日本透析医学会雑誌
Online ISSN : 1883-082X
Print ISSN : 1340-3451
ISSN-L : 1340-3451
29 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 日本透析医学会統計調査委員会
    1996 年 29 巻 1 号 p. 1-22
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1994年末の日本透析医学会の統計調査は2,759施設を対象に実施され, 2,752施設 (99.75%) から回答が回収された. 1994年末のわが国の慢性透析患者数は143,709人であり, 昨年末に比べて9,411人 (7.0%) の増加であった. 1993年末から1994年末までの1年間の粗死亡率は9.5%と前年に続いて高い値を示した. 透析導入症例の平均年齢は60.43±14.27歳と一層の高齢化が認められた. また, 透析導入症例の原疾患の割会は慢性糸球体腎炎が40.5%と昨年よりもさらに減少し, 糖尿病性腎症は30.7%とさらに増加した.
    生命予後解析では, 体重減少率6%未満, Kt/V 1.6以上, 1回透析時間は5時間以上, 非糖尿病症例ではprotein catabolic rate (PCR) 0.9g/kg/day以上, 糖尿病症傍ではPCR 0.7g/kg/day以上, %クレアチニン産生速度 (クレアチニン・インデックス) はできるだけ大きい値, 血清アルブミン濃度は4.0g/dl以上, および透析前血清リン濃度は4.0mg/dl以上5.0mg/dl未満が最も死亡のリスクが低い群であることが示された.
  • 三宅 範明, 岡本 増巳, 福川 徳三, 松下 幸子, 佐野 倫代, 栗栖 美佐子, 井尻 鶴代, 堤 初恵, 光家 努, 丸尾 善之
    1996 年 29 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    リドカイン含有局所麻酔貼付 (テープ) 剤 (商品名; ペンレス®) の維持血液透析症例に対する有用性と至適使用方法に関する検討を行った. 維持血液透析症例17名 (男性14名, 女性3名) を対象とした. 内シャント穿刺時疼痛度はvisual analogue scale (VAS) を用い判定した. 本剤を使用せずにシャント穿刺をした場合と本剤を穿刺前に30分間, 60分間, 90分間貼付した場合での疼痛度を比較検討した. 本剤を使用しなかった場合, あるいは本剤を30分間, 60分間, 90分間貼付した場合のVASスコアはそれぞれ9.82±1.24, 4.57±0.72, 3.00±0.51, 2.69±0.48 (平均値±標準誤差) であった. 本剤を使用しなかった場合と30分間貼付した場合, 60分間貼付した場合, 90分間貼付した場合の間にはいずれも有意差を認めた (いずれもp<0.001). また, 30分間貼付した場合と90分間貼付した間にも有意差を認めた (p=0.015). しかし, 30分間貼付と60分間貼付の間, および60分間貼付と90分間貼付の間には有意差は認めなかった (p=0.051, p=0.329). 以上の結果により本剤は内シャント穿刺時の疼痛緩和に有用であることが判明した. 30分間貼付と60分間貼付の間には統計学的有意差は認めなかったものの疼痛スコアの低下傾向 (p=0.051) を認めており, 平均的には本剤の貼付時間は60分以上とするのが妥当と考える. しかし, 本剤の疼痛緩和効果は個人差が大きく, 一律的な至適投与方法の決定は困難である. 症例毎に各種貼付時間を試行し, 至適貼付時間を決定すべきと考える.
  • 大山 信雄, 益田 真理, 久我 由紀子, 新井 邦彦, 本宮 善恢, 土肥 和紘, 岡島 英五郎
    1996 年 29 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素 (NO) は近年最も注目を集めている物質の一つであるが, 血液透析患者での報告は極めて少ない.
    NOは生体内においてほぼ完全に亜硝酸イオンおよび硝酸イオン (NO2-/NO3-, NOx) に代謝されるので, 今回, 維持透析患者30例と保存期腎不全患者20例および健常者19例において血漿中NOx濃度を測定し, さらに維持透析患者群においては血圧および大動脈石灰沈着との関係についても比較検討した. 血漿中Nox濃度は維持透析患者群 (透析前) で平均171.0±96.65×10-6M, 保存期腎不全患者群で136.0±68.76×10-6Mと, 両群とも健常者での平均値 (59.3±31.42×10-6M) に比べ有意に上昇しており, さらに維持透析患者中, 高血圧群および重度石灰沈着群において有意な高値を示した.
    今回の検討より, 維持透析患者ではNOx産生亢進が広範囲にわたってみられ, さらにマクロ的血管病変にNOが深く関わっていることが強く示唆された.
  • 川瀬 義夫, 細井 信吾, 伊藤 英晃, 山崎 悟, 岩元 則幸, 平竹 康祐, 小林 裕之, 橋本 哲也, 福田 豊史, 沖野 功次, 山 ...
    1996 年 29 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年, 心拍のR-Rスペクトル解析の臨床応用が進むにつれて自律神経活動を交感神経系と副交感神経系に分離定量化し, さらに経時的にその活動状況を追跡することが可能になってきた. そこで今回我々は, 血液透析 (HD) 患者に48時間連続でホルター心電図計を装着し, 約20万beatの心拍変動をすべてフロッピーディスクに格納したのち最大エントロピー法 (MEM) にてスペクトル解析を施行した. さらに得られた高周波成分 (HF) や低周波成分 (LF) などの時系列成績をフーリエ変換 (FFT) を用いた周期回帰分析法にて曲線回帰し, 交感神経および副交感神経の日内変動パターンを変動周期と変動型に分けて分析検討した. 以上の結果, HD患者の自律神経活動は健常者とは異なり交感・副交感神経ともに48時間周期で変動しており, HD日には交感神経系の活動が亢進し, 逆に非HD日には副交感神経系の活動が亢進する特異な変動型を示すことが明らかになった. 一方, HD患者における心拍数の変動周期は, 約24時間の概日リズムを保持していた.
  • 福島 達夫, 佐藤 哲也, 佐々木 環, 山田 昌彦, 岸本 信康, 川井 伸一郎, 橋本 淳, 松谷 拓郎, 進藤 享, 平野 宏, 大澤 ...
    1996 年 29 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    75歳以上の腎不全症例で透析を導入した20症例 (男10, 女10) を死亡群6例と生存群14例に分けて, その導入期の臨床所見を比較検討した. 両群合わせての原疾患は慢性糸球体腎炎と腎硬化症が75%を占め, 糖尿病性腎症は10%のみであった. 臨床所見では死亡群において, 血清総蛋白 (5.77±0.85g/dl vs 6.62±0.63g/dl, p<0.05) とアルブミン (2.79±0.579/dl vs 3.67±0.53g/dl, p<0.01) が低く, 血漿Na (145.08±6.47mEq/l vs 137.47±6.42mEq/l, p<0.05) とCl (110.67±7.90mEq/l vs 101.67±857mEq/l, p<0.05) が高い傾向にあり, 6例中5例が透析中の低血圧を呈しており, 膠質浸透圧低下による血管内への水分保持障害と高張性脱水の関与が示唆された.
    さらに死亡群では導入早期に死亡した例が多く, 導入期の除水管理が予後を改善するものと考えられた.
  • 低分子量ヘパリンと非分画ヘパリン使用時の比較検討
    小野 久米夫, 猪瀬 和人, 遠藤 重紀, 土田 晃靖, 松島 清, 小内 正幸, 駒井 実, 矢野 新太郎, 成清 卓二
    1996 年 29 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析膜による生体不適合反応の結果引き起こされる血中myeloperoxidase (MPO) の上昇反応を検討するために, 我々はモノクローナル抗MPO抗体を作製し酵素抗体法による血漿中MPOの測定法を確立した. この方法により血液透析患者のクプロファン透析膜を使用した透析中の血中MPOの変動を検討した. その結果血液透析時開始15分後に著明な血中MPOの上昇反応が引き起こされ, 終了時まで高値が持続することが明らかとなった. さらに我々は抗凝固剤の血中MPOの変動に及ぼす影響を検討した. 同一血液透析患者に対して抗凝固剤としてヘパリン, 低分子ヘパリン使用時の比較を行い, 低分子ヘパリンでは有意にMPO上昇反応が低下することを認めた. 一方顆粒球エラスターゼは低分子ヘパリン使用時においても有意な低下は認めなかった. これらのことより抗凝固剤として低分子ヘパリンを使用することにより, 不適合反応に起因する副作用につながる可能性のあるMPO放出反応を低下し得ることが示された.
  • 湯浅 健司, 西川 宏志, 福森 知治, 松本 茂, 小松 文都, 山本 晶弘, 寺尾 尚民, 矢吹 聖三
    1996 年 29 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    52歳女性, 高度の慢性腎不全例で急速に歩行困難をきたし血液透析 (HD) 導入したが改善せず, ステロイド・パルス (MP) 療法を行い, 軽快したギラン・バレー症候群 (GBS) の1例を経験した. 感冒を前駆症状とし潜伏期間は約19日, 伸展期は6日, 症状極期重症度はHughesらの分類でgrade 4, 罹病期間は約300日であった. GBSは急性に発症する運動麻痺主体の急性炎症性脱髄性多発根神経炎であるが, 腎不全を伴う場合は急速進行型の尿毒症性多発神経炎 (accelerated uremic neuropathy: AUN) との区別が困難なことが多い. ともに急速な経過をとって運動障害優位の末梢神経障害を呈し, 髄液蛋白増加や電気生理学的, 病理学的に脱髄所見を示し得る可能性があるなどの類似点があるためと考えられる. 両者の鑑別診断についても若干の考察を加えた.
  • 小林 文, 石井 義孝, 阿部 由紀子, 金井 秀夫, 前沢 晃, 矢野 新太郎, 成清 卓二
    1996 年 29 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    一般に血液透析患者の発癌率は高率であるといわれているが, 本邦では一般人口において皮膚腫瘍が少ないこともあり, 透析患者の皮膚腫瘍合併症例の報告は少ない. 今回, 我々は血液透析患者に発生した皮膚悪性黒色腫の1例を経験した. 症例は, 65歳女性, 導入後20年の維持透析患者である. 十数年前に左手第5指爪を負傷したが, その創瘢痕部の易出血性, 痛みが出現するようになり, 皮膚科にて悪性黒色腫と診断された. 第5指切断術, 腋窩リンパ節郭清術を施行したが, 腫瘍細胞は皮下組織に達しており, stage IIIであった. 悪性黒色腫に対しては一般に外科的切除に加え化学療法が施行されているが, 本例では, 術後, 肺炎, 脳内出血を併発し全身状態が不良であるため化学療法の施行に踏み切れずに経過している. 透析患者の増加, 高齢化とともに今後透析患者に化学療法を施行する機会は増えると予想されるが, 透析患者に対する化学療法は薬剤の薬物動態や透析率に関して不明な点が多く, 今後の課題であると考える.
  • 八竹 攝子, 中村 泰浩, 安済 勉, 小林 武, 石田 裕則, 多田 成利, 森山 隆則
    1996 年 29 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1996/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    患者は66歳の女性で, Sjögren症候群による腎不全に対して, 1992年1月から血液透析中であった. 1994年7月, 両側耳下腺部の腫脹, 頸部リンパ節腫脹, 発熱, 羞明などの症状とともに, 血清アミラーゼ値が1, 195IU/lと異常高値を示した. 電気泳動法によりアミラーゼのアイソザイム分析を行ったところ, 分画不明な異常パターンを呈した. そこで, Superose 12ゲル濾過HPLC, 免疫混合法, 免疫電気向流法で精査したところ, このアミラーゼは, Ig-Aλ型との結合によるマクロアミラーゼであり, これによるアミラーゼの高値であることが判明した.
    本症例は頻回の消化管出血があり, 繰り返し精査を行ったが, その原因を確定することはできなかった. 試験開腹の際に行われたリンパ節生検の組織診により非ホジキン型の悪性リンパ腫の合併が判明した. しかし術後DICを併発し, 不幸な転機をとった.
    血液透析患者では血清アミラーゼ値は正常人よりもその平均が高値である. また膵炎などにより, さらに高値になることは経験されるが, 透析患者のマクロアミラーゼ血症合併の報告は極めて少なく, またSjögren症候群との合併の報告も見当たらず, 稀な症例と考えられる.
    なおこの症例におけるマクロアミラーゼ血症の発生に関して, 文献的に考察を加えた.
feedback
Top