東北地方太平洋沖地震により藤沼ダムが決壊し,死者が発生する惨事となった。検証委員会などによる現地調査・物性調査・解析的検討が行われたが,残留変形解析はいまだ実証性が薄いため,条件を変えてさらなる解析が必要と考える。そこで,本研究では,藤沼ダムの動的応答解析を行い,円弧すべりを仮定した渡邊・馬場法による残留変形解析によって残留変形量を算出し,ダム崩壊に至る変位量の考察を行った。その結果,藤沼ダムの強度パラメーターを推定し,強度低下を考慮しないと沈下量はかなり小さいが,3層のうち上部盛土だけでなく,これまでほとんど言及されなかった中部盛土も強度低下を考慮すると,ダム天端と満水位との高度差程度まで地震時沈下が発生する様子を解析でき,藤沼ダムが崩壊するときの天端沈下量との関係を導くことができた。ダムの沈下が起きた原因として大部分を占めているのは,締固め不足による密度低下とそれにともなう強度低下が挙げられる。
ダム建設においては,基礎岩盤の確認は重要である。これまで,ダム基礎岩盤の評価は一般的に地質技術者による「ハンマによる打音検査」と「亀裂状態の目視確認」で行われており,評価項目の判定基準はいずれも定性的である。著者らは,サンルダム仮排水路建設工事において地質技術者による従来の方法に加えて,岩盤の弾性係数を原位置で定量的かつ迅速に測定できる打球探査法を適用した。打球探査法を適用することにより,硬軟区分を定量的に評価することができ,ダム事業者および地質技術者立ち会いの下に行われるダム基礎岩盤検査を円滑に進めることができた。
下水道での高速リン吸着剤によるリン除去・回収システムは,充填した吸着剤に対して,圧力をかけた下水を上から下方向に通過させることで,最適なリン除去効率を達成する。しかし,湖沼では懸濁物が多いため,この方法ではすぐに目詰まりしてしまう。そのため,圧力をかけた湖沼水を下から上方に通過させるとともに,懸濁物が通過できる程度まで吸着剤を展開させた。その結果,リン除去効率は低下するものの,処理後のリン濃度を富栄養化レベル以下にするという目標は達成できた。
重力式コンクリートダムの構造設計における滑動に対する安全率と内部応力に対する安全率について,その安全率が持つ意味を分析し,二つの安全率の特性の相違を示した。さらに,二つの安全率の数量的関係を検討し,設計基準で規定されている二つの安全率の整合性について考察した。