日本透析医学会雑誌
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27 巻, 12 号
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  • 雑賀 保至, 木村 圭吾, 児玉 直也, 藤井 良一, 湯川 進
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1445-1450
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 矢崎 国彦, 小口 壽夫, 徳永 眞一, 小林 衞, 山崎 徹, 林 圭介, 床尾 万寿雄, 洞 和彦, 古田 精市
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1451-1455
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析患者では血清トランスアミナーゼ値が低い値をとることが経験的に知られており, 当科の関連施設における肝炎ウイルス陰性の慢性維持透析患者200人のAST, ALTの平均±SDはそれぞれ12.5±6.0, 10.9±6.0であり, 腎機能正常者と比較して低値を示した. この理由を考えるため, 著者は保存期慢性腎不全患者における腎機能とトランスアミナーゼの関連性を検討した. ALT値は血清クレアチニン (Cr) 値と負の相関関係を認めた. ASTでは相関関係を認めなかったが, 鬱血肝の影響を考慮し, 血清Cr値9未満症例について検討した結果ASTについても負の相関関係を認めた. また血液透析前後の血清トランスアミナーゼ値の比較, ならびに血液透析後の腎不全患者血清と腎機能正常者血清の混合実験により腎不全患者血清中の透析され得ないトランスアミナーゼ酵素活性阻害物質の存在が示唆された.
  • 皆川 太郎, 大熊 俊男, 後藤 尚己, 操 潤, 井上 清明, 石黒 源之, 高田 信幸, 平野 高弘, 森 甫
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1457-1462
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    エリスロポエチン (r-HuEPO) 投与時に生じる血圧上昇の原因についての明確な結論は得られていない. そのため, 今回その原因に対して左室後負荷の面から検討を行った.
    対象と方法: 対象は, Ht (ヘマトクリット値) が25%以下の腎性貧血を伴う維持透析患者16例 (男7例, 女9例). 平均年齢は62歳. 目標Htを30%としてr-HuEPOを経静脈的に投与した. r-HuEPO投与開始前と, 目標Htに達した後で血圧, 心拍数を計測し, 同時に断層心エコー検査を施行した. 平均血圧 (MBP) が10%を超えた症例を血圧上昇群 (I群), それ以外を非上昇群 (II群) として検討を行った. 結果: Htはほぼ全例で改善を示した (r-HuEPO投与前後で22.3±1.7%→29.6±5.1%: p<0.001). I群ではMBP, SBP (収縮期血圧), DBP (拡張期血圧) ともに有意に増加し, CO (心拍出量) は有意に減少した. また, TPR (総末梢血管抵抗), ESWS (収縮末期左室壁応力) は有意な増加を示した. II群では, MBP, SBPは減少傾向を示したものの, COは変化を示さずTPR, ESWSが減少傾向を示した. 一方, r-HuEPO投与前後でのMBPの差 (ΔMBP) とTPRの差 (ΔTPR) との間にはr=0.85の正相関を認めた. r-HuEPO投与によりMBPが上昇するI群のr-HuEPO投与前のCOはII群より高値 (7.9±1.0l/min vs 6.0±2.3l/min) であり, TPRは低値 (971.5±209.6dyne・sec・cm-5 vs 1,674.1±635.6dyne・sec・cm-5) であった. まとめ: r-HuEPO投与の際に生じる血圧上昇は末梢血管抵抗の上昇に伴うものと結論づけられたが, その上昇の程度はTPRの変化の程度に依存すると考えられる. TPRの上昇に伴いESWSも増加するが, これは左室肥大の進行への関与等, 長期投与における問題点になると思われる.
  • 村本 弘昭, 川野 充弘, 水毛生 直則, 織田 邦夫, 藤田 恭子, 横山 邦彦
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1463-1468
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    難治性二次性副甲状腺機能亢進症を呈する9例の維持透析患者に対し, 経皮的エタノール注入療法 (PEIT) を施行し, その効果について検討した. PEIT前の血清Ca濃度は10.0-10.8mg/dlで, 活性型ビタミンD投与量は1例の6μg/週を除き0-2μg/週と少量であった. 9例の腫大した副甲状腺22腺に対し, 超音波画像より求めた推定体積を上限として, エコーガイド下に0.05-2.8mlの100%エタノールを注入した. PEITは1-2週間隔で3回施行し, 副甲状腺内部のechogenicityの上昇を指標に, 症例によっては適宜追加し, 計98回施行した. 高感度 (HS) PTHは, 施行前で26,410-156,100pg/ml (平均83,500pg/ml) であったが, PEIT後3-12か月経過した時点で3,000-70,600pg/ml (平均30,500pg/ml) と全例低下していた. 血清Ca濃度も全例低下し, その程度に応じて1,25(OH)2D3パルス療法を施行した. 9例中6例は, PEIT後パルス療法により良好に維持されたが, 3例でHS-PTHの再上昇を認めた. この3例中2例は, 超音波診断にて未処置の腫大した副甲状腺が発見され, 1例は残存している副甲状腺の体積が大きくPEITの効果が不十分であり, 追加のPEITが必要と判定された. intact PTHやAl-Pは, HS-PTHとほぼ同様の動きを示した. 副作用として, 全例に穿刺部位の軽度疼痛と, 2例で-過性の嗄声を認めたのみであった.
    以上の結果より, コントロール困難な程度にまで腫大した副甲状腺をPEITにより縮小させることで, パルス療法など内科的治療による維持が可能になることが期待された.
  • 下肢挙上負荷前後での検討
    田村 忠司, 太田 真, 副島 道正, 佐藤 成明, 杉本 健一, 田中 博, 宇都宮 正範, 小野 益照, 齊藤 広重, 岡田 秀雄, 川 ...
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1469-1474
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析導入前の腎不全患者25例 (糖尿病群: 10例, 非糖尿病群: 15例) およびコントロール群15例を対象として, 前負荷増加前後で腎不全患者の心機能を評価し, 糖尿病性末期腎不全患者がうっ血性心不全を起こし易い原因を検討した. 下肢挙上負荷前後にて超音波パルスドプラ法を用い左室流入血流速波形を記録し, 拡張早期最大血流速 (E), 心房収縮期最大血流速 (A), A/EおよびEの1/2減衰時間 (DHT) を心機能評価の指標とした. 負荷前より腎不全の2群ではコントロール群に比しA/EおよびDHTともに有意に大で, 左室拡張機能障害を認めたが, 糖尿病群と非糖尿病群で有意差はなかった. 下肢挙上負荷後3群ともに前負荷増加を反映してEの有意な増加, DHTの有意な減少を認めた. コントロール群および非糖尿病群ではAの有意な増加を認めたが, 糖尿病群ではAは変化なかった. 以上より末期腎不全患者で一般に存在する左室拡張機能障害に加え, 糖尿病性末期腎不全患者では下肢挙上負荷により惹起された前負荷増加にて潜在性の左房ポンプ機能障害が顕性化した. この潜在性の左房機能障害が糖尿病性末期腎不全患者でうっ血性心不全をきたし易い-因と考えられた.
  • 中島 昭勝, 東福 要平
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1475-1481
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者において, 致死的不整脈をきたしうる心電図QTcの延長について検討した. 対象および方法: 対象は, 維持血液透析患者のうち, 3か月以上症状が安定している維持透析群32名 (男24名, 女8名) で, 血液透析前後で, 心電図QTc, 血液ガス分析, 血清電解質, 血中イオン化カルシウム (Ca++), 血中HANP, 体重, 血圧などを測定し, またこれらの患者と年齢, 男女比をマッチさせた正常対照群32名 (検診受診者) について心電図QTcを測定した. 結果: 透析前で維持透析群のQTcは, 0.439±0.025secと正常対照群の0.396±0.021secと比較し, 有意に延長していた (p<0.01). 維持透析群の中で0.438sec (正常対照群の平均値+2標準偏差) 以上のものが15名 (46.9%) であり, これをA群, 0.438sec未満のものをB群として, 両群を比較すると, 血清Caは, A群で8.8±1.0mg/dl, B群で9.8±1.2mg/dlと有意差が認められ (p<0.05), 他の血清電解質, 血中Ca++, 血液ガス分析, 血中HANPには, 両群間で有意差は認められなかった. QTcの透析前後の変化量 (ΔQTc) は, 血清Ca, 血中Ca++, HCO3-の各変化量と相関したが, その他のデータとは相関しなかった. 透析後, A群において血清Caは平均9.6mg/dlまで上昇したが, QTcは平均0.450secと延長したままで, 短縮傾向は認められなかった. 結論: 慢性透析患者では, 透析前すでにQTcは延長を示す例が約半数を占め, 1回の血液透析で血清Caが正常化しても, QTcの延長の改善は認められなかった. そのQTcの延長については, 血清Ca以外に血液透析に伴う種々の原因による心筋自体の障害, 自律神経系の異常などについても検討する必要があると考えられた.
  • 大孔径透析膜 (BK-F) の腎性貧血改善効果
    栗山 哲, 友成 治夫, 宇都宮 保典, 小村 香與子, 四家 敏秀, 平野 景太, 酒井 紀
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1483-1487
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    短時間透析では高能率透析膜 (high performance membrane: HPM) ダイアライザーを必要とするが, 大孔径膜のHPMダイアライザーを用いた際, 一部の患者で腎性貧血の改善効果が報告されている. 本研究では短時間透析においてHPMダイアライザーに腎性貧血改善効果が認められるか否か, またHPMの種類により差異が認められるか否かをBK-F (polymethyl methacrylate: PMMA膜) とFB-U (cellurose triacetate: CTA膜) の二種類のダイアライザーで比較検討した.
    安定した短時間透析 (HD) を受けている患者11名でダイアライザーをFB-UからBK-Fに変更し6か月間観察したところ, 11例中7例に5%以上のヘマトクリット値 (Ht) の上昇を認めた 〔平均上昇30.6±3.6%→36.2±4.3% (24週目), n=11 p<0.01〕. この観察期間中, エリスロポエチン (Epo) の需要量は逆に有意に低下した. 一方, 血清アルブミン (Alb) 濃度は有意に低下した (3.8±0.3mg/dl→3.4±0.4mg/dl, n=11 p<0.01), このBK-Fによる貧血改善効果は, ダイアライザーをBK-FからFB-Uにもどすことにより減弱した.
    BK-Fに貧血改善効果やEpo節約効果が認められることは, 大孔径膜を有するある種のダイアライザーでは造血阻害因子を選択的に除去しうる可能性を示唆する. この作用はEpo節約効果に結びつくと考えられるが, BK-Fには同時に血清アルブミン濃度減少作用があることから, 本ダイアライザーを長期にわたる使用の際には患者の栄養状態などに十分な注意を要する.
  • 岡田 一義, 高橋 進
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1489-1492
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Dialysis-induced hypotension (DIH) 予防のためのグリセオール持続静注療法におけるグリセオール投与中止時間について検討を行った. グリセオール持続静注 (100ml/hr) 療法をHD終了時まで施行中の維持HD患者3名を対象とした. 本療法にて30回の観察期間を置いた後, グリセオール持続静注をHD終了30分前と60分前に中止した期間を30回ずつ施行した. グリセオールをHD終了時まで投与した期間では, 血清グリセロール濃度上昇に基づく血漿浸透圧の上昇による口渇の出現を認めた. HD終了30分前に中止するとHD終了時まで投与した期間と比較し, 血圧には有意な変化が見られないうえ, 血清グリセロール濃度・血漿浸透圧の上昇は有意に低く, 口渇は認めなかった. HD終了60分前に中止した期間ではさらに血清グリセロール濃度・血漿浸透圧の上昇は少なかったが, 3症例中1例に有意な血圧の低下を認めた. DIHの予防に対しグリセオールを持続静注する場合には, HD終了30分前にグリセオール投与を中止し, 血圧の安定が得られている症例については中止時間を早める方法がよいと思われた.
  • 高須 伸治, 藤井 正司, 畑村 東一, 笹原 恭一
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1493-1496
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析アミロイド症による骨関節障害の一つに滑膜アミロイドーシスがある. また滑膜と組織学的に同一の滑膜で裏打ちされた滑液包にもアミロイド沈着がみられ, 滑液包炎を惹起し滑液の貯留のため関節周囲の腫大をきたすことがある. 腸恥滑液包炎による大腿神経麻痺の報告は散見されるが, 肩甲下滑液包炎による正中神経麻痺の報告は我々が検索した範囲では見当たらない. 今回我々は, 慢性血液透析患者に出現した右手指のしびれに対し, 滑液包造影により正中神経麻痺を伴う肩甲下滑液包炎と診断した. その原因として, その滑液中にはカルシウム塩の結晶は証明されなかったが, X線上滑液包の石灰化を認め, 結晶性滑膜炎の可能性も示唆された. 治療においては, 滑液の穿刺排液にて減圧すると同時に, ステロイドの滑液包内注入と同時に, low doseステロイドの内服を継続した. これにより周囲の組織の圧迫症状が軽減され, 正中神経領域のしびれも消失したものと推察された.
  • 三輪 博久, 須藤 博, 安岡 キミ, 露木 和江, 小川 成海
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1497-1499
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    アクセス穿刺カテーテル先端が脱落して血管内迷入し, 超音波検査で位置同定後摘出された稀な1例を報告する. 症例は68歳, 女性, 慢性糸球体腎炎による腎不全で透析歴20年. 1990年12月4日, アーガイル社製クランピングチューブ付きメディカットカニュラショートタイプを用い, 左肘近傍の動静脈瘻を普通に穿刺した. 穿刺部からの出血で, カテーテル先端の血管内迷入に気づいた. アクセス近位側を圧迫しつつ, 超音波検査でアクセス内に停滞しているカテーテル先端部を確認し, 局所麻酔下に摘出した. 破損したカテーテルの基部および先端部は, 穿刺時に内筒針で切断されたのではなく, 基部から引きちぎれるように破損しており, 製造工程上生じた稀な欠陥品と考えられた. 血管内異物の位置同定には, 超音波検査が有用だった. 検索し得る限りアクセス穿刺用カテーテルの血管内迷入報告症例は認められなかった.
  • 西谷 真明, 西村 和重, 高木 紀人, 大田 和道, 中村 晃二, 桑原 守正, 藤崎 伸太
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1501-1504
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に合併した肘関節および手関節結核の1例を経験したので報告する.
    症例は透析歴2年の63歳男性で, シャント側である左前腕の腫脹, 疼痛を訴え, 左手関節部に皮下膿瘍を認めた. 間欠的な発熱が続き, 発症4か月後の骨X線像で肘関節および手関節に骨破壊像が出現したため, 病巣掻爬を行い結核菌が同定された. 同時に行った骨生検ではアミロイド, アルミニウムの沈着はみられなかった. isoniazid, rifampicin, streptomycinの投与を行い, 3週間後より発熱は消失, 左前腕の腫脹, 疼痛も軽快した. 透析患者における破壊性関節病変の鑑別疾患に結核も考慮する必要があると考えられた.
  • 海津 嘉蔵, 小嶺 憲国, 瓜生 康平, 池田 匡儀, 橋本 修, 江藤 澄哉
    1994 年 27 巻 12 号 p. 1505-1510
    発行日: 1994/12/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ブシラミンは, 日本で開発された遅効性抗リウマチ薬であるが, 腎排泄性であり腎不全症例への投与は禁忌とされてきた. 今回, 我々は維持透析へ導入後もコントロール困難な関節痛に悩む慢性関節リウマチの1症例に対し, 薬物動態を調べた上でブシラミンを投与し, 副作用なく良好な結果が得られたので報告する. 症例は56歳女性, 1967年慢性関節リウマチと診断された. 1984年蛋白尿・腎機能障害が出現, lip biopsyにてアミロイドーシスと診断された. 1985年維持透析へ導入となった. 1992年関節痛は増悪しステロイドホルモン・消炎鎮痛剤にてコントロール困難となった. QOLが障害されておりブシラミンの投与を考慮した. 投与にあたり, 非透析日と透析日の薬物動態を調べた. 非透析日には, ブシラミンの血中濃度半減期は健常人とほぼ同じであったが, 活性代謝産物 (SA981・SA679) の半減期は著しく延長していた (9.3時間, 24.4時間). 透析日ではブシラミンと活性代謝産物は透析性を有していた. 以上から, ブシラミンの投与量を透析日のみ透析後に100mgとした.
    ブシラミン投与4週以降関節痛は著明に軽減, 他覚所見・炎症反応・Lansbury indexも改善した. 症状の改善に伴い階段昇降が可能になるなどQOLが改善した. 投与中副作用はみられなかった. 投与4・8・12・24週にブシラミンと代謝産物の血中濃度を調べたが蓄積性はなかった. 1例のみの経験であるが, 従来禁忌とされてきた高度腎不全患者においても, 薬物動態を調べた上で投与量を減量すればブシラミンは投与可能であり, さらに抗リウマチ作用が期待できると考えられた.
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