歯科用合金の耐食性および生体影響を評価する上で,生体組織中での溶出金属元素の分布や化学状態を評価することが重要となる.しかし溶出金属元素の濃度は極めて低く,通常の分析法では,これらの情報を得ることは困難である.そこで,本研究ではきわめて高感度な分析法である放射光蛍光X線分析およびX線吸収微細構造測定を応用し,動物皮下に埋入した歯科用合金4種の生体組織中での溶出挙動を評価した.その結果,低融銀合金では,埋入部周囲にAg,Snなどの局在が認められ,より耐食性の高い金銀パラジウム合金やコバルトクロム合金でも周囲に微量の合金成分元素の局在が確認された.また,組織中に検出された合金元素は合金からの溶出に由来する水和イオン(Co),硫化物(Ag),酸化物(Cr)として析出したものであることが判明した.
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