糖尿病性壊疽は, 透析導入後も生命予後や社会復帰を脅かす重大な合併症の一つである. 著者らは今回, CAPD療法における壊疽の発生, 増悪について検討した.
症例はCAPD患者20例, 血液透析患者10例である. 壊疽の発生をみたのは, CAPD患者6例で, このうち4例で外科的治療が行われ, 6例全員が壊疽発生2年以内に死亡している. 一方, 血液透析群では, 壊疽の発生はみられなかった.
壊疽の発生, 増悪に関する要因をみるため, 患者をCAPD壊疽群 (n=6), 非壊疽群 (n=14), 血液透析群 (n=10) に分けて検討した. 三群間に年齢, 糖尿病歴, 喫煙歴, 網膜症, 神経症に有意差はみられない. 糖代謝でみると壊疽群では透析導入前からコントロール不良であり導入後も壊疽群, 非壊疽群, 血液透析群はそれぞれ, 空腹時血糖270.0±71.4, 169.5±44.1, 138.8±42.2mg/d
l, HgA
1cも10.8±1.0, 7.5±1.4, 6.5±0.6%とCAPD群, 特に壊疽群で有意にコントロール不良で, またインスリン使用も血液透析群は2例に過ぎないのに対し, 壊疽群では全例使用していた. また血圧もそれぞれ, 144±13/79±14, 154±13/83±10, 163±13/84±5mmHgと降圧剤の使用が少ないにもかかわらず壊疽群で有意に低かった. また血清アルブミンをみると, 2.5±0.3, 3.1±0.4, 4.0±0.6g/d
lとCAPD群, 特に壊疽群で有意の低下がみられた. この他, 壊疽群では食欲不振, 嘔吐による脱水の頻度が高かった.
以上より, CAPD群で壊疽を合併した頻度が高く, その発生, 増悪には, 糖尿病のコントロール不良ばかりでなく, 低蛋白血症, 血圧低下, 脱水などが関与しており, より厳格な全身管理を行う必要があると考えられる.
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