フィルダム,盛土,斜面の安定計算には円弧すべり法が広く一般に用いられている。しかし,その理論は意外と正しく理解されておらず,また,誤った使用例もときおり見受けられる。本稿は,土質力学の立場を離れ,弾性論とベクトル解析論の立場から,円弧すべり法の理論について新たな考察を加え,Fellenius法におけるスライス間不静定力の評価と同法の正しい使用法について論じたものである。
水資源機構が管理する岩屋ダムは,建設後40年以上を経過した堤高127.5mのロックフィルダムである。岩屋ダムでは,2013年11~12月にかけて浸透水が濁りをともなって増加し,増加量は1カ月間で約100L/minに及んだ。水資源機構は,この事象に対する現場での監視体制の強化,原因究明のための調査を行い,安全性に対する協議・検討の場を設けた。
浸透量増加後4年間,監視体制の強化と原因究明のための調査を継続してきた。その後の浸透量は増加することなく,2016年には減少し,現在に至るまで安定している状態である。一方で浸透量増加の原因は今なお不明であることから,浸透量の増加に備えた監視体制は維持しつつ引き続き通常管理を行う予定である。本報告は岩屋ダムの浸透量の増加から現在の管理に至るまでの経緯を報告する。