我々は, ポリウレタン製人工血管 (ソラテック
®) の臨床応用を重ねるうちに, この人工血管が過度の屈曲により閉塞をきたす危険のあることに気づいた. 今回, その解決策としてコンポジット人工血管内シャントの術式を考案したので報告する.
当院で1997年6月より1999年12月までに人工血管内シャント術を施行した患者のうち, 肘関節を越えて前腕にループ状人工血管を植え込んだ31症例を抽出し, 術後の合併症, 開存性について検討した. 今回対象となった術式は, 人工血管の素材によって3種類に分類した. すなわち動脈側吻合部からループの大部分をソラテック
®とし, 肘関節を越える部分をE-PTFEで継ぎ足して静脈側に吻合した術式 (コンポジットグラフト) を術式C, 全長にわたってソラテック
®を用いたものを術式T, 全長E-PTFEを用いたもめを術式Pとし, それぞれに対応する患者をC, T, P群 (n=15, 5, 11) とした. T群の5例中3例で, 肘関節部での人工血管のキンキングにより2か月以内に閉塞したが, 他の術式ではキンキングによる閉塞はなかった. 1年開存率は, C群で83.3%, P群で90.9%と, T群の40.0%より有意に高かった. 全例, 術後に血清腫は発生しなかった. 術後の浮腫はP群で強かったがC, T群では軽度であった.
前腕での静脈側が肘関節を越えるループ状人工血管内シャント術では, コンポジットグラフトとすることにより, ソラテック
®の利点 (透析での穿刺使用後の止血のよさ, 早期から穿刺可能なこと) とE-PTFEの利点 (耐屈曲性) の両者を生かし, 欠点 (E-PTFEによる浮腫) を補う術式として期待される.
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