日本透析医学会雑誌
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30 巻, 7 号
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  • 多施設共同二重盲検比較法による第3相試験
    越川 昭三, 秋澤 忠男, 飯田 喜俊, 丸茂 文昭, 川口 良人, 白井 大禄, 今田 聰雄, 山崎 親雄, 鈴木 正司, 椿原 美治, ...
    1997 年 30 巻 7 号 p. 941-959
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者の種々の合併症の中で, 透析後の起立性低血圧に伴う諸症状は透析患者の日常生活の重要な阻害因子であるが, 現在は的確な治療手段がない.
    L-threo-3,4-dihydroxyphenylserine (L-DOPS) は, 経口投与可能な天然型ノルエピネフリンの前駆物質で, 我々はこれまでに, 本剤が透析患者の透析直後の起立性低血圧と透析後から翌々日までの自覚症状の改善に高い有用性を有することを報告してきた. 今回, 先の用量設定試験で有効性の認められたL-DOPS 400mgとプラセボの二重盲検比較試験を実施した.
    対象は, 透析終了後の起立時に収縮期血圧 (2回の透析日における平均値) が15mmHg以上低下し, かつそれに付随する自覚症状を呈する維持透析患者107例で, そのうち, 有効性を86例, 安全性を104例で評価した. 各透析日の透析開始約30分前に薬剤を4週間投与し, 透析終了時の起立試験における血圧と透析終了から透析翌々日までの自覚症状を評価した. 透析後血圧と起立による平均血圧の低下はL-DOPS群で有意に抑制され, 「めまい・ふらつき・たちくらみ, 起立障害, 倦怠感・脱力感」の改善度がL-DOPS群で有意に高かった. 血圧と自覚症状とから判定した最終全般改善度は, L-DOPS群がプラセボ群に比して有意に優れ (中等度改善以上: 53.3% vs 14.6%), より重症と考えられる症例で特に効果が認められた. 副作用はL-DOPS群に3例, プラセボ群に6例みられたがいずれも重篤なものではなく, 臨床検査値の異常変動は両群ともに認められなかった. 以上の結果から, L-DOPSの透析患者の起立性低血圧とその付随症状に対する有用性が確認された.
  • 加藤 尚彦, 川口 良人, 重松 隆, 山本 裕康, 笠井 健司, 中村 宏二, 大井 景子, 酒井 聡一, 酒井 紀, 徳廣 寿子, 畠 ...
    1997 年 30 巻 7 号 p. 961-965
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の血漿中に存在する骨型アルカリフォスファターゼ (bone ALP) を特異的なモノクローナル抗体を用いたELISA法にて測定し, 総ALP, およびセルロースアセテート膜電気泳動法で得られた3型のALP (ALP3) と比較した. 骨代謝回転を亢進させる副甲状腺ホルモン (PTH) との関係では, intact PTHとbone ALPとの間に他のALP測定法よりも有意に高い相関係数が得られた (intact PTH vs ALP: r=0.497; intact PTH vs ALP3: r=0.427; intact PTH vs bone ALP: r=0.667). また, 骨形成のマーカーであるオステオカルシン (BGP) では, 2種の測定法とも3種のALPのうち骨型ALPとの間に有意に高い相関係数が得られた (BGP vs ALP: r=0.548; BGP vs ALP3: r=0.505; BGP vs bone ALP: r=0.750) (intact BGP vs ALP: r=0.421; intact BGP vs ALP3: r=0.414; intact BGP vs bone ALP: r=0.680). これらの結果より, 慢性腎不全患者においてELISA法による骨型ALPは3種のALP測定のなかで最も有用であると考えられた.
    さらに, 副甲状腺機能が比較的低い時にbone ALPが骨形成マーカーとして有用であるかを検討するため, 血液透析患者においてPTHが比較的低値と考えられるintact PTHが200 pg/ml未満の症例において, 3種のALPとintact PTHとの関係を検討した. 血液透析患者60例中32例がintact PTHが200 pg/ml未満であり, この32症例においてintact PTHと総ALPおよびALP3では有意な相関関係は得られなかったが, intact PTHとbone ALPとは相関係数0.43で危険率1%以下の有意な正の相関を認めた. このことから, bone ALPは低回転の骨の病態をも反映し得る骨代謝マーカーとなる可能性が示唆された.
  • 廣瀬 悟, 金 成洙, 松田 昭彦, 板倉 行宏, 御手洗 哲也, 磯田 和雄
    1997 年 30 巻 7 号 p. 967-973
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    高homocysteine血症は古くから動脈硬化の危険因子として注目されているが, 透析患者や保存期慢性腎不全患者においても高homocysteine血症の存在が指摘されている. そこで, CAPD患者16名, HD患者14名, および健常者15名を対象にmethionine負荷試験を施行し, 透析患者における高homocysteine血症の成因について検討した. 絶食12時間後にmethionine 0.05g/kgを経口投与し, 血漿総homocysteine濃度はfluoro-HPLC法で, その他の含硫アミノ酸濃度はninhydrin法で測定した. CAPD患者の血漿総homocysteine濃度は上昇, 血漿methionine濃度は低下, 血漿cystine濃度は上昇しており, HD患者にも同様の傾向が認められた. methionine負荷試験において, 透析患者ではmethionineが血中に停滞し, homocysteine, cystathionine, およびcystineが持続的に上昇することが観察され, 透析患者における共通した特有の含硫アミノ酸代謝異常の存在が示された. さらに, 血漿methionine濃度の低下と血漿cystine濃度の上昇を総合すると, 透析患者はhomocysteineからmethionineへの再メチル化反応が障害されていると推察され, 高homocysteine血症の成因になっている可能性が考えられた.
  • quantitative computed tomography (QCT) 法による海綿骨と皮質骨の分離測定
    佐藤 元昭, 寺山 百合子, 高橋 信好, 二川原 和男, 鈴木 唯司
    1997 年 30 巻 7 号 p. 975-983
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の長期生存例の増加に伴い, 患者のQOLに関わる合併症が注目されており, その一つが腎性骨異栄養症である. そこで, quantitative computed tomography (QCT) 法にて血液透析 (HD) 患者の腰椎骨密度を測定し, さらに数種の血中骨代謝パラメーターを測定し, その意義および関連性につき検討した.
    対象は, 23-60歳の男性HD患者74例 (HD群) で, 19-69歳の健常男性31例を対照群とした. 骨密度は, QCT法にて第2-第4腰椎 (L2-L4) の海綿骨および皮質骨に分けて測定した. 血中骨代謝パラメーターは, 骨密度測定と同時期に, カルシウム (Ca), 無機リン (Pi), インタクト副甲状腺ホルモン (i-PTH), オステオカルシン (BGP), 骨型アルカリフォスファターゼ (B-ALP), および酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ (TRACP) を測定した.
    対照群およびHD群の海綿骨骨密度は加齢とともに低下したが, 皮質骨骨密度は年齢とは相関せず, HD歴と負の相関を示した. また, 対照群の海綿骨骨密度と皮質骨骨密度間には相関性を認めなかったが, HD群では正の相関を示した. HD群のPi, i-PTHおよびBGPは対照群に比して著明高値を示したが, B-ALPおよびTRACPには差を認めなかった. HD群の骨代謝パラメーター間の相関性は, 相互に良好な正の相関を認めた. 海綿骨骨密度と各パラメーターとは関連性を認めなかったが, 皮質骨骨密度は負の相関を示した. 以上より, HD患者の骨のリモデリングは比較的保たれていること, 骨代謝回転にはPTHが強く影響していることが示唆された. ただし, 加齢, HD期間, PTHおよびD3に対する反応性は海綿骨と皮質骨とで相違が認められ, 特に皮質骨骨密度と骨代謝パラメーターとが負の相関を示したことから, QCT法による海綿骨と皮質骨骨密度の分離測定は骨の評価に有用であると思われた.
  • 野口 健一, 柴田 昌典, 内山 秀男, 垣見 和宏, 宇野 賀津子, 谷口 信吉, 宇佐美 一政
    1997 年 30 巻 7 号 p. 985-989
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    基底膜の代表的構成成分の指標である血中lamininP1, type IV collagen-7Sとprocollagen-III-peptideの血清レベルを, 顕性腎症非合併糖尿病, 保存期糖尿病性腎不全, 維持血液透析中の糖尿病性腎不全について検討した. 3種の指標は全て, 正常対照, 顕性腎症非合併糖尿病, 保存期腎不全, 維持血液透析患者の順に, すなわち腎症の進行と相関して高かった. 透析患者では, 正常対照との間のみならず保存期腎不全と比しても有意に高かった (p<0.001). 糖尿病性腎症の重症度を判定する上で, BUN, クレアチニンとは異なり, 基底膜の変化という観点からの情報を得られる点で, これらの指標は臨床上有用であろうと考えた.
  • 細川 正浩, 佐藤 栄輝, 浅野 和志, 上野 信一, 篠原 伸介, 松井 則明
    1997 年 30 巻 7 号 p. 991-994
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    抗凝固薬および血小板凝集抑制薬を内服していない慢性維持透析患者を対象とし, 各種透析器におけるヘパリンの最低必要量について比較検討した結果, PSが最も多く, 以下KF, PAN, B2, TF, PC, SD, FBの順であった. また最低必要量の多いKF, PSについて血液ポート角度を従来の18度から7度に変更したものを比較したところポート部での血液の乱流や滞留が改善され最低必要量は有意に減量できた.
    ヘパリンの最低必要量は使用する透析器により明らかに異なり, 血液ポート部形状にも大きく左右される. よって膜素材だけでなくハウジングデザインの選定も透析器の抗血栓性において重要である.
  • 瀬川 賀世子, 武藤 可信, 加藤 浩明, 穴井 博史, 筬島 明彦, 田中 弘, 中島 康秀
    1997 年 30 巻 7 号 p. 995-998
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性. 平成元年, 慢性糸球体腎炎からの末期腎不全のため血液透析導入. 透析導入1年後から, 末梢血の好酸球増多が出現. 穿刺部位の皮膚に〓痒感と硬結を認めた. 当初は皮膚消毒に使用したイソジン®やヒビテン®のアレルギーが疑われていた. その後, シャント穿刺部の腫脹あり, 穿刺部を変更しても次第に同様に腫脹するため, 穿刺が困難であった. 好酸球増多に加えて, IgE高値を呈したことから, ethylene oxide (EtO) ガス特異的IgEを測定したところ陽性を示した. 以上からEtOアレルギーと考え, オートクレープ滅菌の穿刺針に変更した. 変更後, 好酸球数は正常化し, 穿刺部の〓痒感・皮膚の腫脹も改善した. 血液回路やダイアライザーは大部分がオートクレープやγ線滅菌となっており, 血液透析患者のEtOアレルギーは減少していると考えられるが, 穿刺針は依然EtOガス滅菌針を使用する機会が多いので, 注意が必要と思われる.
  • 吉光 隆博, 平方 秀樹, 金井 英俊, 久保 充明, 石田 伊都子, 安藤 高志, 吉田 鉄彦, 辻 博, 黒岩 俊郎, 藤見 惺, 奥田 ...
    1997 年 30 巻 7 号 p. 999-1005
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    上腸間膜静脈, 卵巣静脈を介しての門脈-大循環短絡により高アンモニア血症を生じた慢性血液透析患者を経験した. 症例は43歳, 女性. 主訴は意識障害, せん妄. 1983年に末期腎不全で血液透析に導入. 1993年に原因不明の汎発性腹膜炎のため人工肛門の造設および腹壁ヘルニア根治術を行った. 1995年1月頃より傾眠傾向, 家族の名前を忘れる, 理由もなく興奮するなどの症状が出現し増悪するため3月14日当科に入院した. 神経学的検査では, 意識レベルはJapan Coma Scaleで1点であり, 羽ばたき振戦を認めた. 血液生化学検査ではGOT, GPT, 総ビリルビン値は正常であったが, 血中アンモニア値は424μg/dlと上昇していた. 肝炎ウイルスマーカーは陰性で, 肝生検組織にも肝障害の所見は認められなかった. 脳波では両側性の徐波を認めた. 頭部MRIでは, T1強調画像で, 淡蒼球に対称性に高信号域を認めた. 上腸間膜動脈造影で上腸間膜静脈より下大静脈への短絡路を認め, 同部へ塞栓術を施行した. 塞栓術後, 血中アンモニアは正常化し, 意識障害も改善した.
  • 牛越 博昭, 多川 斉, 杉本 徳一郎, 齋藤 肇, 長田 太助, 西尾 恭介, 石原 桂子
    1997 年 30 巻 7 号 p. 1007-1011
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例: 68歳, 男性. 2年前, 感冒様症状を初発として浮腫と急速な腎機能低下が出現した. 開放腎生検にて, ほぼすべての糸球体に半月体形成を認め, 急速進行性糸球体腎炎 (RPGN) と診断した. P-ANCAは, 122U/mlと高値であった. ステロイドを投与したが腎機能は改善せず, 維持透析に移行した. 2年後, 両手の朝のこわばり, 手指関節痛・腫脹, 発熱 (38℃以上) が出現し, CRP 11.7mg/dl, RF 283U/ml, P-ANCA 1660U/mlと高値を示した. 慢性関節リウマチ (RA) と診断し, ステロイド投与により症状は劇的に改善した. その後再燃を認めていない. ANCA関連血管炎がRPGNおよびRAの両者の発症に関与した可能性が示唆された.
  • 1996年における改訂
    野本 保夫, 川口 良人, 酒井 信治, 平野 宏, 久保 仁, 大平 整爾, 本間 寿美子, 山縣 邦弘, 三浦 靖彦, 木村 靖夫, 栗 ...
    1997 年 30 巻 7 号 p. 1013-1022
    発行日: 1997/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) はCAPD療法における最も重篤な合併症の1つである. 厚生省長期慢性疾患総合研究事業慢性腎不全研究班における 『CAPD療法の評価と適応に関する研究班』 ではこの病態に焦点をあて, その診断・治療に関する方向性を明らかにすることを目的に検討をかさねてきている. 今回, 昨年度策定した 「硬化性被嚢性腹膜炎 (sclerosing encapsulating peritonitis, SEP) 診断・治療指針 (案)」 を1年間の経験を踏まえ検討し, その問題点を明らかにし改訂案を作成した. SEPの定義についても 「瀰漫性に肥厚した腹膜の広範な癒着により, 持続的, 間欠的あるいは反復性にイレウス症状を呈する症候群である. これはあくまでも臨床的診断である」 とより実際に即したものに改訂した. 形態学的には腹膜肥厚および, もしくは硬化性腹膜炎 (peritoneal thickening and/or sclerosing peritonitis) を認める. 臨床症状としてイレウス症状 (嘔気, 嘔吐, 腹痛) が必発である. その他参考となる症状として, 低栄養, るいそう, 下痢, 便秘, 微熱, 血性排液, 限局もしくは瀰漫性の腹水貯留, 腸管ぜん動音低下がみられる. また, 腹部に塊状物を触知する. 画像診断も補助診断として有用である. 治療の基本方針はCAPDは中止し, 腸管の安静を保つことにある. 栄養補給は経静脈的高カロリー輸液 (IVH) を主体に行う. 一部にステロイド・パルス療法がSEP発症直後の症例に著効を示した症例も経験された. しかしながら本病態の多様性, 治療に対する反応性の相違から画一的に治療方針の決定には至らなかった. 従ってあくまで基本的治療方針の提示となった. また, SEP予防のためのCAPD中止基準も併せて提示した. 今後さらに症例の集積によりさらなる修正を重ね, より有用性の高い指針の策定を期待する.
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