本研究では阿木川ダム(独立行政法人水資源機構・岐阜県恵那市)における地震記録にNIOM法を適用して,堤体内の地震波伝播速度を検討した。その結果,地震計間の平均的なS波速度は,(1) コアゾーン上部で420~450m/s,下部で520~540m/s,(2) 上流側ロックゾーンでは480~500m/sと推定され,水平2成分間の偏向異方性がみられること,一方,(3) 下流側ロックゾーンでは580m/s程度で比較的大きい値を示し,偏向異方性も認められないこと,(4) 推定されたP波速度とS波速度の分布は1999年に実施されたPS検層結果と整合することなどを示した。
RCC(Roller Compacted Concrete)ダムの施工においては,ダムコンクリートの水密性を確保するためにさまざまな工夫がされている。配合もしかり,打継目および横継目の処理や上流面のGE-RCC(Grout Enriched RCC)に加え,堤体の漏水管理および揚圧力低減のために,堤体内に鉛直の排水孔を設けるのが一般的である。本論文では,ラオス国のナムニアップ1水力発電プロジェクトにおけるRCCダムの施工過程を紹介しながら,浸透流解析,現地での透水試験とCTスキャンによる打継目の観察による堤体の水密性について論ずるとともに,水密性確保のためのダムコンクリートの施工法ならびに堤体の漏水管理および揚圧力の低減に必要な堤内排水孔の配孔設計手法について提案する。