ナノ粒子を添加したグラスアイオノマーセメントの性質は,ナノ粒子の種類や粒子径や合成方法,セメントへの添加量,セメントの種類などに影響を受けている.金属,TiO2などの酸化物,無機材料,線状高分子,リン酸カルシウム化合物のナノ粒子が添加されている.また薬理作用成分をナノ粒子と共に添加して薬理効果を期待するセメントもある.研究結果から,最適なナノ粒子添加量であれば,機械的性質やフッ素イオン放出量,抗菌性などを増加させることができる.ナノ粒子によるセメントマトリックス構造の強化とナノ粒子の均一分散によるマトリックスの高密度化によって機械的性質が改善されていると考えられた.しかしながら,ナノ粒子添加グラスアイオノマーセメントの長期的な性質の変化ならびに臨床経過は不明である.ナノ粒子添加によって機械的性質の改善と共に抗齲蝕性や歯質強化作用のような機能をグラスアイオノマーセメントに付与させることが望まれる.
接着・合着用セメントの打ち抜きせん断試験 (Punch法) 用試料厚さがせん断強さに及ぼす影響について検討した.実験には従来型グラスアイオノマーセメント(CGIC)1種類,レジン添加型グラスアイオノマーセメント(RMGIC)2種類およびセルフアドヒーシブレジンセメント(SARC)3種類を使用した.各セメントは,厚さが異なる5種類(0.15~2.00 mm)の試料を作製し,Punch法によるせん断強さの測定を行った(n=10).また,各試料についてせん断応力分布の有限要素解析を行った.RMGICおよびSARCは試料厚さの増加に伴いせん断強さが増加する傾向を示した.一方,CGICのせん断強さは試料厚さの影響を受けなかった.有限要素解析において,試料厚さはPunch法によるせん断強さ測定時の試料内のせん断応力分布に影響を与えた.試料厚さはレジン成分を含む接着・合着用セメントの測定されるせん断強さに影響を与えることが示唆された.