デジタルアーカイブ学会誌
Online ISSN : 2432-9770
Print ISSN : 2432-9762
9 巻, s2 号
選択された号の論文の51件中1~50を表示しています
口頭発表 ①
  • 熊澤 輝一
    2025 年9 巻s2 号 p. s41-s44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    地域を対象としたデジタルデータによるアーカイブ構築事例を収集し、担当者へのヒアリング調査を通じて、企画、構築、公開、管理の各段階の課題、及び、地域住民のアーカイブズへの関与の仕方(関わり方、協働の状況)を明らかにした。調査は、市民主体の取組事例として「東大和デジタルアーカイブ」「光が丘デジタルアーカイブ」「千里アーカイブ」を、公立図書館が事務局となり市民を支援する事例として「北摂アーカイブス」を、特定のテーマに沿った事例として「山梨デザインアーカイブ」を、継続が困難だった事例として宮崎大学の「ふるさと伝承プラットフォーム」を、ジャパンサーチと連携して複数のデジタルアーカイブを扱う事例として「上田市デジタルアーカイブポータルサイト」を対象に実施した。これらの調査結果を元に、企画運営と市民関与の観点から比較考察を行い、主体ごとの特徴と事業を進める上での課題を把握した。

  • 髙橋 怜華
    2025 年9 巻s2 号 p. s45-s48
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    私たちが過ごしている“現在”もいずれ過去の資料となることから先回りして収集していくことは重要である。また、アーカイブズには、「永続的に保存されるもの」という意味が含まれており、デジタルアーカイブも継続的なものでなければならない。

    発表者は山形大学や長野県上田市などの先行事例を参考に、宮城県塩竈市においてまちの記憶を残す継続的なデジタルアーカイブの構築を目指している。具体的には、月に1回まちの様子を撮影する定例撮影会を実施することで“現在”の様子も収集する活動をおこなうこと。デジタルアーカイブを市役所の業務として定着させ、様々な機関や人々と連携することで、継続的な事業にすることを目指している。今回は、まちの記憶を残す継続的なデジタルアーカイブの構築過程を報告する。

  • 佐藤 美弥
    2025 年9 巻s2 号 p. s49-s52
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    大規模デジタルアーカイブを中心に多くのIIIFコンテンツが公開され、活用できるようになっている。他方で、従来から各地域では土地に根ざした歴史や文化に関する知=ローカル人文知が蓄積されている。IIIFの普及はデジタルコンテンツとローカル人文知の接続を容易にした。本発表では、戦後期の日本を撮影した国立国会図書館所蔵モージャー氏撮影写真資料を素材に、名古屋のローカル人文知を応用することで同資料をいかに活用できるか検討する。撮影地や被写体を比定することでメタデータを豊富化し、地理座標の付与やアノテーションによる可視化と分析をとおして撮影者の動きや都市景観復元の手がかりとしての資料群の特徴を明らかにする。

  • 木村 京子
    2025 年9 巻s2 号 p. s53-s56
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    本発表では、比企丘陵の谷津沼を題材に進めている「沼のデジタルアーカイブ」構想の初期的取り組みについて報告する。研究者やアーティストの創作活動を支援するパーソナルAI「Pondalar」を介して、ジャパンサーチが提供するコンテンツとAPIを活用し、教育現場での利活用を想定したプロトタイプを試作した。具体的には、ジャパンサーチの検索APIから教育利用可能な画像・文献を取得し、ギャラリー化や学習用ワークシート自動生成に組み込む実験を行った。本発表では、API連携の技術的ポイント、データの権利情報の扱い、授業での応用可能性を整理し、今後の拡張としてPondalarにおける学習ログの蓄積やIIIFビューア連携を展望する。小規模ながら、パーソナルAIを介した文化資源活用の新たな形を提示したい。

  • 二重作 昌満
    2025 年9 巻s2 号 p. s57-s60
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    本研究では我が国の映像史研究の視点から、『仮面ライダー(1971)』シリーズ発現の真実について、資料調査によるアーカイブ研究を実施した。当研究では、「1.企画とデザイン」、「2.設定と物語」の2つの視点から、『仮面ライダー(1971)』シリーズ発現の真実について検証を行なった。「1.企画とデザイン」では、新番組『仮面ライダー(1971)』の企画の立ち上げと共に、東映株式会社のプロデューサーである平山亨氏と、原作者・石ノ森章太郎氏によるキャラクターデザインのやり取りを通じて、いかに仮面ライダーのデザインが完成したかを検証した。そして「2.設定と物語」では、自然と人間が上手に共生する「真の文明のシンボル」たる仮面ライダーと、歪んだ科学文明の象徴であるショッカーの戦いの物語が、いかに完成したかの制作意図を記録する検証を実施した。

  • 木村 文
    2025 年9 巻s2 号 p. s61-s64
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    博物館のヴァーチャルツアーは、展示替えにより実際の展示空間と齟齬が生じ、陳腐化しやすいという課題を抱えている。この「陳腐化」を逆手に取り、過去の展示状況をドキュメンテーションする新たな価値として捉え直すことについて、リトアニア国立美術館を事例に考察する。同館は、2019年と2025年の二度にわたる常設展示の大幅な展示替えを行ったが、2020年に公開されたヴァーチャル展示は展示替えの後に更新されていない。これにより、実際の展示空間では既に見られなくなった過去の展示構成が、古いヴァーチャル展示によって記録・保存され、公開されている状況にある。本発表では、ヴァーチャル展示を単なる代替手段ではなく、博物館の歴史性を可視化するドキュメンテーション・ツールとして位置づける視座を提示したい。

  • 谷島 貫太
    2025 年9 巻s2 号 p. s65-s68
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    本稿は、デジタルアーカイブにおける「インデックス(索引)」概念を、〈主題〉から〈主体〉、そして〈指標〉へと再定義する試みである。主題索引(subject indexing)は、一見客観的な分類技術のように見えるが、その根底には、資料をどのように「読むか」「何についてのものと見るか」という、常に主体的・解釈的な実践としての「主観的索引(subjective indexing)」が潜んでいる。従来のアーカイブは、この主観性を制度化し、標準化することで「客観的な主題アクセス」を実現しようとしてきたが、生成AIを基盤とする対話的検索環境は、利用者個人の文脈や関心に応じた動的なアクセスモデルを実現しつつある。本稿はこの変化を理論的に捉えるために、記号論的「指標性(indexicality)」の観点から、インデックスを静的な「指示」ではなく、利用者の問いを世界に「投錨(anchoring)」する動的な行為として再定義する。そしてこの「生成的指標性(generative indexicality)」を、ポストメタデータ時代の新しいアーカイブの基礎概念として提示する。

口頭発表 ②
  • 宮田 悠史
    2025 年9 巻s2 号 p. s69-s72
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    ZEN大学コンテンツ産業史アーカイブ研究センター(以下、HARC)は、我が国におけるコンテンツ産業の発展に寄与されたクリエイター・開発者・経営者・研究者らのオーラル・ヒストリーを映像によって収録し、それらのデジタルアーカイブ「オーラル・ヒストリー コレクション」を構築・運用している。筆者は、当該プロジェクトの実施に向けた準備段階から関与しており、オーラル・ヒストリーのインタビューに関する映像撮影の監修をはじめ、メタデータの設計、資料のデータベース化と公開に関する工程を担当してきた。

    そこで、本発表では、HARCのオーラル・ヒストリーに関するプロジェクトの概要とともに、現在公開している「オーラル・ヒストリー コレクション」の構成や機能について報告する。また、その上で、これまでの実践をとおして明らかとなったプロジェクトの課題と展望について発表したい。

  • 中山 景介, 磯田 和生, 松山 麻珠, 久永 一郎, 布下 翔碁, 横山 渚, 樋口 紗也香, ミヤタ ユキ
    2025 年9 巻s2 号 p. s73-s76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
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    浦安市に点在する埋立護岸やその周辺風景のデジタル化により制作した仮想空間を体験することで、鑑賞者が浦安の埋立護岸に刻まれた記憶を追体験するアート実践の試みである。埋立護岸は、浦安の埋立地としての歴史を示すランドマークとして認識されてきたが、現在は立入禁止の措置などが取られ、一部の護岸は撤去が検討されている。今回、浦安市民の身近な存在であり続けた埋立護岸に関する記憶の継承に取り組む「浦安藝大:護岸アーカイブプロジェクト」において、DNP大日本印刷の文化財鑑賞システム「みどころウォーク®」を用い、VR空間内で護岸の上などを歩くプログラムを設計した。本発表では、2025年9月に浦安市郷土博物館で実施したVR体験会の記録と、地域活動への参画などを通じて人々のウェルビーイングに貢献する「社会的処方」としての展開可能性の検討といった課題を報告する。

  • 李 雪貞
    2025 年9 巻s2 号 p. s77-s78
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    情報のデジタル化は、有形の知的資源を電子データとして保存・流通することだけではない。デジタル化する際に、情報の実体を捨てると、情報の保存や共有が容易になる一方で、物理的な媒体を介して認識されていた情報全体の構造や関係性が曖昧になり、場合によっては失わせる危険も伴う。利用者にとってピンポイントの検索は容易になるが、特にデータベース内部にある情報に対しては、自分がどの情報に向き合っているのか、それらがどのような関係にあるのかを把握することが困難である。そこで本研究では、人間の空間認知を活用し、無形の電子情報資源の構造を可視化することを試みる。さらに、主観的な知覚に基づき、客観的な知識空間と主観的な知識空間とのあいだに生じる歪みを再現する。これにより、他者の視点から情報資源を捉えることが可能となる。

  • 根本 大志
    2025 年9 巻s2 号 p. s79-s82
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、地域資源のデジタルアーカイブ化において、3Dスキャン技術がどのような意義や可能性、そして課題を孕むのかについて、文化人類学や社会学の視点を参照しながら検討する試みである。従来の写真やテキストを中心とした記録型アーカイブでは再現が困難であった空間性や質感を、3Dスキャン技術は立体的かつ経験的に捉えることを可能にし、地域の風景や文化財を「体験可能な記録」として再構成することができる。本研究では、高知市旭地区のような「都市でも農村でもない中間領域」に注目し、変化と持続が交錯するローカルな空間において、3Dアーカイブが果たし得る役割を探索する。これは、過疎化や災害、再開発などによって急速に変容する地域資源との向き合い方を考えるうえでも重要な視点である。同時に、3Dアーカイブは情報技術的行為であると同時に、倫理的・社会的な関係性の設計を伴うプロセスである。記録とは何か、保存とは誰のためにあるのかといった問いに立ち戻りながら、地域の住民との共居的実践としての記録の在り方を模索する。こうした観点から本研究は、3Dスキャンを「過去の保存装置」ではなく、「現在と関係を結び直すための知的インターフェース」として位置づけ、その応用手法を考察する。

  • 野寺 凜
    2025 年9 巻s2 号 p. s83-s86
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、3Dプリンターのみならず、Thingiverseをはじめとする3Dモデル共有のためのプラットフォームが普及し、教材や展示資料を含む「モノ」のオープンデータ化の進展がみられる。これらの3Dモデルの活用は、視覚的理解に依存しやすい宇宙教育において有効である。黒部市吉田科学館では、視覚障害者でも学習可能な宇宙教育に向け、オープンデータの3Dモデルを利用するとともに、月・惑星の3Dモデルを自作した。自作3Dモデルを当科学館の展示やワークショップにおいて「さわる」教材として利用したほか、解説資料と共にThingiverseでデジタルアーカイブ化し公開した。本教材は、視覚障害の有無を問わず、幅広い来館者から好評を得た。本報告では、これまで当科学館で行われてきた実践の例を挙げ、包摂的な博物館づくりに資するデジタルアーカイブの活用方法を議論する。

  • 小澤 翔瑛, 大井 将生
    2025 年9 巻s2 号 p. s87-s90
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、ストックフォトサービス企業が所有する報道写真のデジタルアーカイブを教材として活用し、メディアリテラシーの育成を図ることである。手法として、テーマ性のある報道写真を提示することで学習者の「問い」を創発することを起点とする探究型キュレーション学習を提案する。検証のために、中学校で授業実践を行い、事前・事後の質問紙調査を実施する。これにより、写真から社会的背景を読み解く読解力や批判的思考力の向上度を分析する。本研究の成果として、学習者が多角的な視点から物事を分析することが可能になり、メディアリテラシーが向上すると予想する。また、報道写真の裏にある社会的あるいは文化的文脈を教育に取り入れることで、体系的かつ持続的な学びのモデルが構築できると考える。

  • 原 翔子
    2025 年9 巻s2 号 p. s91-s94
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    美術作品のデジタルアーカイブ化に伴い、メタデータを活用した計量分析による知見獲得への期待が高まっている。本研究は美術作品メタデータの計量分析手法について方法論的検討を行い、有効性と適用条件を明らかにする。複数の美術展覧会を対象とした計量分析により手法の適用可能性を検証した。具象的なモチーフ名や明確な主題を含む作品では計量的手法が有効だが、制約も存在する。抽象的概念や思想的背景は作品タイトルに反映されにくく、テキストベース分析では捕捉困難である。視覚的特徴や制作技法等の感覚的情報は言語化が困難で、現行のメタデータ記録では限界がある。異分野価値観が混在する展示では統一的分析枠組み適用が困難である。これらの知見は美術作品メタデータ分析における手法選択指針を提供し、適切な分析設計の重要性を示す。

  • 橋本 陽
    2025 年9 巻s2 号 p. s95-s98
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    真正性とは、記録が偽造されていないことおよび作成された記録が改ざんされていないことを示す特性である。近年、この特性はデジタルアーカイブ全般に適用されるとの見解が確認される。しかし、これは、もともと16世紀のヨーロッパで発展した文書形式学によって確立されたもので、同じ対象の集合体を扱うアーカイブズ学に取り込まれ、これらの分野が対象とするデジタル記録に適用されている。したがって、記録の真正性をデジタルアーカイブ全般に汎用させるという主張には無理がある。本報告は、デジタルアーカイブのいくつかの論考を参照しながら、記録の真正性の推定はアーカイブズ学固有の観点であることを明らかにする。また、デジタル公共文書にも言及し、その範囲としては従来のアーカイブズ学が対象としてきたものと大差がないことを示す。

  • 村井 琴音, 脇田 玲
    2025 年9 巻s2 号 p. s99-s102
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の武力紛争ではドローンによる住宅への攻撃が常態化している。市民は窓の防護やバリケード設置といった自発的な建築的対応で対処しているが、その貴重な実践知は断片的にしか存在せず、体系的な記録・共有が喫緊の課題である。本研究は、これら「市民の建築的対応」を収集・分類し、実践知として継承することを目的とするデジタルアーカイブの構築を試みる。SNSや報道から収集した画像・テキストデータに対し、防護手法、使用材料といったメタデータを付与し、ウェブプラットフォーム上にデータベースとして実装する。本稿ではその構築プロセスを報告し、紛争下における市民の生存戦略を記録する新たな手法を提示する。本アーカイブは、他地域の市民への知識提供や、将来のレジリエントな復興計画に資する基礎資料としての活用が期待される。

  • 後藤 博之, 中島 理男
    2025 年9 巻s2 号 p. s103-s106
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    データをブロックチェーン上の全サーバ(ノード)に分散して記録保存(フルオンチェーン保存)することで単一障害点(以下、SPOF)を排除し、サイバー攻撃や自然災害といった致命的なリスクに対して高い耐性(レジリエンス)を持つ、ブロックチェーンデジタルアーカイブ(以下、BDA)システムの構築と実運用を前提とした実践研究を発表する。一瞬もダウンすることのない自律分散型システムにより、文化・産業・学術資産は耐改ざん性を備え、データの真正性が担保・証明され、堅牢な「自律分散型データ」として保存される。これにより、従来の課題であった長期保存や永続性を根幹から変革する。本発表では、技術アーキテクチャやプロトタイプ構築事例について検証や実践を詳述し、長期保存のコスト効率と既存デジタルアーカイブシステムやIPFSとの連携を踏まえ、次世代のデジタルアーカイブ(以下、DA)のあり方を提案する。

  • 前田 郁勝, 外山 勝彦, 小川 泰弘
    2025 年9 巻s2 号 p. s107-s110
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    民事判決書は長文にわたるものが少なくない上、当事者や請求が複数である場合などでは、判決書が示す判断内容の理解は容易ではない。それに対して、主文、請求、事案要旨の三つの情報を判決書から抽出し、それらの間の対応関係を明らかにすることにより、判決書の判断内容を簡潔かつ正確に示すことや、上記各情報を関連付けた検索が可能となる。さらに、判断内容の傾向など、判決書のより高度な分析への寄与が期待できる。そこで、判決書中の上記各情報についてXML形式によるデータ化手法を提案するとともに、裁判所ウェブサイトから取得した民事第一審判決書について、XMLデータ化を行った。このデータは公開予定である。

  • 柿野 耕平, 小川 浩太, 野口 奨悟
    2025 年9 巻s2 号 p. s111-s114
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    自然史資料(昆虫標本等)は、生物多様性研究の基盤となる重要な資産であるが、財源難からその維持は危機的状況にある。本研究はブロックチェーンを用い、標本のデジタル化とともに採集・移動・研究利用など標本自体の来歴をNFTで可視化する。支援者が寄付に紐づくNFTを取得する設計とし、収益を大学等に還元する資金循環を構築する。

    この事例として、九州大学の昆虫標本NFT化では、クラウドファンディングを通じて歴史的文脈への価値も示唆され、収益を大学へ寄付するサイクルを実証した。現在はこの知見を応用し、自然保護団体と連携し、団体が記録してきた希少生物のデジタルデータを価値化する挑戦も開始した。本発表は、これらの実践から見えてきた課題と可能性を共有し、デジタルアーカイブの新たなあり方を模索するものである。

  • 菊池 信彦
    2025 年9 巻s2 号 p. s115-s118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本報告では、20世紀イギリスにおけるシェイクスピアの日とセント・ジョージの日の新聞史料データの分析をケーススタディに、DH研究実践上におけるGale Digital Scholar Lab(GDSL)の課題を考察した。具体的には、GDSLのNER出力結果と筆者が手作業で作成した正解データから算出したPrecision/Recall/F1を検証し、GDSLの過検出と検出漏れが多いことを確認した。DH研究を実践する上では、GDSLでNER結果の修正を行うことが望ましいが、GDSLにはそのための環境がないことから、DH研究の反復的な研究プロセスを可能とする機能が望ましいと結論付けた。

  • 佐野 智也, 外山 勝彦
    2025 年9 巻s2 号 p. s119-s122
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、占領期(1946-1952年)にGHQ/SCAP指令下で発行された官報英語版に掲載された英訳法律1,624本をXML文書化し、名古屋大学の法令データベースに収録した。これらの英訳テキストは、英文官報Bilingual KWICを通じてのみ閲覧可能であったが、研究データの再利用のために公開することとした。XML文書化は、日本語法律の文書構造を維持しながら英訳テキストに置換する手法を採用して効率的かつ正確に行った。また、文書構造の比較分析の結果、改正規定の表現方法の違い、項番号の欠落、翻訳未掲載箇所、英語版独自の追加要素など、日英間に構造的差異が少なからず存在することを明らかにした。法令データベースには日英交互表示モードとテーブル表示モードを実装し、翻訳の検討を効率的に行える環境を整備した。

  • 松野 仁志, 楠見 清
    2025 年9 巻s2 号 p. s123-s126
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタル・ヒューマニティーズ分野において、テキストから知識グラフ(KG)を自動構築し、情報の連携や検索を可能にする研究が進展している。自然言語処理研究の進展によりテキスト内のエンティティの特定や関係性抽出の精度が向上したが、依然として構築された情報の正確性が課題であり、精緻なKG構築のためには対象となるドメインの専門家による監督が必要である。本研究では、専門家と大規模言語モデル(LLM)の協調的なKG拡張手法を提案する。LLMが抽出したエンティティに専門家が注釈文を付与し、LLMが注釈文から関連するエンティティを追加構築する。さらに各構築段階で追加するKGの内容を専門家が修正することで、専門家固有の知識を含むKGを段階的に構築するシステムを実装した。その適用事例として、熊本県宇城市不知火美術館の企画展における、関係性可視化ダイアグラムの制作に関する知見と考察を報告し、今後の博物館等での利用の可能性を示す。

  • 小出 治都子
    2025 年9 巻s2 号 p. s127-s129
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    2025年4月に開学したZEN大学のコンテンツ産業史アーカイブ研究センター(通称HARC)では、マンガ・アニメ・ゲーム・IT・ネット文化の5分野に分け、各分野における重要な人物たちへオーラルヒストリーの手法を用いてインタビューを残すプロジェクトを行なっている。これらは2025年7月より随時公開され、インタビューは映像およびその書き起こしが全文公開されている。それらの資料をKH Coderで分析し、その結果と考察を述べる。

    HARCの資料を使用することで、平面的かつ断片的にしか分からなかったコンテンツ産業の歴史を立体的かつ網羅的に理解する一助となることを示すとともに、モノのアーカイブ、コトのアーカイブとともにヒトのアーカイブの重要性について論じる。

口頭発表 ③
  • 三谷 直哉, 武内 樹治
    2025 年9 巻s2 号 p. s130-s133
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、能登地方における近年の地震を対象に、地震動指標(震度・PGV・SI値)と文化財被害の関係を分析し、被災傾向を空間的に把握したものである。2020年以降に発生した地震のうち、2023年および2024年の地震で確認された文化財被害を中心に検討を行い、地震動指標の分布と被害の発生域を比較した。その結果、文化財の被害は震度5強を境に増加する傾向がみられ、PGVやSI値を組み合わせて分析することで、震度のみでは捉えにくい被災傾向をより精度高く評価できることが示唆された。今後は、文化財の構造的特性や修復履歴を考慮しつつ、地震動履歴との対応を検証し、専門分野間で共有可能な文化財防災アーカイブの構築に向けた知見を深めていくことを目指す。

  • 稲葉 あや香
    2025 年9 巻s2 号 p. s134-s137
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    近年注目される「超文化的記憶」研究では、地理的・文化的境界を超えた記憶の広がりの把握が課題とされる。本研究は、全米日系人博物館が運営する世界の日系人交流サイト兼デジタルアーカイブ「ディスカバー・ニッケイ」を対象に、コンテンツ分析と運営者へのインタビューを通じてその形成過程を検討する。分析の結果、資金面の要請やブランディング戦略などの実務的条件が、グローバルかつコミュニティ志向のデジタルアーカイブ形成を方向づけてきたことが確認された。他方で、コンテンツ分析ではユーザーがローカルかつ私的な記憶を重視する傾向が示されたが、その傾向もまた運営者自身の方針にも沿うものであることが明らかになった。本発表は、超文化的記憶の広がりを言説と実務の両面から検討する際、デジタルアーカイブがその理論深化の場となる可能性を提示する。

  • 河村 郁江
    2025 年9 巻s2 号 p. s138-s141
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、芸術活動における記録の地域アーカイブ化の可能性を検討することを目的とする。事例として小原瀬戸芸術祭に参加し、愛知県豊田市小原町の郷土料理をテーマに小原町の特産である和紙を用い、障子紙に郷土料理に関するイラストを制作した。制作過程では地域の店舗や住民を訪問し、聞き取りと記録を実施し、その記録自体を展示に組み込む試みを行った。また近年増加するアーカイブを活用した芸術作品の動向を調査し、制作実践を通じて芸術記録が地域アーカイブの構築に果たし得る役割を考察した。

  • 岩河 朱音, 西山 悦子, 宍戸 栄徳, 米谷 雄介
    2025 年9 巻s2 号 p. s142-s145
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    四国遍路世界遺産登録推進協議会は、四国4県、市町村、民間団体等で構成され、世界遺産登録に向けた活動をおこなっている。登録には「生きている伝統を表す資産であること」が求められ、文化庁は「資産の保護措置の充実」「顕著な普遍的価値の証明」「地域コミュニティの積極的な参画」の3つの課題を提示している。しかし現状では、文化資産情報を統合管理する仕組みが存在せず、これらの課題解決に必要な関係者間の協働が困難である。そこで本研究では、四国遍路の文化資産および関連資源の情報を統合管理し、分析・可視化を可能にする文化資産データ統合管理システムを提案する。本稿では、その概要と設計方針について述べる。

  • 全 炳徳, 小栁 敦史
    2025 年9 巻s2 号 p. s146-s149
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    広島に原爆が落とされてから80年の歳月が過ぎた。広島における原爆の惨状は様々な形で報告されているが,地域的に見れば狭い範囲を示すことが多く短編的で部分的なものが多い。アメリカ軍の戦略爆撃機B-29を改造した写真偵察機F-13からのフィルム航空写真情報は広い範囲を含む詳細情報を含んであり,今でも入手が可能な貴重な資料となっている。著者らはこれまで広範囲の⻑崎地域を中心とした原爆関連の写真情報を,主に国土地理院から購入して解析し報告をしてきた。本論では広島地域を中心とした写真偵察機による航空写真情報を,アメリカの国立公文書館に整備されているフィルムスキャナーを利用して直接スキャニングして解析を行った。これらの一連の過程について,写真偵察機F-13による写真情報の詳細から,スキャナーによる収取手順とオルソ画像の作成,最後に地上点と写真上の場所をGPS点として結び精度分析までの解析手順を報告する。本論では広島の原爆前後のデータとして,1945年7月25日の28枚及び8月11日の33枚の合計61枚のスキャニングした航空写真を用いて解析を進めた。

  • 福田 成康, 松原 正樹
    2025 年9 巻s2 号 p. s150-s153
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)は、1990年以降のコンクール・ステップ等を通じて、参加者・指導者・演奏曲目に関するデータを35年間蓄積してきた。本研究では、個人を特定できない形に加工した履歴データを、国立情報学研究所(NII)の情報学研究データリポジトリ(IDR)を通じて大学等の研究者に提供する取り組みを報告する。氏名・住所・生年月日等を照合する名寄せアルゴリズムにより、姓名変更や住所変更を経ても同一人物を追跡できる統合ID管理を実現した。さらに、ピアノ曲事典との連携により、クラシックから現代曲に至る演奏曲データを横断的に検索できる環境を整備した。音楽教育ビッグデータの公開を通じて、生涯学習や地域教育に関する新たな研究を促進する。

  • 篠山 浩文
    2025 年9 巻s2 号 p. s154-s157
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    演者は、日本の高度経済成長時に消失した「塩づくり文化」「鉱山文化」に対し「NHK番組アーカイブス学術利用トライアル」を通じて、「テレビは失われつつある文化をどのように捉え、我々に何を伝えてきたのか」といった視点から解析を試みてきた。現在、その解析を通じて発想した新たな視点「塩田作業とその過酷さの共有・発信・伝承に対する番組アーカイブスの可能性」「日本における塩製品多様化の要因」「別子銅山旧筏津住宅と地域創生」「鉱山における煙害解決の歴史」等について、旧塩田、鉱山地域の実地踏査を絡めながら研究を継続している。上記したNHK番組アーカイブス研究を介した発想展開は、学校における探究活動へのNHKアーカイブス活用の可能性を示唆しているものと考える。

  • 丸山 裕輔
    2025 年9 巻s2 号 p. s158-s161
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、小学生を対象にデジタルアーカイブを活用する授業を実施し評価した。第4学年の社会科の防災学習の領域では、新潟大学が構築したデジタルアーカイブのサイトから新潟地震と加茂川水害のフィルム、及びせんだいメディアテークのサイトにある東日本大震災の自作教材を活用した。児童のノートと授業者の授業リフレクション記録の分析から、デジタルアーカイブの活用は、映像の力によって、児童の学習意欲を喚起したり、比較・関係思考を促進したりすることが分かった。そこで、デジタルアーカイブの可能性から、防災学習の領域における小学生の探究学習を支援・推進するデジタルアーカイブ活用モデルの試案を作成した。

  • 國岡 啓子
    2025 年9 巻s2 号 p. s162-s165
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    明治以降、官僚の人事は官報に掲載されることで公式とされ、官報が最も信頼できる人事史料とされている。しかし官報の発行は明治16年7月以降であり、これ以前の人事異動は対象を個人とせざるを得ず、網羅的に調べることは不可能とされてきた。今回新たに作成した任解日録データベース(以下、日録DB)の底本である「任解日録」は、時系列で明治2年7月から同17年末まで、奏任官以上の辞令を官報と同レベルの網羅性をもって編集し、この問題を解決している。日録DBには個人の官職履歴を検出するだけではなく、検索日付で政府組織の構成メンバーを名簿式に表示、また組織図では在職者人数を算出させる機能が組み込まれている。編集可能なExcel形式で配信することによって、明治期官僚研究におけるオープンデータのさきがけとなることを目指したい。

  • 栗原 佑介
    2025 年9 巻s2 号 p. s166-s169
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    令和4年5月に公布された民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)では、民事裁判記録の電子化が原則化され、施行後の記録は、デジタルアーカイブとして、所定年限、保存される。また、民事事件の判決書は、令和7年5月に公布された民事裁判情報の活用の促進に関する法律(令和7年法律第49号)により、民事判決情報の公開(オープンデータ化)が実現され、利活用も期待される。

    ところで、過去には、裁判所において、不適切な誤廃棄等が発覚し、令和5年5月に、「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」が公表されている。本発表は、この調査報告書が、裁判所法60条に触れず、責任の所在を明示していない点に着目し、今後の民事裁判記録の適正なデジタルアーカイブを実現するための課題を明らかにする。

  • 古賀 崇
    2025 年9 巻s2 号 p. s170-s173
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    米国連邦政府では2025年1月の第2次トランプ政権の発足以降、政府支出の削減や、従来の政府のイデオロギーからの転換を理由として、多領域にわたる情報提供活動について大幅な縮小や、ウェブ上の情報の削除・改変を強行している。これに対し、多くの専門家団体などが、現状の把握と情報発信に取り組み、意見表明などを公示するアドボカシー活動を行っている。特に現地の図書館員らは、実際に削除・改変などが生じたウェブサイト等の具体的種類の提示や、デジタルアーカイブの一種としての代替データの提供などに取り組んでいる。実は、1980年代のレーガン政権期にも、現在と同様の背景のもとで政府刊行物の発行の停止・縮小が成される中、その実情を逐一記録し公開する取り組みを、米国図書館界は行い、この記録は現在ではデジタルアーカイブとして確認可能である。本発表ではこうした活動について概観し考察する。

  • アクマタリエワ ジャクシルク, 森吉 蓉子
    2025 年9 巻s2 号 p. s174-s177
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、「消滅危機言語デジタルアーカイブ」の公開内容と特徴、制作過程や工夫、現在の課題について解説する。これは、各言語の話者が住む地域を示すマップや、実際の暮しの様子を捉えた写真等を閲覧しながら、国内外の研究者による言語の概要と話者の生活環境等の説明を閲覧できるコンテンツである。ArcGIS StoryMapsとRe:earthを組み合わせることで、単なる言語データベースにとどまらず、視覚的・体験的に「言語の生きた姿」に触れられるアーカイブを実現している。今回は、主にユーラシア地域のショル語、ユグル語、キルギス・ドンガン語、満洲語、カラチャイ語の5種を取り上げる。本アーカイブにはショル語話者による絵画と詩を集めた「絵と詩 少数民族ショルのこころ」も収録される。これにより彼らの世界観や自然観を、作品そのものだけでなく音声資料とともに体験できる。現在、本アーカイブは資料収集・整理している段階であり、今後更に管理体制を整え、利用者に提供できるようにする。

  • 阿達 藍留, 澤 裕章, 太田 絵里奈, 大向 一輝
    2025 年9 巻s2 号 p. s178-s181
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    東京大学東洋文化研究所所蔵の「ダイバー・コレクション」は、イスラーム法学、クルアーン学を中心とする東アジア最大規模の貴重なアラビア文字写本コレクションである。現在のデジタルアーカイブは2006年から学術利用を支えてきたが、年月を経て独自仕様のメタデータや閲覧性と画像解像度の低さといった制約が顕在化している。このような状況から、東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門は2024年度よりデジタルアーカイブの大規模改修に着手し、相互運用性の高いメタデータ、高解像度画像の整備、研究者からのフィードバックを迅速に反映する仕組みの実現を目指している。本発表では公開中のβ版をもとに、設計の理念や技術選定の詳細、データ移行における課題を報告し、国内外のポータルとの外部連携や資料利活用の促進に向けた今後の展望を示す。

  • 澤井 進
    2025 年9 巻s2 号 p. s182-s185
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    学術論文の作成において、査読者毎に評価基準が異なることによる偏見や公平性の問題が指摘されている。本研究では、「構造化基本設計シート」と、J-Stageのデジタルアーカイブ化論文50件の査読・研究倫理審査した知識、及びマルチモーダル生成AI(以下LLMと略す)のGemini主査、ChatGPT、Claudeを組み合わせた人間中心の論文作成支援システムを提案する。

    本システムは、研究目的から研究倫理審査まで11項目で構成される基本設計シートに基づき、LLMが論文の各セクションを生成し、さらに査読・研究倫理上の問題点を自動チェックする機能を持つ。実証研究として、本システムを用いて実際に30件の論文を作成し、11件を関連学会等に投稿した結果、論文の質の向上と作成時間の大幅な短縮が確認された。本研究は、客観性の向上、効率化、不正抑制の観点から、学術論文作成の新たな方法論を提示するものである。

  • 吉水 彩, 木戸 崇之
    2025 年9 巻s2 号 p. s186-s189
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    朝日放送グループホールディングスは、阪神・淡路大震災発生から30年を機に、地震直後の様子を撮影した視聴者提供映像を震災アーカイブに加え、一般公開することにした。被災直後の生活空間を伝える貴重な記録だが、これらの映像は著作権が提供者に帰属するため、公開するためには提供者をあたってあらためて許諾してもらう必要があった。電話やSNS、訪問調査をおこなったが、30年後の所在確認は困難を伴った。最終的に42人中22人の提供者が確認でき、21人から公開の許諾を得た。1人はプライバシー保護を理由に不許諾であった。映像は205クリップに整理し、Webアーカイブや書籍で公開したほか、その一部を使用したテレビ番組も放送した。本事例は、著作権者情報の継続的な管理の必要性と、アーカイブ構築時の事前権利処理の重要性を示すものである。

  • 原口 和徳, 荒岡 草馬, 藤村 明子
    2025 年9 巻s2 号 p. s190-s193
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    AIを用いた音声合成サービスが普及し、誰でも著名人などの声を再現できるようになったことで、他人の声を無断で再現し、公開するなどの問題が生じている。一部の報道や論説において、いわゆる「声の権利」が言及されるようになってきたが、法令や判例によって明示的に認められているわけではなく、権利保護の具体策についてなど、不明確なことも多い状況にある。音声合成技術の向上、普及のスピードや、実在の人物の声をデジタルアーカイブ化したサービスの企画が進められている状況を鑑みると、ハードローによる対応ではなく、ソフトローとしてよりスピード感のある形での対応が望まれるが、規範形成の根拠を判例以外に求める必要がある。本稿では、声の権利に関する規範の形成根拠の一部とすべく企画した社会調査から、定性調査に関する部分を中心に報告し、ガイドラインの策定に向けた議論の促進に努めたい。

ポスター発表
  • 木戸 崇之
    2025 年9 巻s2 号 p. s194-s197
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    朝日放送グループホールディングスは、公開中の「激震の記録1995 阪神淡路大震災取材映像アーカイブ」の持続的な利活用を目指し「AIによる映像推奨機能」を導入した 。震災から30年が経過し、記憶や教訓の風化が進む中、震災を知らない世代や地域外の人にとって、どの映像を見れば学びがあるのかが分かりにくいという課題を解決するためである。また、情報の検索方法がキーワード検索から自然言語による質問へと変化していることに対応する必要もあった。開発された機能は、利用者の自然言語の質問の意図をAIが読み解き、当時の状況や教訓をテキストで表示しつつ、関連映像を推奨する。報道機関提供のアーカイブとしてAIによる誤情報(ハルシネーション)を回避するため、学習させるデータを内閣府の教訓情報資料集などに限定し、出典を明示した。この機能は2025年8月にテスト公開し、大阪・関西万博でお披露目された。

  • 福田 一史
    2025 年9 巻s2 号 p. s198-s201
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、ゲームアーカイブ構築が活発化する一方、高コストな工程である目録作成はこれらにおける大きな課題である。本研究ではボードゲームのパッケージ画像からOCRと大規模言語モデルを組み合わせて固有表現抽出を行い、自動メタデータ生成を試みた。アナログゲームミュージアム所蔵資料のうち121件の資料を対象に、人手による目録データを正解とし、自動生成されたメタデータの精度を適合率・再現率・F1値を用いて定量的に評価した。その結果、バーコード、プレイ時間やプレイヤー人数といったパッケージ上で定型的に表現される属性は高い精度で抽出可能で、現状でも実務での利用が期待できる。一方、責任表示などは抽出精度に課題があり、正規化やエンティティリンキングといった手法の改善が求められることが分かった。本研究を通して、LLMと人手の目録作成を組み合わせたハイブリッドフローが、信頼性と低コスト化を両立しうる有効なアプローチであることが示された。

  • 星初 夏紀, 大井 将生
    2025 年9 巻s2 号 p. s202-s204
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,歴史的・社会的に意義のある資料への興味・関心を高めるためのデジタルアーカイブ活用方法を開発することである。その手法として,デジタルアーカイブ上で「場所」に関する写真資料について,子どもたちが調べ学習で明らかにした知見をストーリーとして付与し,互いにストーリー付きのアーカイブ資料を発表しあう授業を提案する。手法の妥当性を検証するため,開発した授業を小学校で実施し,子どもたちの資料に対する興味・関心がどのように変化したかを分析する。その結果,「写真にストーリーを付与することで子どもたちの資料への興味・関心は高まる」という仮説を支持する知見が得られると予想する。本発表ではその授業実践の結果について報告する。

  • 松井 愛, 大井 将生
    2025 年9 巻s2 号 p. s205-s207
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、SNS(Social Networking Service)時代における「デジタルタトゥー」が若者の自己表現と人間関係に与える影響を明らかにすることを目的とする。SNSは若者にとって感情や日常を共有する場である。しかしながら、投稿が半永久的に残る「デジタルタトゥー」は、個人の将来や社会的信用に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、こうした「残像性」が心理的抑制を生む構造に注目し、大学生を対象に質問紙調査を実施する。分析の結果、投稿の残像性を理解するほど慎重な行動をとり、無配慮な投稿を控える傾向が明らかになった。また、他者の過去投稿の遡り閲覧は、信頼関係や公開設定の選択と密接に関連し、相互監視的な印象管理が生じていることが示唆された。

  • 原田 真喜子, 菊池 果帆, 伊藤 瑠依, 北垣 憲仁
    2025 年9 巻s2 号 p. s208-s211
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    つるフィールド・ミュージアム(TFM)は、地域の自然と文化を総合的に捉え、学びの拠点となることを目的に2025年に開館した。TFMのデジタルアーカイブ(DA)は、学術的資料の保存だけでなく、学生や市民が関わるフィールド活動や感性を記録することを重視している。DA構築では、資料の科学的価値に加え、人がどのように関心を持ち、学びを得たかを記述するメタデータ設計とネットワークの構築が求められる。また、構成主義的学習理論や新行動主義の視点を踏まえ、感じる力から学びを深める博物館教育の流れを意識し、主体的な解釈や多様な受け止めを促すコンテンツの在り方を目指す。TFMは「真性なアーカイブ」「魅せるアーカイブ」「両者を架橋するネットワーク」という三層構造を通じて、ヒトとフィールドの関係を媒介し、体験と知の循環を生み出す学びの生態系を構築することを目指している。

  • 森本 理希, 大井 将生
    2025 年9 巻s2 号 p. s212-s214
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表では、ロックバンドに取り組む際に求められる「音作り・奏法・機材」等の実践知を体系的に学ぶことができる情報フローモデルを提示することを目的とする。そのために、演奏実践知を構造化・共有するためのLODモデルを提案する。従来の音楽アーカイブは作品の記録・保存が中心であり、演奏過程や実践知の体系的な記録・共有は十分に行われていない。そこで本研究では、ステムデータを基盤として、演奏技術・音作り・機材情報等をRDFで記述するLODモデルの構築を目指す。バンド全体の音のアーカイブを最終目標としつつ、本発表では特にギターパートに焦点を当てたLODモデルを提案し、演奏実践知の構造化手法とその学習支援への応用可能性を示す。

  • 池田 脩平, 西尾 典洋, 杉山 岳弘
    2025 年9 巻s2 号 p. s215-s218
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究室では、国指定重要無形民俗文化財「西浦の田楽」の記録映像を撮影し、研究者向けの映像アーカイブを構築してきた。本稿では、この映像アーカイブの一般公開を目的として制作するWebサイト「西浦の田楽記録映像デジタルアーカイブ」の構築過程について述べる。制作に際しては、関係者からの公開許諾の取得や実演家の権利への配慮など、複合的な権利処理を行う。実装時には、サイトの長期的な保存性を重視し、サーバ側の動的処理を排した静的ページによるミニマルな設計を行う。また、異なるアングルから同時に撮影された映像を同期させ、ユーザが視点を切り替えながら閲覧できるマルチアングル再生機能を開発する。運用時には、公開初期のアクセス集中への対策を行う。本稿では、これらの課題と対応を示し、今後の展望を述べる。

  • 寺田 遊, 安次 富梨乃
    2025 年9 巻s2 号 p. s219-s221
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    本発表は、沖縄県南城市をフィールドに、地域の記憶を未来へ継承するための持続的アーカイブ活用モデル “WellnessArc”の実践を報告する。南城市のデジタルアーカイブ資料や地域の祭祀資料、古写真等に加え、高齢者からの聞き取りによる「生きたアーカイブ」を形成。これを基盤に、地域事業者クバノハ合同会社と協働し、MICE研究者向け体験ツアー、古民家再生・活用(Maisonナカユクイ)、四世代参加型地域イベント等を企画・実施している。本稿では、アーカイブをシビックプライド醸成や地域福祉に結びつける具体的な手法と、その意義について論じる。

  • 池間 秀之, 大井 将生
    2025 年9 巻s2 号 p. s222-s225
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/13
    ジャーナル オープンアクセス

    現在、日本の個人総資産総額は増加傾向にある。しかし、国民全体に占める投資経験のある人口割合は依然として低く、欧米諸国と比較するとその差は依然大きい状況にある。一方で、金融資産への投資率には顕著な変化がみられず、この背景には「会計リテラシーの欠如」があげられる。この課題を解決するためには、発達段階に即した教育プログラムを開発し、産業連携による実践的でリアルな会計教材を共有できる仕組みの構築が望まれる。そこで、本研究では、DAを用いて会計リテラシー向上を支援する学習プログラムを開発することを目的とする。そのために、実在企業の財務諸表データを利用して資金調達(方法)→商品仕入れ→販売→利益計上のフローを学ことができるワークショップを設計する。

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