ヒアルロン酸(SH)とdodecahydrosqualene (DHS、スクワラン) の混合人工涙液製剤におけるDHSをポリビニルアルコール(PVA)で乳化処置するため、PVAの至適添加濃度を検討した。最終濃度が0.05%、0.1%、0.2%、0.3%になるようPVAを添加した0.1% SH/5% DHS混合人工涙液製剤(0.1%製剤)と0.3% SH/5% DHS混合人工涙液製剤(0.3%製剤)を用手でよく攪拌混合し、DHSの乳化評価としての混濁度とPVA添加によって付与される水分蒸散率を検討することでPVAの至適添加濃度を決定した。0.1%製剤と0.3%製剤いずれにおいても0.05% - 0.3% PVAを添加したDHSの乳化混濁度は、いずれのPVA濃度においても混合直後から240分後まで同程度であった。目視観測した乳化0.1%と0.3%製剤は白濁化するとともに乳化液の上部に多くの泡沫が観察されたが、それら変化は時間とともに漸減した。攪拌混合後60分と240分の0.3% SH/5% DHS/0.3% PVA液の混濁度は0.05%、0.1%、0.2% PVAを添加した他の0.3%製剤液よりも混濁度が若干低下していた。PVA添加0.1%製剤における水分蒸散率はいずれのPVA添加条件下においても同様に推移し、240分後のそれは9% - 12%以下であった。一方、0.3%製剤をPVAで乳化させた時には、PVA濃度が0.2%と0.3%の時の混合後240分間における水分蒸散率はDHSを乳化させないときよりも高く30%以上であったが、PVA濃度が0.05%と0.1%の時にはPVA未添加の0.3%製剤よりも水分蒸散率が約半分程度に抑えられた。なお、0.3%製剤における水分蒸散率抑制効果が最も高かったPVA濃度はそれが0.1%の時であった。以上のことから、0.1%製剤と0.3%製剤いずれにも適用できるDHSの乳化条件はPVA濃度が0.1%であることが示唆された。
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