ネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)感染による両眼の上皮性角膜炎罹患ネコの涙液を用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、経時的に得られたサイクル閾値(Ct)値からウイルス量を簡易評価し、角膜潰瘍との関連性を評価した。リアルタイムPCRはシルマー涙液試験(STT)紙を用いて実施し、角膜潰瘍の評価は系統的眼科検査で評価した。初診時、両眼に地図状様の表層性角膜潰瘍または樹枝状角膜潰瘍が見られた。ファムシクロビルの内服およびヒアルロン酸の点眼による治療後、両眼の角膜潰瘍はCt値の増加とともに治癒した。Ct値はウイルスゲノムを十分に検出するのに必要なPCRのサイクル数であり、数値が高いほど検体中のウイルスゲノム量が少ないことを示すため、Ct値の増加は病変部のウイルスゲノム量の減少を示唆した。以上のことより、FHV-1に起因する上皮性角膜炎の治療経過において、Ct値から簡易評価したウイルスゲノム量と角膜潰瘍の改善状態に関連性が認められ、今後FHV-1感染に起因する角膜潰瘍の診断や治療に活用できる可能性が示された。