ダムコンクリート表層損傷の非接触による評価手法の開発を目的に,パッシブ赤外線サーモグラフィ法により取得した画像のクラスタリングと熱収支解析を組み合わせた検討を試みた。画像クラスタリングにより可視・熱画像をコンクリート部,エフロレッセンス部・チョーク部,打継目部および植生部に分類することが可能となった。コンクリート部に対して熱収支解析を適用したところ,浮き部および無損傷部の表面温度を平均絶対誤差(MAE)が1.5℃で再現可能であることが確認された。本手法によりコンクリート表面温度と表層損傷の関係を明らかにすることが可能になり,定量的損傷評価への応用が見込まれる。
阿蘇立野ダムは,重力式コンクリートダムでありながらダムに作用する水圧等の力を両岸の岩盤に作用させるアーチ式ダムの設計の考え方を取り入れた曲線重力式コンクリートダムである。施工継目への充填や冷却配管の配置を行うために,ブロックごとにコンクリートを打ち重ねていく柱状ブロック工法を国内では約20年ぶりに採用した。現在主流の面状工法では,ほとんど行われないコンクリート冷却のパイプクーリングや施工継目のジョイントグラウチングの施工事例と効率化を図った取組みについて報告する。