患者は66歳の女性で, Sjögren症候群による腎不全に対して, 1992年1月から血液透析中であった. 1994年7月, 両側耳下腺部の腫脹, 頸部リンパ節腫脹, 発熱, 羞明などの症状とともに, 血清アミラーゼ値が1, 195IU/
lと異常高値を示した. 電気泳動法によりアミラーゼのアイソザイム分析を行ったところ, 分画不明な異常パターンを呈した. そこで, Superose 12ゲル濾過HPLC, 免疫混合法, 免疫電気向流法で精査したところ, このアミラーゼは, Ig-Aλ型との結合によるマクロアミラーゼであり, これによるアミラーゼの高値であることが判明した.
本症例は頻回の消化管出血があり, 繰り返し精査を行ったが, その原因を確定することはできなかった. 試験開腹の際に行われたリンパ節生検の組織診により非ホジキン型の悪性リンパ腫の合併が判明した. しかし術後DICを併発し, 不幸な転機をとった.
血液透析患者では血清アミラーゼ値は正常人よりもその平均が高値である. また膵炎などにより, さらに高値になることは経験されるが, 透析患者のマクロアミラーゼ血症合併の報告は極めて少なく, またSjögren症候群との合併の報告も見当たらず, 稀な症例と考えられる.
なおこの症例におけるマクロアミラーゼ血症の発生に関して, 文献的に考察を加えた.
抄録全体を表示