、チワワ犬が右眼の中心性限局性角膜混濁を呈していた。細隙灯顕微鏡による眼検査では、小虹彩輪と虹彩捲縮輪から数本の瞳孔膜遺残の糸が生じ角膜混濁の内皮に付着していた。虹彩の可動性は損なわれ、瞳孔は歪んでいた。他の眼科所見は、瞳孔縁に多発性褐色性ぶどう膜嚢胞と虹彩不整周囲の軽度限局性虹彩充血が認められた。ぶどう膜嚢胞は、先天性と後天性があるが、多くのぶどう膜嚢胞の原因は不明である。本症例において、ぶどう膜嚢胞の形成および/または肥大の原因は、瞳孔膜遺残糸による虹彩への反復収縮の物理障害による可能性が示唆された。
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