慢性腎不全に難治性腹水を伴った8例を対象として, 腹水透析 (EAD) および腹水ECUM (EUA) の治療効果を検討した. 慢性腎不全の原因疾患は, 慢性腎炎5例, 糖尿病性腎症3例で, 腹水発症時期は透析導入前6例, 維持血液透析 (HD) 中2例であった. 腹水の原因は, 肝硬変6例, 不明2例で, 腹水性状は, HD中の肝硬変由来の1例が浸出液で他は漏出液であった. EADは, 5例に1.0-6.8か月間で計55回施行した. EAD 1回の平均施行時間は2.8±0.4時間で, 腹水2.7±0.6
lの除去, 体重2.7±0.7kg, 腹囲5.3±2.5cmの減少が得られた. 施行後血清クレアチニン (Cr) 値の軽度低下 (p<0.05), 腹水の総蛋白 (TP), アルブミン (Alb), Ca値の上昇 (p<0.005), UN, Cr, K, P値の低下 (p<0.005) がみられた. EUAは, 5例に0.3-10か月間で計61回施行した. EUA 1回の平均施行時間は3.0±0.2時間で, 腹水3.0±0.2
lの除去, 体重3.0±0.4kg, 腹囲6.7±3.0cmの減少が得られた. 施行後腹水のTP, Alb値の増加がみられた (p<0.005). 腹水再発は5例に認められたが, このうち3例で0.7-5か月間は再貯留がなく有効であった. 腹水再発のなかった2例で, 1例はEADが他はCAPDに変更して有効であった. 慢性腎不全の管理は, EADのみでは不十分で, 5例にHD (1回-3回/週) とEAD (1回-2回/週) の併用療法を施行した. 3例がHDで透析困難症があったが, EADおよびEUAでは, 全例が血圧低下や不整脈などの出現はなかった. 合併症として, 腹膜炎がEAD, EUA施行後0.5-4か月で6例に発症したが, 直ちにPD用カテーテルを抜去し, 抗生物質の投与で5例は治癒した. このことから, 慢性腎不全に伴った難治性腹水の治療として, 腹膜炎の発症に注意すれば, EAD, EUAは安全に繰り返し長期に施行でき, 有効な治療法と考えられた.
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