目的: plasma refilling coefficient (mean Kr) はHD施行中の血管透過性を表すものとして近年, 提唱された新たな指標である. 今回, mean Krがドライウェイトの設定に有用であるか否かについて検討した.
対象および方法: 安定維持HD患者41例で12か月にわたりHD前後の体重とともにHD前のヘマトクリット, HD前後血清総蛋白濃度を測定し総計446回のmean Krを得た. 得られたmean Krを0<mean Kr≦1 (n=148, I群), 1<mean Kr≦4 (n=218, II群), 4<mean Kr (n=45, III群), mean Kr<0 (n=35, IV群) の4群に分け, DW設定に用いられる臨床的パラメーターとの関係を検討した.
結果: 1) mean Krと除水速度およびHD前TPとの間には一定の傾向は認めなかった. 2) CTRにおいてI群はIII, IV群に比し, II群はIV群に比し有意に小さかった. 3) HD前後の平均血圧変化率においてI群は他の3群に比し有意にその変化率が大きい, すなわちHD後に血圧の低下を認めた. 4) 昇圧処置の必要性ではI群は他の3群に比し有意にその必要性が高かった. 5) HD中の時間あたりの循環血液量変化率ではI群: -4.2±0.1, II群: -2.4±0.1, III群: -0.6±0.1, IV群: 1.0±0.1 (%) で, 各群間でそれぞれ有意差を認めた. 6) 経時的な体液量変化の比較を目的として各月毎のmean Krの比 (mean Kr/mean Kr) とANPの比 (ANP/ANP) との関連においては, 弱いながら有意な正相関を認めた. 以上より, I群はCTRは小さいもののHD中の血圧は低下しやすく昇圧処置の必要性も高い, さらに循環血液量の低下も大きいということでDWが厳しすぎる可能性が, また反対にIII群, IV群ではHD中の血圧低下は少なく昇圧処置の必要性も少ないもののCTRは大きく, 循環血液量の減少は少ない, もしくはかえってHD後に増加を認めることよりDWが甘くなっている可能性が考えられた.
まとめ: 今回の検討からmean Krは従来より用いられているDW設定の臨床的パラメーターを反映することよりDW設定の指標の一つとなりうるものと思われた. 目安とすべき適正なmean Krは1-4の範囲である可能性が考えられた.
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