日本透析医学会雑誌
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28 巻, 1 号
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  • 日本透析医学会統計調査委員会
    1995 年 28 巻 1 号 p. 1-30
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1993年末の日本透析医学会の統計調査は2,641施設を対象に実施され, 2,629施設 (99.55%) から解答が回収された. 1993年末のわが国の慢性透析症例数は134,298人であり, 昨年末に比べて10,372人 (8.4%) の増加であった. 1992年末から1993年末までの1年間の粗死亡率は9.4%と前年に次ぐ高い値を示した. 透析導入症例の平均年齢は59.80±14.36歳と一層の高齢化が認められた. また, 透析導入症例の原疾患の割合は慢性糸球体腎炎が41.4%と昨年よりもさらに減少し, 糖尿病腎症は29.9%とさらに増加した. 透析量に関するパラメータの調査では, Kt/Vの平均は1.31±0.30であり, protein catabolic rate (PCR)の平均は1.01±0.22g/kg/dayであり前年とほぼ同じ値であった.
    生命予後解析では体重減少率2-6%未満, Kt/V 1.6以上, 1回透析時間は5時間以上, PCRでは非糖尿病症例では1.1-1.3g/kg/day未満, 糖尿病症例で0.9-1.1g/kg/day未満, クレアチニン産生インデックスはできるだけ大きい値が最も死亡頻度が低い群であることが示された.
  • 2. 分離菌種について
    石原 哲, 小林 覚, 前田 真一, 斉藤 昭弘, 出口 隆, 兼松 稔, 栗山 学, 坂 義人, 河田 幸道, 小口 健一, 小林 克寿, ...
    1995 年 28 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者における細菌尿の実態を知る目的で, 尿路感染症の急性症状を示さない時期に, 尿検査を実施し分離菌種を検討した.
    複数菌種の細菌が分離される割合が過半数を占め, また女性の方が複数菌種分離の程度が高かった. 分離菌種は, グラム陽性球菌, 特にStaphylococcus属の頻度が高かった. これらは103CFU/ml以下の低菌数で分離される検体が多く, 採尿時の汚染が示唆されたが, 菌数104CFU/ml以上の単独菌分離の67%がEnterococcus faecalis, Streptococcus属をはじめとするグラム陽性球菌であるなど, 一般の尿路感染症と異なる傾向も見られた.
    乏尿など特異な病態下にある血液透析患者の細菌尿の解釈には注意が必要であると考えられた.
  • 西川 慶一郎, 伊藤 周二, 鶴崎 清之, 竹垣 嘉訓, 福井 淳一, 岸本 武利, 矢野 郁也, 松田 淳, 上水流 雅人, 寺田 隆久
    1995 年 28 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者では肺外結核が多く, 抗酸菌の塗抹検査や分離培養による菌の検出は困難であり, また細胞性免疫能の低下のためツベルクリン反応は特異性が低く, 診断には苦慮する. そこで新しい結核の血清診断法であるtrehalose-6,6'-dimycolate (TDM) 血清診断法を血液透析患老の結核症に応用し検討を行った. 活動性結核の疑われる症例および結核の既往 (非活動性結核) のある症例8例, 非結核症例5例と健康成人5例を検討した. その結果, 活動性結核を疑われた血液透析患者3例の血清IgG分画に抗TDM抗体を検出し, 活動性結核と診断しえた.
    さらにTDM血清診断法にて診断しえた微熱の持続する71歳, 女性の臨床経過を検討したところ, SM, INH, RFPの三者併用療法にて微熱は消失し, 白血球の正常化およびCRPの低下に伴い抗TDM抗体価は次第に減少した.
    以上よりTDM血清診断法は血液透析患者の結核症においても有用であり, 抗TDM抗体価は患者の病状を反映し推移するため治療を決定するうえでの重要性が示唆された.
  • 寺山 百合子, 二川原 和男, 佐藤 元昭, 森田 秀, 舟生 富寿, 川口 俊明, 鈴木 唯司
    1995 年 28 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    erythropoietin (EPO) 産生能が残存している血液透析 (HD) 患者におけるEPOの分泌調節機序とEPOに対する赤血球産生の感受性について明らかにするために, HD患者154例から選んだ10例について2年8か月間の血漿EPOとヘマトクリット (Ht) および血清鉄 (Fe) との相関関係をみた. 血漿EPOの測定はradioimmunoassay法である.
    EPOがHtと逆相関関係を示した7例においては, EPOはFeとも逆相関関係にあったが, 同程度のHtおよびFeに対するEPOレベルに症例間で差がみられた. 出血前後では4例がEPOとHtと逆相関関係を示し, そのうち2例では出血後1週間はEPOが著しい高値となったが, その後は同程度のHtに対しても軽度の高値に留まった.
    以上から, HD患者の約6%の例ではEPO分泌は鉄欠乏および出血に対してフィードバック調節されていることが示された. EPOレベルの症例による差はEPOに対する赤血球産生の感受性の差か, EPOの測定値に占めるbioactive EPOの割合が異なるためかは明らかではない.
  • 市川 久志, 堀 和芳, 長見 英治, 斎藤 晃, 山崎 英隆, 川崎 忠行, 徳竹 修一, 犬丸 達也, 新井 貴士, 百瀬 卓志, 生方 ...
    1995 年 28 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者に膜素材の異なる5種類 (セルロース膜, エチレンビニルアルコール膜, ポリエステル系ポリマーアロイ膜, ポリスルフォン膜, セルローストリアセテート膜) のハイパフォーマンス透析膜を用いて, 小分子量物質としてCr, 中分子量物質として尿毒症性ピーク2a (ピーク2a), 低分子量蛋白としてβ2-MG各々の血中変化率および排液除去量について比較検討を行った. また, ピーク2a除去が拡散, 濾過, あるいは吸着によるものかを検討した.
    さらに, 長期使用における従来膜 (B2-1.3) HDとハイパフォーマンスPS膜 (PS-1.6UW) HD, PS膜HDF (8L) のCr, ピーク2a, β2-MGとHtの推移についても検討した. なお検討期間中, 透析条件および投薬等は変更しなかった.
    変化率, 除去量測定前における血中Cr, ピーク2a, β2-MGのHD前値に有意差はなかった. 小分子Crの変化率, 除去量で, それぞれの透析器で有意差はなかったがピーク2a, β2-MGでは有意差が認められ, 中分子量領域の物質において膜素材が異なるとその透析効率に差がみられた. 長期観察例では, 従来膜 (B2-1.3) HDからPS膜HDおよびPS膜HDFに変更し, Htが上昇した.このときの透析前血中Crには変動がなく, ピーク2a, β2-MGでは低下する傾向が認められた. 従って中分子量領域や低分子量蛋白領域をより積極的に除去することが貧血の改善に寄与する可能性が示唆された.
  • 宮崎 高志, 丹羽 利充, 佐藤 元美, 都築 徹哉, 上間 寛治, 筑紫 さおり, 妹尾 久雄, 前田 憲志
    1995 年 28 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    インターロイキン8 (IL-8)は好中球, T cell, 好塩基球の遊走および刺激因子として働き, 炎症の媒体として重要な役割を果たしている. 透析中には血圧低下, 発熱, 掻痒のような無菌的な炎症性合併症の頻度が多く, その発症機序に炎症性細胞からのサイトカインの放出が関与している可能性がある. 血液透析 (HD) が血漿IL-8濃度にいかに作用するかを明らかにするため, 種々の透析膜を使用したHD前後の血漿IL-8濃度と末梢血単核球 (PBMC) におけるIL-8 mRNA発現について検討した. HD後の血漿lL-8濃度の上昇はTFα-1300 (RC), BK-1. 3P (PMMA), KF201-1200 (EVAL), Polyflux 130 (PA) において観察され, PAN-13DX (PAN), PS-1.3UW (PS), FB-130F (CTA) ではその変化は認められなかった. その際, PBMCにおけるIL-8 mRNA発現の変化は血漿濃度の変化に-致していた. また, 透析膜自身のIL-8の吸着性についても検討したところ, 吸着性を示したのはPANのみであった. 以上のことから, 透析膜の生体適合性の新しい指標としてIL-8が有用と考えられた.
  • 玉井 収, 西田 秀美, 和田 芳文, 河野 啓助, 大原 敦子, 松岡 秀洋, 堀 義晴, 真島 健吉, 山名 一有, 野村 岳而
    1995 年 28 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    著明な出血傾向を伴う腎不全患者の血液透析導入時に, 内シャント, 外シャントを同時に, かつ同側に作成し, その外シャントを用いて導入を行った1例を報告する.
    症例は38歳の男性, 慢性腎炎にて外来加療を受けていたが, 腎不全の急性増悪にて入院となる. 血小板凝集能の低下を含め著明な出血傾向を認め, 穿刺によるカテーテル留置は危険と思われ手術的に確実に止血を行い得る外シャントを作成し, その早期抜去を可能とするため内シャントも同時に作成した. 外シャントにて導入を行ったが透析効率, 内シャント発達ともに良好であり術後10日で内シャント使用可能となり, 外シャントも抜去した.
    外シャントは感染, シャント閉塞, 動脈狭窄等の問題で最近はあまり使用されていない方法であるが, 内シャントと同側, 同時に作成する場合には有用と考えられた.
  • 1,25(OH)2D3投与の影響
    林 春幸, 入江 康文, 横関 一雄, 小林 進, 伊藤 靖, 松下 一之, 磯野 可一
    1995 年 28 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    二次性副甲状腺機能亢進症患者より摘出した副甲状腺における, preproPTH, c-myc, オルニチン脱炭酸酵素遺伝子 (ODC) mRNAの発現をノーザンブロット法で調べ, 術前に投与した1,25(OH)2D3(D3) の影響を検討した. 3例11個の副甲状腺においてpreproPTHの発現は最小の発現量を1とした場合最大約2倍程度の多寡が見られたものの, 副甲状腺の大きさや組織型の多様性と相関した変化ではなかった. c-mycの発現は1例の4個の副甲状腺のうち2個で発現増大が認められた. しかしこれらの副甲状腺の大きさや組織型には際立った特徴はなく, その発現増大の原因は明らかではなかった. ODC mRNAの発現量はすべての副甲状腺においてほぼ一定であった. D3は4μgを4例に対して術前3.5-48時間に経口投与した. 摘出した13個の副甲状腺の遺伝子発現を検討した結果, preproPTH, c-myc, ODCいずれの発現も3例の非投与例と差が認められなかった. したがって副甲状腺摘出術の適応となるような二次性副甲状腺機能亢進症においては, D3 4μg投与では, これらの遺伝子発現は抑制されないものと考えられた.
  • 近松 香里, 北野 智賀子, 佐藤 由佳, 藤田 昌子, 石黒 源之, 大熊 俊男, 幾高 敏晴, 平野 高弘
    1995 年 28 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者は水分制限や野菜摂取量すなわち食物繊維摂取量が少ないため, 便秘を呈する場合が多い.
    入院中の維持透析患者で便秘のため緩下剤使用中の男性3名, 女性3名の計6名を対象とし, 1993年10月1日より水溶性食物繊維 (polydextrose) 10g含有のゼリーを1日1回食事に加え, 排便調査を行いその有用性を検討した.
    排便日数の増加, 緩下剤使用量の減少, 便性の改善, 排便時間の定期化が半数以上に認められた.
    維持透析患者への便通コントロールとしてカリウムを含まないpolydextroseの食事への添加は, 有用な方法であると考えられた.
  • 徳島 秀次, 田村 展一, 叶澤 孝一, 松村 治, 御手洗 哲也, 磯田 和雄, 糸山 進次, 関根 進, 廣瀬 ヒロ子
    1995 年 28 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriは上部消化管粘膜病変の病因に重要な役割を果たしていると考えられている. Helicobacter pyloriが検出された維持血液透析患者の難治性胃潰瘍におけるHelicobacter pyloriの除菌を試み, その結果潰瘍が治癒した症例を経験したので報告する.
    症例は45歳, 男性で1990年9月より維持血液透析 (HD) を開始し, 1992年8月に胃潰瘍を合併した. 潰瘍はomeprazoleやranitidineの投与によりH2 Stageまで改善したが, 再びH1 stageに増悪した. このとき施行した胃粘膜生検組織の培養によりHelicobacter pyloriが検出された. Helicobacter pyloriの除菌を目的にamoxicillin (750mg, 毎透析終了時内服) を投与したところHelicobacter pyloriは消失し, 潰瘍も治癒した. 18か月後の内視鏡検査でも潰瘍の再発はなくHelicobacter pyloriも検出されていない.
  • 勝二 達也, 金 智隆, 林 晃正, 北村 栄作, 岡田 倫之, 中西 功, 椿原 美治, 岸川 政信, 桂田 菊嗣
    1995 年 28 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    意識障害が約1か月間遷延し, 多臓器不全を合併しながらも救命しえた熱中症の1例を報告する. 症例は14歳, 男性. 平成5年8月17日, サッカー部の練習中, 突然呼吸困難, 意識障害をきたした. 入院時, 意識レベル3 (JCS), 直腸温40.8℃, 発汗停止し, 呼吸不全を認め, さらに急性腎不全, 肝不全, DICを合併し多臓器不全に進行した. 9日間の高度意識障害と, さらに1か月に及ぶ軽度から中等度の意識障害を伴ったが, 持続的血液濾過, 血液透析, 血漿交換療法等の血液浄化法により多臓器不全の管理を行い, 救命するに至った.
    熱中症は現在でも致死率の高い疾患であり, 特に意識障害が遷延する場合は, 極めて予後不良である. 迅速な体温冷却と多臓器不全の管理が重要であり, 血液浄化療法を行うにあたって, 体温冷却を念頭におくことが望ましい.
  • 桑原 守正, 高木 紀人, 西谷 真明, 中村 晃二, 大田 和道, 藤崎 伸太, 降幡 睦夫
    1995 年 28 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全にて血液透析中の61歳の女性に合併した頸部リンパ節結核の1例を報告する.
    不明熱ののちに頸部リンパ節が多数個, 有痛性の腫脹をきたし, その生検による病理組織学的所見にてリンパ節結核の診断が得られた. 治療はisoniazid 0.2g/日, rifampicin 0.45g/日を10か月間, streptomycin 0.5g/週を3か月間, 3剤の併用投与を行い寛解を得ることが可能であった.
    血液透析患者の結核症は透析開始3か月以内に発症することが多く, 1-2年以内に発病率が高いことが知られている. 自験例は透析開始約2年後に発病したが, 血液透析患者の結核症は典型的でないことが多く, 肺外結核や, しばしば不明熱の原因として発見されるので注意が必要である.
  • 1995 年 28 巻 1 号 p. 99-112
    発行日: 1995/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
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