比較眼科研究
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原著
  • 竹下 成人, 風間 千帆, 大澤 徹也, 佐山 絢子, 木下 順三, 西矢 剛淑, 森 和彦
    2021 年 40 巻 p. 3-8
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    毒性試験において実施される眼科学的検査では、被験物質の影響による変化を自然発生性病変と鑑別することが重要であるが、汎用されるマウス系統の背景データに関する報告は少ない。今回、毒性試験に用いられるB6C3F1/Crlマウス及びC57BL/6Jマウスの雌雄各50例について、6週齢時から19週齢時にかけてスリットランプ及び双眼倒像鏡を用いた眼科学的検査を実施し、背景データを収集した。さらに、検眼鏡的所見が観察された代表例について、21週齢時に眼球を採材して病理組織学的検査を実施した。B6C3F1/Crlマウスでは、スリットランプ検査で10週齢時以降に水晶体の後嚢混濁(19週齢時に雄6.0%、雌4.0%)が認められた。双眼倒像鏡検査では19週齢時に眼底の暗褐色斑(雄2.0%)が認められた。一方、C57BL/6Jマウスでは、スリットランプ検査で6週齢時から虹彩前癒着(雌2.0%)、水晶体の核混濁(雄16.0%、雌22.0%)及び後嚢混濁(雄34.0%、雌68.0%)、水晶体後嚢の褐色斑(雄8.0%、雌2.0%)、並びに硝子体の褐色浮遊物(雄4.0%、雌10.0%)が認められた。水晶体の混濁性変化は加齢に伴って発症頻度が増加し、19週齢時には前嚢の混濁(雄2.0%)及び不整(雄14.0%)、並びに後皮質の混濁(雌8.0%)も認められた。双眼倒像鏡検査では、6週齢時から眼底の赤色斑(雄2.0%)及び白色斑(雄2.0%)が観察され、10週齢時に認められた脱色素斑(雄14.0%、雌18.0%)は19週齢時では加齢に伴って増加した(雌雄ともに38.0%)。病理組織学的検査では、水晶体の後嚢混濁を呈した眼球で水晶体後嚢の破裂が確認された。以上、B6C3F1/Crlマウス及びC57BL/6Jマウスにおけるスリットランプ及び双眼倒像鏡を用いた眼科学的検査によって、6週齢時から19週齢時の自然発生性眼病変の発生頻度及びその系統差が明らかになった。本研究の結果は、マウス毒性試験での眼科学的検査で観察される所見の投与起因性を判断する際に有用と考えられる。

短報
  • 松岡 功, 中澤 仁志, 篠宮 克彦, 三枝 祐史, 加藤 雅智
    2021 年 40 巻 p. 9-13
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    カニクイザルの涙液層破壊時間 (tear film breakup time; TBUT) を指標として、ドライアイ治療薬の薬効評価が可能かを検討した。動物に人工涙液 (AT)、0.1%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液 (HA0.1)、0.3%ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(HA0.3)、3%ジクアホソルナトリウム点眼液 (DQS)、2%レバミピド点眼液 (REB) を単回点眼後、1%フルオレセインナトリウム溶液を点眼し、開瞼後に角膜上の涙液層が破綻するまでの時間 (TBUT) を測定した。なお、全ての操作はケタミン麻酔下で実施した。その結果、HA0.1点眼後のTBUTは5分および15分でAT点眼後と比較して統計学的に有意な延長が確認された。HA0.3点眼後のTBUTは5分でATおよびHA0.1と比較して統計学的に有意な延長が確認され、点眼後15分でもATと比較して統計学的に有意な延長が確認された。HA点眼後のTBUTの延長は、濃度増加に伴う作用の増強傾向も確認できた。DQS点眼後のTBUTは15分でATおよびREBと比較して延長傾向が確認された。DQS点眼後30分ではATおよびREBと比較して統計学的に有意なTBUTの延長が確認された。ATおよびREB点眼後のTBUTは、点眼前の基準値と比較して延長は確認できなかった。カニクイザルを用いたTBUT評価では作用機序が異なる薬剤の効果を捉えることが可能であり、ドライアイ治療薬開発における有用な指標の一つとなることが示唆された。

症例報告
  • 仁藤 稔久, 光本 恭子, 辻田 裕規
    2021 年 40 巻 p. 14-18
    発行日: 2021/12/18
    公開日: 2023/03/28
    ジャーナル フリー

    症例は9歳去勢オスのトイプードルで、初診時の眼科検査時に瞳孔縁領域で1mm×1.4mm大の白色結節を認めた。結節は虹彩後面より発生し、前房側へ反転した状態であった。内科的治療に反応が見られなかったため、外科的結節切除術を実施した。摘出した組織はヘマトキシリン・エオジン染色とPrussian blue染色を実施し、免疫組織化学染色としてNeuron Specific Enolase (NSE) とビメンチン、S100およびIba-1を実施した。病理組織学的検査でコレステロール肉芽腫(CG)と診断された。結節周囲の上皮様構造でNSEおよびビメンチンが陽性であったことから虹彩毛様体上皮由来であることが示唆された。結節内ではIba-1が陽性であったことから肉芽腫性炎症が示唆され、Prussian blue染色が陽性であったことから、過去に発生した出血が示唆された。眼内CGの報告は非常に少なく、明確な成因および予後が記述されているものはない。本症例報告では、イヌにおける眼内CGの病理組織学的所見と成因に対しての考察を記述している。

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