対象および方法: 慢性血液透析中, 2°HPT (secondary hyperparathyroidism) を合併しPTX (parathyroidectomy) を必要とした97例を対象とした. 男子51例, 女子46例で平均年齢52.5±9.8歳, 手術時透析期間180.6±64.0か月, PTX後観察期間23.6±18.6か月であった. 術後上皮小体機能を絶対的機能低下群 (intact-PTH<60pg/m
l) (n=42), 相対的機能低下群 (60≦intact-PTH<180pg/m
l) (n=27), 正常群 (180≦intact-PTH<360pg/m
l) (n=16), 機能亢進群 (intact-PTH≧360pg/m
l) (n=7), 再発群 (n=5) の5群に分類した.
結果: 死亡症例は絶対的機能低下群, 再発群には認めず, 相対的機能低下群に術後44.2か月心筋梗塞1例, 正常群に術後9.5か月頓死1例, 機能亢進群に術後4.4か月呼吸不全1例, 28か月結腸癌1例の死亡を認めた. 絶対的, 相対的機能低下群の累積生存率は機能亢進群のそれに対し各々有意な生存率の高値を認めた (p=0.0049, p=0.0149). 各群の手術時年齢, 透析期間, intact-PTH, ALP, 術後観察期間, いずれにおいても各群間に有意差を認めなかった. 患者背景の死亡率に対する影響を上皮小体機能, 年齢, 透析歴を変量として重回帰分析を行った. 上皮小体機能のみが有意な負の因子 (Odds Ratio 0.045, p=0.0349) であった.
結論: 術後, 上皮小体機能低下群は機能亢進群に比べ有意に良好な生存率を示した (p=0.0082). 上皮小体切除後の機能低下症は, 慢性透析患者の予後に影響しない.
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