接続チューブ保護キャップに含まれるポピドンヨードにより, 甲状腺機能低下症に陥った夜間腹膜透析 (NPD) 患者を報告する. 症例は32歳, 女性. 1994年6月, 連続的携行式腹膜透析 (CAPD) からNPDに移行したところ, 甲状腺の腫大が認められるようになった. 1995年7月の検査成績では, 血清中の甲状腺刺激ホルモン (TSH) は121μU/m
lにまで上昇しており, 遊離T
3(FT
3) は2.6pg/m
l, 遊離T
4(FT
4) は0.4ng/d
lであった. 甲状腺
123I摂取率3時間値は上昇しており, 血中無機ヨード (II) は15.0μg/d
lと高値であった. なお, 抗サイログロブリン抗体, 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体, 抗TSHレセプター抗体などの甲状腺自己抗体はすべて陰性であった. また, 組織学的にも, 濾胞上皮間の細胞浸潤あるいは線維化など慢性甲状腺炎を示唆する所見は認められなかった. 以上より, ヨード過剰に起因した可逆性甲状腺機能低下症と診断したが, ヨード制限食による血清IIおよびTSHの低下はみられなかった. NPDでは最初の注液時に排液がないため, 接続チューブ保護キャップからしみ出したポピドンヨードが腹腔内に流入する. そこで, このポピドンヨードの流入を減少させたところ, IIは4.6μg/d
l, TSHは28.0μU/m
lにまで低下した. 以上より, NPD患者では接続チューブ保護キャップのポピドンヨードに起因した甲状腺機能低下症の合併に注意が必要と思われた.
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