近年, ANPとその細胞内セカンドメッセンジャーであるcGMPの血中濃度は維持透析患者の体液貯留の指標となることが示唆されている. 我々はこれまで, 超音波断層法により描出した下大静脈安静呼気時最大径 (IVCe) が循環血液量とよく相関することを報告してきた. 我々はまた, IVCeが透析終了後のplasma refillingのよい指標となることも報告している. そこで今回, 維持透析患者におけるplasma refillingの評価に血中ANPとcGMP濃度が有用であるか否かを検討した.
維持透析患者10例 (男6, 女4, 年齢34-77歳) を対象とした. 透析前後および透析終了時より, 0.5, 1, 2, 6時間後まで経時的にIVCeを測定し, 同時に血中ANP濃度, cGMP濃度, ヘマトクリット (Ht), 総蛋白 (TP), アルブミン (Alb) を測定した.
平均2.0kgの除水により, 透析終了時には血中ANP濃度, cGMP濃度, IVCeは透析前値と比し平均44, 47, 29%の減少を示した. 一方, Ht, TP, Albは透析終了時は透析前値と比し有意に上昇した. 血中ANPレベルは透析後緩徐な上昇を認めたが, 透析終了6時間後も透析前値と比し有意な低値を示した. 一方, IVCeは透析終了1時間後で速やかに回復した. 血中cGMPレベルはIVCeと同様め経過を示した. また, 透析前後および透析終了後の経過中において血中ANP, cGMP濃度の変化率は, HtおよびIVCeの変化率と各々有意な相関が認められた.
維持透析患者において, 血中ANP, cGMP濃度はIVCe測定とともにplasma refillingの評価に有用であることが示唆された.
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