日本透析医学会雑誌
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29 巻, 4 号
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  • 第40回日本透析医学会シンポジウムより
    佐藤 千史, 清澤 研道, 茶山 一彰, 袖山 健, 榎本 信幸, 藤山 重俊, 林 春幸, 内原 正勝, 安村 忠樹, 為田 靱彦
    1996 年 29 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 石山 剛, 三浦 義昭, 岡田 雅美, 村上 修一, 小屋 俊之
    1996 年 29 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全に難治性腹水を伴った8例を対象として, 腹水透析 (EAD) および腹水ECUM (EUA) の治療効果を検討した. 慢性腎不全の原因疾患は, 慢性腎炎5例, 糖尿病性腎症3例で, 腹水発症時期は透析導入前6例, 維持血液透析 (HD) 中2例であった. 腹水の原因は, 肝硬変6例, 不明2例で, 腹水性状は, HD中の肝硬変由来の1例が浸出液で他は漏出液であった. EADは, 5例に1.0-6.8か月間で計55回施行した. EAD 1回の平均施行時間は2.8±0.4時間で, 腹水2.7±0.6lの除去, 体重2.7±0.7kg, 腹囲5.3±2.5cmの減少が得られた. 施行後血清クレアチニン (Cr) 値の軽度低下 (p<0.05), 腹水の総蛋白 (TP), アルブミン (Alb), Ca値の上昇 (p<0.005), UN, Cr, K, P値の低下 (p<0.005) がみられた. EUAは, 5例に0.3-10か月間で計61回施行した. EUA 1回の平均施行時間は3.0±0.2時間で, 腹水3.0±0.2lの除去, 体重3.0±0.4kg, 腹囲6.7±3.0cmの減少が得られた. 施行後腹水のTP, Alb値の増加がみられた (p<0.005). 腹水再発は5例に認められたが, このうち3例で0.7-5か月間は再貯留がなく有効であった. 腹水再発のなかった2例で, 1例はEADが他はCAPDに変更して有効であった. 慢性腎不全の管理は, EADのみでは不十分で, 5例にHD (1回-3回/週) とEAD (1回-2回/週) の併用療法を施行した. 3例がHDで透析困難症があったが, EADおよびEUAでは, 全例が血圧低下や不整脈などの出現はなかった. 合併症として, 腹膜炎がEAD, EUA施行後0.5-4か月で6例に発症したが, 直ちにPD用カテーテルを抜去し, 抗生物質の投与で5例は治癒した. このことから, 慢性腎不全に伴った難治性腹水の治療として, 腹膜炎の発症に注意すれば, EAD, EUAは安全に繰り返し長期に施行でき, 有効な治療法と考えられた.
  • 山口 洋司
    1996 年 29 巻 4 号 p. 277-283
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎性貧血患者に対するrecombinant human erythropoietin (rHuEPO) 投与では貧血の改善なしに血圧上昇をきたす症例が認められる. 貧血を伴った20名の血液透析患者で血漿エンドセリン, レニン活性, アンギオテンシンI, アンギオテンシンIIを測定し, rHuEPOのこれら血圧に影響すると思われる因子に対する影響を明らかにしようと試みた. rHuEPO 1,500単位または3,000単位を週3回, 3か月間静脈投与した. angiotensin converting enzyme (ACE) 阻害剤の投与を受けていない患者を対象とした. 血液採取はrHuEPO投与開始前, 開始3か月後の早朝安静時に行った. 血漿レニン活性, アンギオテンシンI, アンギオテンシンII, およびエンドセリン濃度は, radioimmunoassay (RIA) にて測定した. 腎性貧血に対するrHuEPO治療により, エンドセリンは有意に上昇し, アンギオテンシンIIは有意に減少した. 一方血漿レニン活性, アンギオテンシンIは有意な変化を認めなかった. これらのことより, rHuEPO投与が透析患者のエンドセリンを上昇させ, 血漿レニン・アンギオテンシン系へ影響を及ぼしている可能性が示唆され, 血圧を上昇させる一つの要因として関わりを持っている可能性を示唆している. しかし, これらの因子のレベルは血圧が上昇した群 (10例) と血圧が上昇しなかった群 (10例) とでは有意差を認めなかったので, エンドセりンの上昇と生体の感受性の両者が関係するか, または, エンドセリン以外にその原因を求める必要があるかも知れない.
  • 飛田 美穂, 相場 勇志, 鈴木 信之, 平田 晴久, 大橋 良民, 阿部 貴弥, 佐藤 威, 古賀 泰裕
    1996 年 29 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎不全患者においては, 透析治療では有効に除去されないフェノール, パラクレゾールおよびインジカンが著明に蓄積しているが, これらの尿毒素は腸内腐敗産物由来である.
    今回, 腸内フローラの検索と糞便中の腐敗産物の測定を行ったところ, 好気性菌に富んだ透析患者の乱れた腸内フローラが, 乳酸菌製剤ロロン®Sを投与することにより改善するとともに, この腸内フローラの改善に伴いフェノール, パラクレゾール, インドールおよびスカトールといった腐敗産物の産生が抑制されることが判明した. このことは, 延いては尿毒素の蓄積を抑制することにもつながる.
    本研究では, “probiotics” の概念に立脚して乳酸菌製剤ロロン®Sの投与を行ったが, 今後の腎不全のケアの一つの手段として非常に有望と思われる.
  • 岩谷 昌代, 田中 礼子, 七沢 啓子, 能島 淑子, 根塚 とよ子, 古湊 一司, 竹田 慎一, 高桜 英輔
    1996 年 29 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) は, 院内感染の最も重要な原因菌の1つとなってきている. 今回, 私たちの腎センター内におけるMRSAの汚染状況を調査し, その対策について検討した. 透析患者109例中10例 (9.2%) の鼻前庭部よりMRSAが2回連続検出されたが, いずれも感染症を合併しておらず, 保菌者であった. 保菌者と非保菌者との間には, 性, 年齢, 透析歴および基礎疾患に関し差はみられなかったが, 保菌者では過去1年以内に入院歴を有する者, 長期間にわたって抗生物質を服用していた者, および日常生活上介助が必要な者が有意に多かった. また, 医療従事者20例の鼻腔培養は陰性であったが, 保菌者が使用したリネン, 床, ナースシューズおよび白衣からMRSAが検出された. そこで, 感染対策マニュアルを作成し, 保菌者の除菌および環境浄化に努めた. ポピドンヨードの使用により10例中6例 (60%) の保菌者ではMRSAが陰性となった. また, センター内から検出されたMRSAはすべて陰性となり, 新たな保菌者の出現はみられなかった. 以上より, MRSAによる院内感染を防止するためには, 入院患者に加え, 外来患者, 特に, MRSAを保菌する可能性が高い透析患者における対策が必要と考えられた.
  • 武田 敏也, 今田 聰雄, 堀内 篤, 木村 雅友, 前倉 俊治, 橋本 重夫, 秋山 隆弘, 栗田 孝
    1996 年 29 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の男性で1989年10月にネフローゼ症候群と診断されて治療を受けていた. その後腎機能の低下がみられ, 1992年7月から末期腎不全のために血液透析療法が開始された. 1994年10月に母親を提供者として生体腎移植を希望し当院へ転院してきた. 慢性腎不全の基礎疾患を知る目的で諸検査を施行した. その結果, 全身性エリテマトーデス (SLE) 由来の腎不全であると診断した. また同時にSLEの活動性が認められ, ステロイドパルス療法を含む副腎皮質ステロイド療法と免疫吸着療法を施行した. 血清補体価, 抗DNA抗体価はともに改善傾向がみられたが1994年12月外泊後に肺炎, 出血性脳梗塞を併発し17日後に死亡した. 剖検によって中大脳動脈のアスペルギルス塞栓による出血性脳梗塞を認めた. 一般的にSLE症例では脳血管障害の合併は少ないが, その中では閉塞性脳血管障害が約半数以上を占めている. 本症例のようにSLEに合併した中枢神経系アスペルギルス症の報告は特に少ないと思われたので, 文献的考察を加えて検討した.
  • 杉浦 清史, 内堀 之弘, 上田 邦彦, 鈴木 利昭, 太田 和夫
    1996 年 29 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性, 既往歴に肺結核による入院歴がある. 左上肢肘部に内シャントを作製したところシャント血流量が著しく増加した3年後に左上肢全体の腫脹, および前胸部の静脈の怒張が生じた. 左鎖骨下静脈およびその中枢静脈の狭窄の有無および, 外頸静脈へのバイパス作成による, 静脈系の減圧の可能性を確認するため, 静脈造影検査, および造影CT検査を行った.
    鎖骨下静脈には狭窄, 血栓の所見はなく, さらに鎖骨下静脈と内頸静脈との合流部より中枢の静脈は, 尾側に向かい大動脈弓の下方を通り右心房に還流し, 大動脈弓の下方を通る部位に狭窄が認められた.
    本症例は鎖骨下静脈にカテーテルなどの留置の既往がなく, 左腕頭静脈の走行異常による内シャント静脈高血圧と思われる.
  • 室 かおり, 山縣 邦弘, 富田 知栄
    1996 年 29 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症による末期腎不全で, 難治性の腹水を呈した症例を経験したので報告する. 症例は63歳の男性で, 糖尿病性腎症による慢性腎不全のために外来治療中であった. 食欲不振, 全身倦怠感, 浮腫が出現し, 徐々に進行, 同時に著明な腹水を呈するようになり, 利尿剤の経口投与でも改善みられないため入院となった. 腹水は蛋白濃度/血清総蛋白濃度比が0.42であり, 漏出性であった. すでに末期腎不全の状態であったため, 血液透析, extra corporeal ultrafiltration method (ECUM) などにて腹水のコントロールを試みたが, 血圧低下のため十分な除水はできなかった. 腹水濃縮再静注法も併用したが, 無効であった. このため, 腹膜透析用カテーテルを腹腔内に留置し, 自動腹膜灌流装置を用いたtidal peritoneal dialysis (TPD) を開始した. 施行12日目には最終貯留液量をゼロとして, 腹水をほぼコントロールし得た. TPD施行中は血圧低下なく, その後CAPDに移行し, 現在外来通院中である.
    透析時の血圧低下のために, 従来の治療法では腹水を治療し得なかった末期腎不全の症例を経験した. このような難治性腹水を呈する患者に対し, 自動腹膜灌流装置を用いたTPDは有効な治療法であると考えられる.
  • 三浦 靖彦, 中山 昌明, 浜口 欣一, 若林 良則, 中野 広文, 鈴木 理志, 土田 弘基, 川口 良人, 酒井 紀
    1996 年 29 巻 4 号 p. 315-319
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD施行中に大腸憩室の穿孔による糞便性腹膜炎を併発した3症例を経験した. 症例1は, 32歳, 男性で, CAPD開始後16か月で腹膜炎症状で入院した. 抗生剤治療に反応せず, 入院3日目に筋性防御の出現とともに, 排液中に食物残渣を認めたため, 腸管穿孔の診断で緊急開腹術を施行した. S状結腸の憩室穿孔を認めたため, S状結腸切除を行い, 術後は血液透析に変更し, 軽快退院した. 症例2は, 73歳, 男性で, 14年間の血液透析後, CAPDに変更し, 17か月目に全身衰弱で入院した. 入院61日目に腹膜炎を併発し, CAPD排液からE. coli, K. pneumoniaeが検出されたため腸管穿孔を疑ったが, 全身状態の不良および本人, 家族の希望にて手術は行わず, 保存的に治療したが, 腹膜炎発症7日目に死亡した. 病理解剖において, S状結腸に憩室穿孔を認めた. 症例3は, 67歳, 男性で, CAPD開始から8年4か月後に腹膜炎で入院, 排液培養からE. coli, Bacteroides fragilis, Candida albicansが検出された. 入院7日目に開腹術を行い, 下行結腸の憩室穿孔を認め, 左半結腸切除および人工肛門を造設した. 術後腹腔内膿瘍を形成し, 手術2か月後に死亡した.
    CAPD施行中に, 憩室穿孔による糞便性腹膜炎を合併することは非常に稀なことであるが, 診断に困難を極めると同時に, 診断の遅れは, 生命予後に重大な影響を与えるため, CAPD患者に難治性腹膜炎をみた際には考慮すべき病態と考えられた.
  • 高橋 真紀, 長宅 芳男, 槇野 博史, 熊谷 功, 市川 晴夫, 川端 研治, 寺岡 暉, 太田 善介
    1996 年 29 巻 4 号 p. 321-326
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全に悪性リンパ腫を合併し, 血液透析を施行しながら化学療法および放射線療法を施行し, 寛解した症例を経験したので報告する. 症例は67歳, 男性. 44歳時より高血圧, 63歳時より腎機能低下を指摘されていた. 1994年3月頃より腹痛が出現したため, 当科を受診した. 腹部に腫瘤を触知し, 画像検査で腹腔内の多数のリンパ節腫大を認めた. 開腹的リンパ節生検を施行した結果, 悪性リンパ腫 (diffuse large, immunoblastic B cell type) と診断した. 第1クール化学療法後より血液透析へ導入した. 化学療法によりリンパ節の縮小を認めたが, 計6クールの化学療法終了時点でリンパ節腫大の残存が疑われたため放射線療法を追加した. その後, リンパ腫の再発を認めず, 発症より1年7か月後の現在, 特に合併症を認めず, 維持血液透析を施行中である. 末期腎不全患者に発生した悪性リンパ腫の寛解例は稀であり, 貴重な症例と考えたため報告する.
  • 大西 智一郎, 西谷 真明, 神田 光則, 辻 雅士, 塩津 智之, 中村 章一郎
    1996 年 29 巻 4 号 p. 327-330
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は, 猪瀬型肝性脳症に対して外科的短絡路遮断術を行った透析患者を経験した. 症例は, 36歳女性. 1989年糖尿病性腎症にてCAPD導入となった. 1990年9月頃より意識障害を認めることが多くなり, 他院でC型肝炎による肝性脳症として加療され, またCAPD腹膜炎を頻回に繰り返すようになったため1992年1月より血液透析に変更となった. 1994年3月26日より再び意識障害が出現したため入院, 精査を行い血管造影で門脈-大循環短絡路を認め, 外科的短絡路遮断術を施行し術後意識状態の著明な改善を認めた. 最近猪瀬型肝性脳症に対して, 肝障害が軽度の場合には短絡路を外科的に遮断することによって脳症が改善し予後良好な例も報告されており, 若干の文献的考察を加えて報告する.
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