日本歯科理工学会誌
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39 巻, 1 号
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総説
  • 末瀬 一彦
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    近年,歯科医療においてもデジタル化が急速に進展し,データ処理によって治療内容が大きく変革してきた.とりわけ補綴装置の製作においては,歯科用CAD/CAMテクノロジーの導入によって高精度,高品質な治療の実践,新たな素材を用いることができるようになり,患者,術者にも多くのメリットがもたらされる.口腔内スキャナーの活用は,印象採得に対する不快感からの脱却,感染防止,口腔内情報をデータとして保存,伝達できることなどが挙げられる.一方,加工装置として切削加工と付加造形加工においては修復物の種類や使用目的に応じたマテリアルの選択がキーポイントとなり,特に3Dプリンターの技術革新に期待される.デジタルデンティストリーは今後の治療プロセスに大きな影響を及ぼし,従来から培われてきた経験的な技能との融合は,世界に発信できる歯科医療として注目される.

  • 近藤 尚知, 鬼原 英道
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    近年,インプラント治療の領域においてもデジタル技術の導入が急速に進み,診断時におけるCTの活用は常識となり,顎骨の立体画像上での埋入シミュレーションも,近い将来,診断法のスタンダードになるものと予想できる.そして,シミュレーションを口腔内で再現するためのサージカルガイドの作製を行う機会もより頻繁になるであろう.補綴処置においては,インプラントに対しても,口腔内スキャナーによる光学印象の臨床応用が可能となり,補綴装置製作時の模型は3Dプリンタによって造形される時代へと変わりつつある.さらには,チタンならびにジルコニア製の補綴装置が普及するにつれて,その製作にはCAD/CAMシステムが必要不可欠であり,現在の歯科医療はデジタル技術の導入なしには成り立たなくなってきている.上記を含めたデジタル・デンティストリーの臨床応用には多くのメリットがあり,さらなる発展に大いなる期待が寄せられている.しかしその一方で,これらの新技術の精度に関する疑問等,解明・解決すべき課題も少なくない.本稿においては,ITの導入によって大きく変わりつつあるインプラント治療の現状・限界と今後の展望について紹介する.

  • 大久保 力廣
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    有床義歯の設計やフレームワーク,義歯床レジンの造形にCAD/CAMが少しずつ導入され,歯科精密鋳造と粉液型義歯床レジンを利用した従来の有床義歯の製作術式が,ここにきて大きな変革期を迎えようとしている.コンプリートデンチャーは単純な構造のため実用化の段階に到達しているが,パーシャルデンチャーは義歯構成要素が多く,義歯床中にフレームワークが内包される構造のため,フルデジタル製作は未だ困難な状況にある.現状では,各種構成要素をCAD/CAMにより別々に製作し,最終的に作業用模型上で一体化させるアセンブル方式が試行されている.本稿では,切削加工と積層造形を応用した有床義歯製作におけるCAD/CAMシステムの現状とフルデジタル製作をはじめとし,フレームワークのハイブリッド加工やトポロジー最適化等の将来展望について概説した.

  • 木村 健二
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 39 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    現在,IoT,ビッグデータ,AIをキーワードとした第四次産業革命が,私たちの生活を変えつつある.この革命は既存の職業の有り様を大きく変化させ,新たなビジネスモデル,サービスを生み出していくだろう.
    歯科技工業界では,CAD/CAMや3Dプリンタの活用により技工物製作工程に劇的な変化が起きている.デジタル化は歯科技工士の仕事を奪って行くという意見もよく耳にするが,筆者は決して歯科技工士の仕事はなくならないと考える.むしろ,デジタル活用により新たな価値を持った職業として生まれ変わることができるのではないかと考える.確かに,手作業の仕事の多くは機械が担うようになるだろう.では,機械にできないことは何なのか,突き詰めて考えて行くと進むべき道が拓けてくる.デジタル時代は人と人とのコミュニケーションがますます重要になることも忘れてはならない.デジタル時代の歯科技工を考える際の一つの例として,当社の取り組みをお伝えしたい.

  • 蛯原 善則
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    様々な装置やソフトウェアから出力されるデジタルデータにより,歯科治療に取り組む医療関係者,患者までもがイメージを共有し,多くの視点から考察された診断・治療が行われている.一方で,デジタル機器は先進デバイスが多いため,医療機器のカテゴリの判断や安全性・有効性担保の評価方法に戸惑う場面も多い.
    各装置やシステムの適応範囲の拡大,市場から要望される新機能追加などは永遠に継続すべき開発テーマである.それに加えて,複数のデジタルデータを融合させた活用方法やデータベースなどを活用した新たなシステムの提案,デジタルデータの共有によるトータルシステムの提供などにより,これからの健康長寿社会を実現するためのデジタルワークフローをより一層発展させていきたい.

  • 堀田 康弘
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    20世紀後半の歯科界は,メタルセラミックスやインプラントなど様々な治療技術が急速に進歩し,20世紀末にはデジタル化に向けた研究・開発が急速に進められたが,CAD/CAMをはじめとしたデジタル機器が普及するには,何らかの変革が必要であった.その一つが,2005年のジルコニアセラミックスの薬事法承認であった.そして2014年のCAD/CAM冠保険適用や「デジタル印象採得装置」が医療機器として追加されたことなどがCAD/CAM機器の普及に拍車をかけた.また,3Dプリンタの応用も日常臨床の中で急速に進んでいる.しかし,現在のデジタル機器は,いずれも海外メーカーの主導による商品開発が先行し,本学会を含め研究の現場では,それら先行して発表される商品を後追い研究しているのが実情である.そこで,このジルコニアが薬事承認されてから現在までの,本学会におけるデジタル関連の研究発表について講演集をもとに考察した.

原著
  • 亀山 祐佳, 大橋 桂, 和田 悠希, 青木(三宅) 香, 谷本 安浩, 二瓶 智太郎
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 39 巻 1 号 p. 77-86
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    本研究では,無機フィラー含有量の違いによるCAD/CAM冠用ハイブリッドレジンブロックの性質を比較,検討することを目的とした.市販大臼歯部用レジンブロックおよび同じ組成でフィラー含有量が異なる試作ブロックを用いて,表面硬さ,3点曲げ強さ,3体摩耗試験,引張接着強さおよび着色試験後の色差を測定した.得られた値は統計学的分析を行い,無機フィラー含有量との相関関係も検討した.
    その結果,無機フィラー含有量と表面硬さおよび3点曲げ強さは有意な正の相関性,摩耗量は有意な負の相関性を示し,色差は無機フィラー含有量の増加に伴い低くなった.一方,引張接着強さは無機フィラー含有量との統計学的な相関性が認められなかったが,無機フィラー含有量の減少によりレジンブロックの凝集破壊の割合が大きくなる傾向であった.

  • 片山 裕太, 亀山 祐佳, 大橋 桂, 和田 悠希, 青木(三宅) 香, 綠野 智康, 鈴木 敏行, 谷本 安浩, 平山 聡司, 二瓶 智太 ...
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 39 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2020/01/25
    公開日: 2020/04/17
    ジャーナル フリー

    本研究では,歯冠用硬質レジンの特性について検討するために,市販されている歯冠用硬質レジン4種類を用いて,ダイナミック表面硬さ試験,3点曲げ試験,摩耗試験および着色試験を行い,さらに無機フィラー含有量を測定した.3点曲げ試験は,5℃と55℃の水槽に浸漬したサーマルストレスを10,000 回負荷後の試験も行った.得られた値は,一元配置または二元配置分散分析および多重比較検定(Bonferroni 法)を行い,無機フィラー含有量との相関関係をPearsonの積率相関係数を用いて調べた.その結果,各市販歯冠用硬質レジンの無機フィラー含有量の増加により弾性率および表面硬さが増加する傾向が示唆された.また,各種歯冠用硬質レジンの曲げ強さは耐久性の違いにより有意な低下を認め,摩耗深さに差は示されなかった.無機フィラー含有量が硬質レジンの特性に影響を及ぼす一因であることが示された.

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