日本透析医学会雑誌
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33 巻, 9 号
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  • 小田 寛, 大野 道也, 大橋 宏重, 渡辺 佐知郎, 横山 仁美, 荒木 肇, 澤田 重樹, 伊藤 裕康
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1231-1236
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者では心血管系合併症, とくに虚血性心疾患 (IHD) の発症頻度が高い. 今回, 血液透析 (HD) 患者と持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者の凝固, 線溶系の各因子を測定し, IHDとの関連性について検討した.
    平均年齢48.5歳の健常者20名 (男性9名, 女性11名), 平均年齢52.7歳のHD患者20名 (男性8名, 女性12名), 平均年齢47.8歳のCAPD患者30名 (男性18名, 女性12名) を対象とした. 平均透析期間は45.2か月と43.8か月で, 基礎疾患はいずれも慢性糸球体腎炎である. 凝固系因子として第XII因子活性, 第VII因子活性, フィブリノーゲン, トロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) を, 線溶系因子としてプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1 (PAI-1), α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体 (PICテスト), Dダイマーを測定した. またIHDは, (1) 心筋梗塞, 狭心症の有無, (2) 無症候性心筋虚血は運動負荷, 薬物負荷後のタリウム心筋シンチグラフィーの所見から診断した. 以下の成績が得られた.
    (1) 健常者に比較して透析患者の第VII因子活性, TAT, フィブリノーゲンは高値を示し, 凝固亢進状態にあった. またHDに比較してCAPD患者の第VII因子活性とフィブリノーゲンはさらに上昇していた. (2) 透析患者のPIC, Dダイマーは高値を示し, 線溶亢進状態にあった. なおHDとCAPD患者の間に線溶系因子に有意差は認められなかった. (3) IHDを有する透析患者の第VII因子活性, フィブリノーゲンは上昇していた. この傾向はCAPD患者でより顕著であった.
    以上より, 透析患者の凝固・線溶系は亢進状態にあり, この傾向はCAPD患者で顕著であった. なかでも第VII因子とフィブリノーゲンはIHD発症の危険因子であることが示唆された.
  • 丸山 寿晴, 三谷 秀樹, 古田 勝彦, 須藤 祐正, 里村 厚司, 大井 洋之
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1237-1243
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全患者の予後に心不全の合併が大きく影響している. 慢性心不全にエンドセリンが強い関与を示すともいわれている. そこで心不全合併の慢性腎不全例についてエンドセリンを中心に検討した.
    慢性腎不全維持透析患者を対象とした. 左室駆出率 (EF) が0.45以下を示す13症例を慢性心不全群, EFが0.55以上を示す18症例を対照群とした. 血液透析前後の血漿レニン活性 (PRA) と心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP) とエンドセリン (ET) を測定した. 透析前後の血圧変化率 (%BP) と心拍出量変化率と全身血管抵抗変化率を測定した. 透析後の心エコー検査にて左房径 (LAD) と左室拡張期径 (LVDd) と左室収縮期径とEFを測定した.
    透析前および透析後のPRA, ET, ANPは慢性心不全群が対照群に比べ有意に高値を示した. 透析前後のETの変化はANPの変化の仕方と異なった. 慢性心不全群において, 透析前ETがPRAと相関係数0.74の有意な相関を示した. 透析前ETがLVDdと相関係数0.74の有意な相関を示した. 透析後ETはLAD, %BPと有意な相関を示した.
    ETは慢性心不全群において有意な上昇を示した. ETは心不全時の血行動態と関与する可能性が示唆された. 血液透析時の除水による前負荷の減少に伴い, ETの変化は減少を示さなかった. 慢性心不全群でPRA, ETが有意に上昇を示し, 有意に相関を示した. 心不全の病態時にはETとPRAは相互的に作用する可能性が考えられた.
  • 血清MCP-1の重要性
    草野 研吾, 中村 一文, 中村 陽一, 大江 透, 草野 仁, 草野 功
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1245-1249
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年, 動脈硬化の発症にmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1) が関連していることが報告されている. さらに透析患者においてはMCP-1を含む種々のchemokineが上昇していることが報告されている. 今回, 透析患者における動脈硬化進展因子の解析を行い, 血中MCP-1の関与を検討した. 対象は透析導入前からの動脈硬化の進展を除外するため糖尿病性腎症と高血圧性腎硬化症を除いた維持透析患者52例 (男性29例, 女性23例, 年齢56±10歳, 透析期間10.1±7.4年) である. 動脈硬化度は頸部エコーでの左右頸動脈8点 (計16点) から得られた内膜中膜複合壁厚 (IMT) の平均値を用いた. 動脈硬化の進展因子として年齢, 透析期間, 左室肥大の有無, 高血圧歴, 喫煙歴, 血清脂質, アポ蛋白分画, ホモシステイン, Lp (a), 尿酸, フィブリノーゲン, 血清MCP-1濃度を用い検討した. その結果, 単変量解析ではIMTの平均値は年齢 (r=0.45, p<0.001), 血清MCP-1濃度 (r=0.45, p<0.001), 左室肥大の程度 (ρ=0.59, p<0.001), 喫煙歴 (ρ=0.41, p<0.05) と相関が認められたが, 他の因子には相関は認められなかった. 重回帰分析 (多重R=0.78) では, 左室肥大の程度, MCP-1濃度, 年齢, アポ蛋白A-1が独立した頸動脈硬化の進展因子として示された. 以上から透析患者において血清MCP-1濃度は頸動脈硬化の進展に関連した重要な因子であることが示された.
  • 川瀬 義夫, 佐藤 暢, 石田 裕彦, 東 勇太郎, 山崎 悟, 岩元 則幸, 小林 裕之, 橋本 哲也, 福田 豊史, 沖野 功次, 山本 ...
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1251-1259
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析 (HD) が生体リズムに及ぼす影響を調べる目的で, 血圧・心拍・自律神経および深部体温を48時間連続で記録し, 高速フーリエ変換 (FFT) を用いてその周期寄与率を算出した. 主な周期成分の寄与率を累積表示したパワースペクトルを作成し, 糖尿病のないHD患者群・持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患者群および健常者群で比較検討した. CAPD患者の場合, 健常者と同様にいずれの要素も24時間の概日リズムで変動していた. ところが, HD患者の場合は深部体温と心拍数に関しては24時間, 血圧や自律神経に関しては48時間と2種類の変動周期を併せ持っていることが判明した.
    一般にヒトは視交叉上核に生物時計を有しており, 光刺激で調節しながら深部体温やメラトニンの分泌周期を24時間の概日リズムに維持している. HD患者において2種類の変動周期が併存するという事実は, ヒトの体内に第2の生物時計が存在する可能性を示唆する. HD患者の場合, 視交叉上核にある第1の生物時計 (親時計) は体温の周期を決定しており本来の24時間周期を保存しているが, 血圧や自律神経の変動周期をつかさどる第2の生物時計 (子時計) が透析の影響を受け48時間を主成分とした他の周期へと移行しているものと考えられる. 内在する2つの生物時計が同調性を喪失していることを内的脱同調という. 透析患者にみられる頑固な不眠の原因は, この内的脱同調に起因しているのではないかと推測された.
  • 南里 正之, 井口 靖浩, 宇田 光夫, 東間 紘
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1261-1266
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性維持透析患者50名〔糖尿病群 (DM群): 25名/非糖尿病群 (非DM群): 25名〕についてLp (a) を測定した. 検査値の高い15名ずつを対象とし, 脱落例3名を除く27名について, ビタミンE固定化ダイアライザー (CL-EE) を6か月間使用した. 動脈硬化の危険因子であるLp (a), MDA, TG, TC, HDL, LDLの推移を測定し, それぞれDM群と非DM群に分けて比較検討した. DM群ではMDAがCL-EE使用前と比較して有意に6か月後に低下し, 非DM群ではLp (a), MDA, TC, LDLが, 6か月後に有意に低下した. TGは6か月後で低下傾向を認めたが, 有意差はなかった. HDLについては検討期間中に変化は認められなかった. CL-EEを使用することによってLp (a)・MDA・TC・LDLが有意に低下したことより, CL-EEは透析患者の動脈硬化の進展を抑制する可能性があると考えられた.
  • 小野田 教高, 栗原 怜, 櫻井 祐成, 大和田 一博, 大薗 英一, 須賀 優, 米島 秀夫, 清水 一雄
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1267-1271
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    副甲状腺機能亢進症は長期透析患者の重大な合併症の一つである. 我々は, 副甲状腺摘出術 (PTx) 後に頸部局所再発をきたし, 再手術を2回と経皮的エタノール注入療法 (PEIT) にてコントロールし得た症例を経験した.
    患者は47歳男性で, 24歳時に血液透析導入, 37歳時には副甲状腺4腺摘出兼前腕一部自家移植術を受けていた. 46歳時に, 頸部に再度副甲状腺結節を認め, これを摘出した. しかしながら, 今回頸部にエコー上さらに複数の副甲状腺腫瘤を認め, 再度局所麻酔下に4腺を摘出し, 3腺に対してPEITを施行し, ホルモン値を下げることに成功した. 病理組織学的検討では, いずれも積極的に癌腫を示唆するものはなく, 過形成に矛盾しない所見であった.
    本症例は経過から, 初回手術あるいは2回目手術で摘出した副甲状腺組織の手術操作時の一部播種により, 機能性の結節が多数出現するいわゆるparathyromatosisを起こしたものと考えられた. 改めて副甲状腺摘出術には慎重な対処が要求されることと, 頸部再発例には再手術に加え, PEITが有効な治療法であることを示した教訓的な症例と考えられた.
  • 日本透析医学会学術委員会透析医療におけるコンピュー , 伏見 清秀, 劉 天泉, 鈴木 卓, 武田 稔男, 田代 嗣晴, 秋葉 隆
    2000 年 33 巻 9 号 p. 1273-1282
    発行日: 2000/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析医療に関する診療オーダーと諸記録の電子化は普及しつつあるが, 電子化された診療情報の共有による有機的多施設間連携や統合的な情報活用は進展していない. その原因の一つは透析医療情報の交換のための規格が定まっていないことにあると考えられる. そのため本研究では血液透析に関する診療情報を効率的に記述, 交換するための共通フォーマット, HeMXを設計した.
    HeMXの使用目的は血液透析治療の記述と情報交換に限定した. 血液透析以外の血液浄化療法は複雑で実施頻度が多くないため除外した. また, 病歴, 診察, 処方など一般診療に関する事項は他の方法で記述することとした. 設計にあたり, 実際の血液透析診療諸記録から電子的に記述すべき情報を抽出し, 項目の列記と構造化を行い診療情報モデルを作成した. 記述言語は, 汎用性, 柔軟性, 構造的記述能力およびインターネットとの親和性からXMLを採用した.
    HeMXは医療施設と患者の識別情報を持つヘッダー部と, 血液透析の履歴情報, 指示情報, 実施記録情報, 検査結果情報の4つのセクションからなる本体部から構成される. 履歴セクションは透析導入とブラッドアクセスの情報を持つ. 指示セクションは透析医療に固有の継続指示, 曜日単位の指示, 透析1回毎の指示を記述できる構造とした. 実施記録セクションはスタッフによる諸観察項目と機器からの取り込み情報を記載可能とした. 検査セクションは血液透析に関連する最小限度の項目の記述を目的とし, それ以外の詳細な検査情報は外部参照することとした. また, パソコンにより容易にHeMX情報を参照できるように, ブラウザによるHeMXビューワーを作成した.
    HeMXは臨床実用性の高い透析情報交換フォーマットであると考えられる. HeMXが広く用いられることにより, 多施設間の情報共有と診療連携が進み, 透析医療の向上と効率化が進展することが期待される.
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