HMG-CoA還元酵素阻害剤であるsimvastatin (リポバス
®) を脂質異常を呈する透析患者に投与し, その効果と安全性について検討した. 血清総コレステロール (TC) 200mg/d
l以上または高比重リポ蛋白コレステロール (HDL-C) 35mg/d
l以下を呈する透析患者38例, 男性20例, 女性18例, 平均年齢58.7歳を対象とし, simvastatin 1日5mgを投与し, 投与前より投与後6か月までの血清脂質, アポ蛋白, lipoprotein (a) (Lp (a)), 過酸化脂質 (MDA) を測定した. また, 超遠心法にてリポ蛋白を分離し各リポ蛋白内の脂質成分もそれぞれ測定した.
simvastatin投与前後においてTCは, 25.7% (232.4±47.2mg/d
l→172.6±32.9mg/d
l), 低比重リポ蛋白コレステロール (LDL-C) は, 33.6% (151.0±36.9mg/d
l→100.3±29.3mg/d
l) と有意に低下したが, HDL-C, 中性脂肪には有意な変化は認められなかった. アポ蛋白は, アポB 24.5% (115.4±20.6mg/d
l→87.1±20.5mg/d
l), アポE 30.0% (6.9±2.8mg/d
l→4.9±3.0mg/d
l) と有意に低下したが, 他のアポ蛋白には有意な変化は少なかった. MDAも有意に低下したが, Lp (a) には変化は認められなかった. リポ蛋白の分画では超低比重リポ蛋白コレステロール (VLDL-C), 中間型リポ蛋白コレステロール (IDL-C), LDL
1-C, LDL
2-Cに有意な低下が認められたが, その他のリポ蛋白分画の脂質成分にはそれほど大きな変化は認められなかった. 安全性については, simvastatin投与12か月間において, 特記すべき副作用はほとんど認められなかった.
以上のことよりsimvastatinは透析患者の高コレステロール血症に対して有効であり, かつ安全に使用できることが示された.
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