日本透析医学会雑誌
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31 巻, 1 号
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  • 日本透析医学会統計調査委員会
    1998 年 31 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1996年末の日本透析医学会の統計調査は2,968施設を対象に実施され, 2,961施設 (99.76%) から回答が得られた. 1996年末のわが国の慢性透析患者数は167,192人であり, 昨年末に比べて12,779人 (8.3%) の増加であった. 1995年末から1996年末までの1年間の粗死亡率は9.4%であり, 昨年度よりも若干改善した. 透析導入症例の平均年齢は61.51±14.16歳 (平均±標準偏差) と一層の高齢化が認められた. また, 透析導入症例における原疾患の割合は慢性糸球体腎炎が38.9%と昨年よりもさらに減少し, 糖尿病性腎症は33.1%とさらに増加した.
    1996年度は新たに手根管開放術の既往, 副甲状腺ホルモン (インタクトPTH), 透析前血液pH, 透析前血液HCO3-, ヘモグロビンA1c等について調査された. 血液透析患者の5.0%に手根管開放術の既往があり, 透析歴が長いほど手根管開放術の既往のある患者の比率は大きくなった. 血液透析患者のインタクトPTH, pH, HCO3-の平均 (±標準偏差) はそれぞれ296.5 (±796.5) pg/ml, 7.34 (±0.15), 20.09 (±3.43) mEq/lであり, 糖尿病の血液透析患者のヘモグロビンA1cの平均は6.80 (±1.64)%であった. 生命予後解析では, 50%以上の透析前心胸比, そして2.0m2未満の膜面積のダイアライザー使用群で死亡のリスクが高いことが示された.
  • 第42回日本透析医学会カレントコンセプトより
    横山 和子
    1998 年 31 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 成瀬 友彦, 渡邊 有三, 伊藤 晃, 山崎 親雄, 稲熊 大城, 福澤 良彦
    1998 年 31 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に発生する破壊性脊椎関節症 (DSA) の危険因子を明らかにする目的で, 我々は314名の患者において断面的調査を行った. DSAは40例 (12.7%) の患者に認められ, 頸椎病変が最も多く第4-6頸椎の病変で全体の80%を占めた. DSAを有する患者群と有さない患者群との比較では, DSAを有する患者群の方が高年齢で, 透析期間も有意に長かった (61.2±1.5vs55.6±0.7歳, P=0.005, 119±10vs91±4か月, P=0.007). しかし, 透析導入後6年以内の短期例でもDSAを9例に認めた. DSA発症に関与すると推測される諸因子との単因子相関では, 骨嚢胞の存在と手根管症候群の合併例でDSAの発症頻度が有意に高かった (それぞれX2=35.2, P<0.0001, X2=12.4, P=0.0004). 一方, 二次性副甲状腺機能亢進症や副甲状腺機能低下症, 骨粗鬆症は有意な寄与因子ではなかった. 以上より, 長期透析患者, 高齢者, そして透析アミロイドーシスの合併がある患者ほどDSAの頻度が高まることが単因子相関で確認された. 一方, 多変量解析では骨嚢胞所見の存在と現在年齢のみが有意と採用され, 手根管症候群や透析期間は有意な危険因子ではなかった. この結果はDSAが短期透析患者でも起こりうることを反映しているものと思われる. 短期透析患者でDSAを合併する者の平均年齢は64.6±3.9歳と高齢である. DSAは決して長期透析患者のみの合併症ではなく, 高齢透析患者が増加する一方の現状を鑑みれば, 一人一人の患者に対する詳細なX線学的な検査が重大な合併症予防の見地から重要と考えられる.
  • 佐々木 修, 原田 孝司, 宮崎 正信, 宮原 嘉之, 大園 恵幸, 錦戸 雅春, 松屋 福蔵, 齊藤 泰, 高木 正剛, 釘宮 敏定, 田 ...
    1998 年 31 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年, 透析患者の増加に伴い, 動脈硬化性疾患の合併は大きな問題となっている. 腹部大動脈瘤 (abdominal aortic aneurysm, AAA) や閉塞性動脈硬化症 (arteriosclerosis obliterans, ASO) は, その治療として外科手術を要することがあり, 透析患者の生命予後, quality of lifeの観点からも重要な疾患である. 今回我々は, 当院における透析患者のAAA4例およびASO3例の血行再建術症例の臨床的検討を行った.
    AAAの症例は年齢45-61歳で, 全例高血圧を伴い, 透析導入後6か月-6年であった. 2症例が腹痛ないし背部痛を訴えたが, 2症例は腹部腫瘤触知が発見の契機であった. 4例ともinfrarenal typeで, 3例にY graft, 1例にstraight graft置換を施行し, 全例とも予後は良好である.
    3例のASOは年齢51-67歳で, 2例で高血圧を伴い, 発症は透析導入後5年4か月-19年3か月とAAAに比し長期間の症例が多かった. いずれの症例も, 下肢痛・間歇性跛行・足趾壊死などの症状, 所見を認めた. 2例は左側のiliac~popliteal arteryの閉塞で, 自己大伏在静脈によるfemoro-popliteal bypass術を施行, 他の1例は右側のcommon~external iliac arteryの閉塞で, femoro-femoral cross over bypass術を2回施行した. 術後1例は予後良好であるが, 2例はASO以外の死因で死亡した.
    近年, 手術手技の向上および周術期の透析管理の進歩により, 透析患者に対し安全に手術が施行し得るようになってきたが, ASOの症例は, 必ずしも予後が良好でない場合もあり, 治療法選択, 手術時期に対するさらなる検討が必要と思われた.
  • 竜崎 崇和, 松下 雅博, 半田 みち子, 古川 智洋, 猿田 享男
    1998 年 31 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    カルシウム拮抗薬ベシル酸アムロジピンの血液透析患者における有用性と血液透析による透析性を検討した. 対象は維持血液透析施行中の高血圧を合併した慢性腎不全患者で, 観察期透析前血圧が収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧95mmHg以上の外来患者19例. 2~4週間の観察期の後, アムロジピンを2.5~7.5mg/日の量にて投与開始. 服薬は夕食後の1日1回投与とし, 12週間の投薬期間中透析前後で血圧を測定し比較した. その間, 他の降圧薬を服用している患者では降圧薬の変更を禁止し, その後も除去率やクリアランスの測定を施行した例では薬剤の変更は行わなかった.
    アムロジピンの血清濃度の測定を第1週および第2週目に透析前に施行, 4週以上投与された安定期-1と, 12週以上投与された安定期-2にクリアランステストを施行し, 除去率も計算した.
    アムロジピン5mg/日服用の15例では, 観察期の透析前収縮期圧, 拡張期圧は, 199±4/95±3mmHgであった. アムロジピン服用開始1週後より有意に血圧は低下し, 12週後には170±5/83±3に低下した. また, 心拍数は観察期には81±2拍/分であったが, 服用開始1週間後に有意に減少し75±2となった. 服用開始2週目以降は観察期と比べ有意な変化は認められなかった. また, 透析後の血圧および心拍数の変動では服用開始1週以降に収縮期血圧で有意な低下を認めたが, 拡張期血圧は第4週と8週に有意な低下を認めただけであった. 透析後の心拍数については, 有意な変化は認められなかった.
    透析前アムロジピン血清濃度は5mg/日服用者で, 第1, 2, 4週以降, 12週以降でそれぞれ, 6.8±0.8ng/ml, 7.1±0.7, 8.1±1.0, 8.6±1.2であったが有意な差は認められなかった.
    透析後のアムロジピン血清濃度は透析前の値と比較しても, また, 透析が行われなかった場合の予測値と比較しても有意に低下していた. 透析による除去率は14%から18%であったが, 透析開始1時間という一時点でのクリアランスでは負の値を示した.
    アムロジピン投与にて血液透析患者の透析前血圧は投与1週間後より12週間まで有意に低下した. また, 少なくとも投与12週間までの間では, 5mg/日の投与量では有意な蓄積傾向はなく, 血液透析による除去率は14~18%であった.
    結論: ベシル酸アムロジピンは透析患者においても通常投与量で長期投与にても蓄積なく, 安全に降圧し得ると思われた.
  • 渡邊 紳一郎, 白井 純宏, 副島 一晃, 田島 暁, 副島 秀久
    1998 年 31 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1991~97年の間に四肢切断術を施行した透析患者12例について, 原疾患, 切断の部位および回数, 心合併症の有無および予後等を検討した.
    患者は男性7例, 女性5例, 平均年齢は71歳で男女差を認めなかった. 切断の原疾患は閉塞性動脈硬化症 (ASO) が疑われるもの9例, 糖尿病 (DM) が疑われるもの10例で, 両疾患の合併を7例に認めた. 切断までの透析歴は平均6年で, 切断部位は大腿4例, 膝関節部1例, 下腿8例, 中足骨2例, 足趾5例, 手指2例であった.
    心合併症として心臓超音波検査で7例に壁の運動低下および肥大を認め, この7例全例で心臓カテーテル検査で冠動脈疾患を認めた.
    予後は生存4例, 死亡8例で, Kaplan-Meier法で全体の1, 2年生存率が54%, 40%であった. このうち冠動脈疾患のある例では1, 2年生存率が62%, 31%, 無い例では1年生存率が75%, 2, 3年生存率が50%と冠動脈疾患を有する例で予後不良の傾向を認めた. 切断部位別では足趾のみの切断例では最長18か月の観察期間で死亡例が無いのに対して, 中足骨以上の切断例では1, 2年生存率が42%, 28%と著明な差を認めた.
    血液検査では, 壊疽を認めない当院の外来透析患者60名を対照として比較すると, 切断例で尿素窒素, 血清クレアチニン, 血清アルブミンが有意に低く, CRPが有意に高かった.
  • 川端 雅彦, 春日 修二, 小川 哲也, 陶山 紳一郎, 森山 勝利, 高畠 利一
    1998 年 31 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者9例を対象とし, 血液透析 (HD) と血液濾過透析 (HDF) 療法中の循環血液量 (BV) の経時的変化をクリットラインモニターにより測定して, 両治療における特徴を比較検討した. 総除水量およびdry weightに対する除水率は両治療で同一であったが, 治療終了時のBVの減少率はHDFで大であった. 経時的な観察では, HDFで治療前半, HDで治療後半にBVの著しい減少がみられる傾向があった (0.05<p<0.10). 血液生化学検査では, 治療中間点において, HDFで総蛋白濃度とヘマトクリットがHDに比し高値, 血清浸透圧とNa濃度は低値を示した (p<0.05). 血清尿素窒素, クレアチニン, ヒト心房性Na利尿ペプチド濃度は, 両治療で差はみられなかった. これらの成績は, HDFでは治療の前半においてBVの急速な減少と血漿の濃縮がみられることを示し, この時期の血管外から内への体液の移動が相対的に小さいことが原因であると推測される. 血漿の濃縮による蛋白濃度の上昇は, 膠質浸透圧を高め, plasma refillingを高める方向に作用して, 治療後半の循環動態の維持に有利に働く可能性が考えられる. 一方, HDでは, 治療前半ではBVは維持されるが, 総体液量が絶対的に減少する治療後半に急速なBVの減少が生じる傾向がある. これは, HDの治療後半において循環動態の破綻がしばしば認められることと関連するものと推測される.
  • 藪田 又弘, 鎌田 勝三郎, 山本 雄太, 松村 典彦, 下村 英明, 野中 秀郎, 小松 正佳, 山本 広光
    1998 年 31 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者での血行性感染を適切に対処することは, 透析患者の予後を向上させるのに重要である. 今回著者らは, 比較的稀な疾患とされる化膿性脊椎炎を合併した2例の維持透析患者を経験したが, いずれもブラッドアクセスを介しての血行感染が推察されたので報告する.
    第1例は, 62歳の男性. 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で1986年血液透析に導入された. 1994年3月シャント穿刺部に感染が認められたが, 抗生物質の投与で治癒している. 同年5月に腰痛と発熱で入院したが, 抗生物質の投与によっても症状が消失せず, 同年11月化膿性脊椎炎の診断で手術 (病巣掻破・後方固定術) を施行した. 病巣部よりStaphylococcus epidermidisが検出された.
    第2例は, 67歳の男性. 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全で1994年11月ダブルルーメンカテーテルで血液透析を導入した. 1か月後から発熱が認められ, 血液培養でMRSAが検出された. 抗生物質の投与によってMRSAは陰性化したが, 発熱と炎症所見が持続していた. 1995年4月頃から腰痛が出現, 同年6月に化膿性脊椎炎の診断で施行された生検標本からMRSAが検出された. 症状は, vancomycinの3か月間投与により改善した.
  • 篠原 正彦, 前嶋 明人, 雨宮 賢一, 阿部 由紀子, 土田 晃靖, 矢野 新太郎, 成清 卓二
    1998 年 31 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は, 32歳男性. 当院で腹膜透析を受けていたが, HCV抗体陽性であり, 肝機能の悪化および改善を繰り返していた. インターフェロン (IFN) 治療の希望があり入院となった. 一時的に血液透析に移行し, 肝生検施行後, IFNα-2a 600万単位を2週連日投与後, 週2回投与で行った. しかし, 尿量の減少, 不随運動, 鬱症状が見られるようになったため, 合計35回投与後中止とした. 同時に測定していたIFNの血中濃度では, 最高血中濃度の上昇, 連日投与中には, 蓄積も認められた. HCV-RNA定量は, IFN投与前, 105コピー/50μlであったものが, 投与2か月後には, 陰性化し, 中止6か月後も陰性化を継続している. IFN治療は, 投与量を減量し, 副作用に注意して行えば, 腹膜透析患者の慢性C型肝炎に対しても有用な治療法であると思われた.
  • 下条 文武, 木村 秀樹, 川口 良人
    1998 年 31 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1998/01/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析アミロイドーシスの関節症状に対する副腎皮質ステロイド薬治療の現況を知る目的で, 厚生省透析医療従事者研修施設, ならびに透析医学会認定施設のうちから各県1施設の計102施設を対象として, アンケート調査を行った. 調査回答件数は78施設 (76.5%) であった. 回答した施設の総透析患者数は10,760名で, 10年以上の透析歴患者は2,912名, 透析アミロイドーシス合併例の総数は1,225名であった. 透析アミロイドーシス合併例を有する施設は68施設で, 透析アミロイド関節痛に対する薬物療法の内訳は, 施行しない施設が68施設中12施設に対し, 施行する施設は56施設で80%以上を占めた. 副腎皮質ステロイド薬 (ステロイド) は, 68施設中33施設 (48.5%) で使用していた. ステロイド治療をうけた症例は140名で全透析アミロイドーシス症例1,225名の11.4%であった. ステロイド治療中の副作用出現については, 33施設中8施設から, 計15例が報告された. 副作用の中で特に注目されるものは, 感染症の3例であり, 1例は死亡し, 他2例も数週間の入院を要していた. 透析患者に対するステロイド治療にあたっては, 感染症などに注意し, かつ, その適応を適切にする必要がある. 本研究班が提案した「透析アミロイド関節症に対する少量ステロイド薬治療指針」は意義あると考えられる.
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