症例は67歳の男性. 鼠径部腫瘤, 左下肢浮腫, 陰嚢腫脹を主訴に入院. 右臀部Bowen carcinomaの対側臀部および全身リンパ節転移と診断された. 入院時, 左腎は水腎症で, すでに機能廃絶に近い状態であり, 右腎は水腎症はなかったが, 静脈性腎盂造影でやや排泄遅延が認められ, クレアチニン・クリアランス44m
l/minと低下していた. その後, 全身のリンパ節腫脹が増大し, 腹腔内リンパ節による右尿管の圧迫のため, 右腎も水腎症の状態となり, 急性腎不全を発症した. このため, 腫瘍縮小効果を期待して, 血液透析併用下にcarboplatin (CBDCA) とetoposideの併用化学療法を行った. CBDCAは240mg/m
2, etoposideは50mg/m
2を点滴静注し, その後透析を行った. 遊離型プラチナのAUCは2.5mg/m
l×minとやや低値であったが, 治療後, 腫大リンパ節は縮小し, 右水腎症の改善により, 腎機能も回復した. 薬剤による重篤な副作用は認められなかった. 合計6コースの化学療法を行い, 完全寛解が得られた. 急性腎不全を合併した悪性腫瘍患者においても, 抗腫瘍薬の体内動態や透析性を考慮して, 透析療法を有効に併用することにより, 効果的に化学療法を行うことが可能であると考えられた.
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