日本歯科理工学会誌
Online ISSN : 2188-417X
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39 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 飯嶋 雅弘, 川村 尚彦, 榎並 裕美子
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    Dr. E. Angleによって考案されたマルチブラケット装置は,これまでの約100年間で,原材料,デザインおよび適用方法について進化を遂げてきた.本装置による治療では,エナメル質の脱灰を防ぐためにフッ化物等が添加されたブラケット用接着材料やエラスティックリガチャーが用いられるが,それらの臨床的有効性については不明な点が多い.近年の歯科矯正治療では,アンカースクリューやミニプレートを用いたスケレタルアンカレッジの概念や治療過程に添ったセットアップ模型と熱可塑性樹脂から作製されるマウスピース型矯正装置(アライナー型矯正装置)も利用されるようになった.また,口腔内スキャナによる光学印象やコーンビームCTによる三次元情報を利用して作成するカスタムメイドタイプの装置も利用されるようなった.

  • 新井 嘉則
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    歯科医療において,三次元で顎骨および歯を観察することが求められたが,被曝線量・解像力・装置の大きさなどの問題があった.これを,撮影範囲を高さ3 cm×直径4 cmと限定する小照射野・高解像力歯科用CT装置(以下CBCT)によって解決した.歯科矯正治療では,より広範囲の撮影範囲で,かつ低被曝が求められた.しかしながら,撮影範囲の拡大と低被曝化は相反関係にある.低被曝な条件下でのCBCTであっても,その被曝線量は通常のセファロ撮影の10倍もあり留意が必要である.一方,小照射野から頭部全体を対象とした大照射野の撮影を行える複合機が開発され,一つの装置で,矯正領域に必要なすべての撮影法をカバーすることが可能となっている.今後は,他のデジタル機器を連携し,撮影条件を適切に選択して 医療被曝を最小限に留め,三次元画像情報を生かした画像診断を行うことが最重要と考えられる.

  • 横山 賢一
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,口腔内のフッ化物による歯列矯正用Ni-Ti超弾性合金線の材質劣化について,腐食に伴う水素吸収が及ぼす影響の観点から,これまでの我々の研究成果を整理して紹介する.本合金は,酸性フッ化ナトリウム水溶液中において短時間で多量の水素を吸収して脆化する.中性フッ化ナトリウム水溶液中では,水素吸収速度は遅く,水素脆化する前に活性経路割れによる破断が起こる.また,フッ化物の濃度や溶液のpHなどの環境因子や,合金中の水素の存在状態やマルテンサイトなどの材料因子によって,脆化は影響を受ける.脆化は,マルテンサイト変態と水素との動的かつ相互的な作用による欠陥の形成と蓄積が本質と考えられるが,さらなる研究が必要である.これらの知見に基づき我々が提案したフッ化物に起因する材質劣化の対策の一つは,極微量の過酸化水素を添加し,自然浸漬電位を貴化することによる水素吸収抑制である.

  • 谷本 安浩
    原稿種別: 総説
    2020 年 39 巻 2 号 p. 175-180
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    過去10年間 (2010~2019年) における日本歯科理工学会の学術講演会, 日本歯科理工学会誌, およびDental Materials Journalでの矯正歯科関連の研究発表について調査した.本稿では,これらの調査結果と今後の矯正用材料のイノベーションへの期待について述べる.

原著
  • 江田 義和, 長沢 悠子, 重田 浩貴, 日比野 靖, 中嶌 裕
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 39 巻 2 号 p. 181-191
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/07/15
    ジャーナル フリー

    試料保管条件がデュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメントのせん断強さおよびせん断弾性係数に及ぼす影響について検討した.実験には市販のデュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメント3種類[G-CEM ONE(ジーシー),BeautiCem SA(松風)およびRelyX Unicem2 Clicker(スリーエムジャパン)]を使用した.試料はイオン交換水中に浸漬し保管(Wet),シリカゲルを同封し乾燥状態で保管(Dry)または10,000回のサーマルサイクルを行った(TC).ベースラインとしてセメント練和開始1時間後にせん断強さの測定を行った.また,各保管条件について光照射群と無照射群を作製し,Punch法にてせん断強さの測定を行った(n=10).光照射群のせん断強さは無照射群と比較して大きい値を示した.Dryのせん断強さはWetおよびTCと比較して小さくなる傾向を示した.またDryのせん断弾性係数はWetおよびTCと比較して大きくなる傾向を示した.このことから試料保管条件はデュアルキュア型セルフアドヒーシブレジンセメントのせん断強さおよびせん断弾性係数に影響を与えることが示唆された.

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