維持血液透析患者55例の大動脈石灰化係数 (ACI) を1993年から1997年までの4年間測定し, その経時的変化 (
ΔACI) と脂質代謝関連因子との関係を比較検討した.
その結果, 1) ACIは1993年18.3±18.3, 1995年27.6±22.5, 1997年33.2±24.6と漸次有意に進行性の上昇がみられた (p<0.0001). 2) ACI ('97) と各脂質関連因子 (中性脂肪 (TG), 総コレステロール (TC), 高比重リポ蛋白 (HDL-C), 低比重リポ蛋白 (LDL-C), リポプロテイン (a) (Lp(a)), 酸化LDL (OX-LDL), レムナント様リポ蛋白コレステロール (RLP-C) との間に有意な相関関係は認めなかった. 3)
ΔACI高値群と低値群における脂質関連因子の比較.
1993年度から1997年度の55例のACIの変化値を観察年数で除した値 (
ΔACI ('93-'97)) の平均値3.5で55例を
ΔACI高値群 (27例) と低値群 (28例) に分けた. 両群間においてTG, TC, HDL-C, LDL-C, RLP-Cとの間に有意差は認めなかったが, OX-LDL, Lp (a) において,
ΔACI高値群が低値群に比較して有意に高い値を示した (OX-LDL: 1.37±0.49 vs 1.08±0.38μg/m
l p<0.05, Lp (a): 23.7±14.3 vs 15.4±11.1mg/d
l p<0.05).
以上より透析患者の動脈硬化をACIを用いて定量化し, その経時的変化と脂質代謝関連因子を比較検討することによって, OX-LDL, Lp (a) が透析患者の動脈石灰化の進展に関与していることが示唆された.
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