比較眼科研究
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41 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
短報
  • 髙橋 広樹, 田島 一樹, 服部 貴明, 伊藤 典彦, 後藤 浩
    2022 年 41 巻 p. 3-7
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    我々は新鮮豚角膜の組織片を初代培養し、組織片から規則的に広がる上皮細胞の伸展面積を用いて角膜上皮に対する毒性を、高感度、かつ簡便に検出する新規角膜毒性試験を開発し、過去に報告した。本試験系の市販点眼薬における有用性を評価するために、プロスタグランジン(PG)F2 α誘導体点眼薬である0.02%塩化ベンザルコニウム (BAK) 含有0.005%ラタノプロスト点眼液、0.005%BAK含有0.03%ビマトプロスト点眼液、0.001%BAK含有0.0015%タフルプロスト点眼液、BAKを含まない0.004%トラボプロスト点眼液の角膜上皮毒性を評価した。細胞伸展率は0.004%トラボプロスト点眼液で70.6 ± 23.0%、0.0015%タフルプロスト点眼液で59.3 ± 7.5%、0.03%ビマトプロスト点眼液で44.0 ± 7.6%、0.005%ラタノプロスト点眼液で27.5 ± 10.0%であり、対照と比較しすべてのPGF2 α誘導体点眼薬において有意に細胞伸展率が抑制された。培養角膜片を用いた本角膜毒性試験モデルは、市販PGF2 α誘導体点眼薬の角膜上皮毒性を高感度に検出することができる試験系であり、他の市販点眼薬の角膜上皮毒性の検出にも応用できる可能性が示唆された。

  • 下出 亜里咲, 益子 亜里沙, 伊藤 洋輔, 伊藤 良樹, 前原 誠也
    2022 年 41 巻 p. 8-14
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    調節麻痺薬であるシクロペントラートとアトロピンの点眼は、他覚的視力検査や眼屈折度を測定するために用いられる。これら二剤について、健常ビーグル犬におけるこれらの調節麻痺作用を比較した。眼屈折度は検影法によって測定した。各点眼前後の眼屈折度の差を算出し、その差が最大となった各点眼前後の眼屈折度は、シクロペントラート群で0.85 ±0.49 D、アトロピン群で0.65 ± 0.28 Dであり、両群間に有意な差はみられなかった。効果が最大となる時間は、シクロペントラート群で1.52 ± 1.50時間、アトロピン群で、3.58 ± 2.75時間であり、アトロピン群はシクロペントラート群と比較し、有意に延長していた。眼屈折度が点眼前の値に戻った時間は、シクロペントラート群で12.00 ± 6.00時間、アトロピン群で、25.00 ± 14.90時間であり、アトロピン群で有意に延長していた。シクロペントラート点眼薬とアトロピン点眼薬を比較すると、健常ビーグル犬において眼屈折度の検査を行う場合、最大調節麻痺効果の出現が早く、調節麻痺効果の持続が短時間であるシクロペントラート点眼薬が推奨される。

  • 長谷川 貴史, 尼子 秀樹, 萩 清美, 富張 瑞樹, 澤 嗣郎
    2022 年 41 巻 p. 15-21
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    ヒアルロン酸(SH)とdodecahydrosqualene (DHS、スクワラン) の混合人工涙液製剤におけるDHSをポリビニルアルコール(PVA)で乳化処置するため、PVAの至適添加濃度を検討した。最終濃度が0.05%、0.1%、0.2%、0.3%になるようPVAを添加した0.1% SH/5% DHS混合人工涙液製剤(0.1%製剤)と0.3% SH/5% DHS混合人工涙液製剤(0.3%製剤)を用手でよく攪拌混合し、DHSの乳化評価としての混濁度とPVA添加によって付与される水分蒸散率を検討することでPVAの至適添加濃度を決定した。0.1%製剤と0.3%製剤いずれにおいても0.05% - 0.3% PVAを添加したDHSの乳化混濁度は、いずれのPVA濃度においても混合直後から240分後まで同程度であった。目視観測した乳化0.1%と0.3%製剤は白濁化するとともに乳化液の上部に多くの泡沫が観察されたが、それら変化は時間とともに漸減した。攪拌混合後60分と240分の0.3% SH/5% DHS/0.3% PVA液の混濁度は0.05%、0.1%、0.2% PVAを添加した他の0.3%製剤液よりも混濁度が若干低下していた。PVA添加0.1%製剤における水分蒸散率はいずれのPVA添加条件下においても同様に推移し、240分後のそれは9% - 12%以下であった。一方、0.3%製剤をPVAで乳化させた時には、PVA濃度が0.2%と0.3%の時の混合後240分間における水分蒸散率はDHSを乳化させないときよりも高く30%以上であったが、PVA濃度が0.05%と0.1%の時にはPVA未添加の0.3%製剤よりも水分蒸散率が約半分程度に抑えられた。なお、0.3%製剤における水分蒸散率抑制効果が最も高かったPVA濃度はそれが0.1%の時であった。以上のことから、0.1%製剤と0.3%製剤いずれにも適用できるDHSの乳化条件はPVA濃度が0.1%であることが示唆された。

症例報告
  • 阿部 卓也, 山口 晃輝, 池内 悠, 利谷 枝里子, 安井 雄三, 益山 拓
    2022 年 41 巻 p. 22-26
    発行日: 2022/12/26
    公開日: 2025/01/20
    ジャーナル フリー

    網膜神経線維は一般に無髄神経線維であるが、網膜神経線維にミエリン鞘が被覆した網膜有髄神経線維は、イヌ及びウサギを除く動物において自然発症病変として知られている。しかしながら、一般毒性試験に汎用されるアルビノラットにおける報告例は少ない。今回、アルビノSprague-Dawleyラットの1例において観察された自然発生性の網膜有髄神経線維について報告する。本症例は、5週齢時検査では観察されず、9週齢時の倒像検眼鏡検査において、左眼の眼底に透明な羽毛状の形態を示す病変として観察された。本病変は眼底の赤外反射検査で高反射性を呈し、光干渉断層撮影検査で網膜の神経線維層に肥厚及び高反射が観察された。病理組織学的検査において、病変部はルクソールファストブルー-ヘマトキシリン・エオジン染色で青染され、抗myelin basic protein抗体を用いた免疫染色で陽性であった。以上の結果より、網膜有髄神経線維と診断した。本病変は5週齢時には認められなかったことから、先天的な病変ではなく生後の成長過程において発現したと考えられた。また、白色と報告されているヒトの病変と異なり色調が透明であったため、倒像検眼鏡検査による病態の把握は困難であったが、赤外反射検査及び光干渉断層撮影検査は病態を鮮明に映し出すため診断に有用であった。

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