日本透析医学会雑誌
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35 巻, 11 号
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  • 西村 眞人, 橋本 哲也, 小林 裕之, 福田 豊史, 沖野 功次, 山本 則之, 中村 直登, 吉川 敏一, 小野 利彦
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1427-1433
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 慢性腎不全による維持血液透析例の左室肥大の成因について, 糖尿病 (DM) 罹患の有無の観点から臨床的に検討した. 対象と方法: 維持血液透析患者486例 (DM145例, 非DM341例) を対象に, 透析前に心臓超音波検査を施行し, 心機能とともに心室中隔径 (IVST), 相対的左室壁厚 (rLVWT), 左室重量係数 (LVMI) を計測した. 透析施行直前のヘマトクリット値, 血漿BNP濃度, 血漿アルドステロン濃度を測定し, 左室肥大との関係を検討した. 結果: 非DM例では, 左室壁ストレスの指標である血漿BNP濃度は, LVMI (r=0.245, p=0.0001), IVST (r=0.250, p=0.0001), rLVWT (r=0.149, p=0.006) と正相関を示した. LVWIは, 透析前後の平均血圧および脈圧, IVSTならびにrLVWTは, 透析前後の脈圧と正相関を示した. DM例では, LVMI, IVST, rLVWTのいずれも血漿BNP濃度, 透析前後の血圧・脈圧値との関連はなかった. 非DM・DM例ともに, ヘマトクリット値, 血漿アルドステロン濃度は左室肥大の指標との関連を認めなかった. 結論: 非DM性透析患者では持続的な容量・圧負荷による左室壁ストレス増加に対して左室心筋リモデリングによる代償性の左室肥大を生じる. DM性透析患者では, 左室肥大は圧・容量負荷とは関係なく生じ, 左室壁ストレスに対する心筋リモデリング・代償性左室肥大の機構に障害がある可能性がある.
  • 湯浅 健司, 杉山 弘明, 香西 哲夫, 松下 和弘, 大田 和道, 増田 秀作, 澤村 博井, 宮本 信昭, 寺尾 尚民
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1435-1440
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者において, C-反応性蛋白 (CRP) 上昇が低アルブミン血症, 栄養不良, 罹病率, 致死率と深く関連し, またアテローム動脈硬化症の予知因子となりうることが示唆されている. 今回, 維持血液透析患者におけるCRP上昇の臨床的意義とくに動脈硬化危険因子との関連について検討した. 対象は当院外来通院血液透析患者, CRP測定時点で急性炎症・感染症を認めない233名の非糖尿病患者である. 透析膜は全例ハイパフォーマンス膜を用いている. CRP高値群 (CRP≧0.3mg/dL) と低値群 (CRP<0.3mg/dL) の2群に分類し両群間における基礎的/臨床的因子, 生化学的パラメーターおよび動脈硬化因子 (古典的および透析関連) との関連について比較検討した. CRP高値群ではARP低値群と比して, 白血球数が有意に高く (6564±1819 vs 5593±1463, p<0.05), また狭心症治療薬の投与数が有意に多かった (0.4±0.8 vs 0.1±0.4, p<0.05). 動脈硬化危険因子との関連でみると, 肥満 (BMI≧26.4), 透析効率低下 (KT/V<1.0) および蛋白摂取量低下 (PCR>0.9g/kg/day) がCRP高値群で低値群と比して有意に高頻度に認められた (それぞれp<0.01, p<0.05, p<0.05). 重回帰分析の結果, 肥満が最も強く次いで透析効率低下がCRP上昇に影響を与えている因子となった (それぞれp<0.001, p<0.05). 結論として, CRP上昇が虚血性心疾患, 肥満および透析効率低下と関連していることが示唆された.
  • 吉矢 邦彦, 近藤 有, 蓮沼 行人, 岡 伸俊, 大前 博志, 原 章二, 原 勲, 守殿 貞夫
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1441-1446
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の重症ASOに対して, LDL吸着療法の臨床的効果を検討した.
    対象は9例の透析患者で, 原疾患は糖尿病が7例, 慢性腎炎が2例である. ASOの臨床症状は, Fontaine IV度すなわち潰瘍や壊疽を認め, 四肢の単純X線にて血管の石灰化を認めた. 症例は難治性であり, 薬剤治療や血管外科的治療に抵抗性であった. 方法は, LDL吸着療法を1クール10回施行した.
    LDL吸着療法の結果, 検査所見は, 総コレステロール, LDLコレステロール, アポ蛋白分画のアポ蛋白Bが有意に低下した.
    臨床的効果は, 3か月での短期予後は, 9例中3例が潰瘍の治癒を認め有効であった. 観察期間1年10か月での長期予後は, 9例中2例が有効であった. LDL吸着療法は, 脂質の異常を改善する. しかし, 臨床的効果は脂質の異常の改善だけでは説明がつかず, LDL吸着療法の作用機序として, 脂質系以外の多数の要素の関与が考えられる.
    9例中6例の患者では, LDL吸着療法を血液透析と同時に施行した (同時療法). 同時療法は, LDL吸着療法の単独療法と比べ, コレステロール除去効率は差を認めず, 血液透析の単独療法と比べ, 透析効率についても差は認めなかった. したがって, 同時療法は患者の時間的な負担を軽減できる治療法である.
    薬剤治療や血管外科的治療に抵抗性の透析患者の重症ASOに対して, LDL吸着療法は試みる価値があると思われる. またLDL吸着療法と血液透析の同時療法は有効な方法である.
  • 羽鳥 基明, 林 雅道, 塩野 昭彦, 蓮見 勝毅, 武井 智幸, 松井 博, 川口 拓也, 伊藤 一人, 鈴木 和浩, 黒川 公平, 深堀 ...
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1447-1451
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    群馬大学医学部附属病院において1995年1月1日から2000年12月31日までの6年間にシャントと腹膜透析カテーテル関連手術以外の手術療法を受けた慢性維持透析患者延べ213名について, 手術内容, 基礎疾患などを検討し, 特に1999年と2000年の全身麻酔下手術症例に関しては手術前検査値, 手術後合併症なども検討した.
    各年ともに眼科系手術が約50%を占めていたが, 各科にわたりmajor surgeryが積極的に施行され, 心, 血管系手術は毎年施行されていた. 眼科系手術症例は糖尿病を基礎疾患として透析導入後比較的早い時期に手術が施行されていた.
    1999年 (16例) と2000年 (14例) の全身麻酔下手術症例の検討では, 2000年症例の方が手術時平均年齢の高齢化傾向や平均維持透析期間の長期化傾向を認めた. また, Hct, Hb, TP, BUN, 血清クレアチニン値などの手術前検査値が改善していた. 手術後合併症は感染症 (手術創移開, 肺炎) が最も多く, 次に出血 (消化管出血や脳出血) が続いた. 手術後合併症出現症例の基礎疾患は糖尿病と悪性腫瘍が多くを占めた.
    維持透析患者の周術期管理方法の改善により維持透析患者の手術適応は拡大し積極的に手術が施行されている. しかし, 基礎疾患に糖尿病と悪性腫瘍を持つ維持透析患者に関しては, 手術後合併症予防管理方法にまだ課題が残っている.
  • 羽田 俊彦, 柳 英里子, 須田 伸, 大和田 章, 三宅 祥三, 堺 隆弘, 中島 健一, 稲次 基希, 戸根 修, 富田 博樹
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1453-1458
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は84歳, 男性. 慢性腎不全にて維持血液透析を施行中, 1999年4月8日に回転性めまいと嘔気を主訴に当院救急外来を受診し, 頭部CTにて左小脳出血と診断され当院脳神経外科に入院となる. 第2病日から血液中の浸透圧変化が少なくかつ抗凝固剤を用いない持続的自動腹膜透析を導入した. 神経症状かつ頭部CT所見の悪化なきことを確認しながら, 段階的に, 第12病日から血液濾過, 第40病日から血液濾過透析, 第54病日から血液透析と段階的に血液浄化療法を変更し救命した. 維持血液透析患者の脳出血例には, その後の血液浄化療法を施行するにあたり2つの大きな問題点がある. 第1に, 通常の血液透析では血清浸透圧を比較的急激に下げることによって頭蓋内圧を上昇させること, 第2に, 抗凝固剤の投与によって出血性病変を悪化させることがあることである. われわれはこの2つの問題点を回避すべく, 急性期の血液浄化療法として腹膜透析を選択し, 上記の段階的血液浄化療法を施行し救命に至った1例を経験した.
  • 小野江 為人, 中島 昭勝, 東福 要平, 松田 充, 若林 時夫
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1459-1463
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者において臨床的に問題となる膵疾患の頻度は多いものではない. しかし末期腎不全患者の剖検例において, 高率に膵疾患が認められるとの報告もある. われわれは当院の維持透析患者75名のなかで, 膵管内乳頭腫瘍を合併した3例を経験した. 症例は男性1名, 女性2名. 年齢は72歳から86歳. 透析歴は3年から7年. 原疾患は糖尿病性腎症2名. 腎硬化症1名であった. いずれの症例も無症状であったが, 透析導入期前後にルーチンの検査で嚢胞性膵腫瘍が偶然みつかった. いずれの症例においても発見時には積極的に悪性を疑わせる所見に乏しく, 無症状のため保存的に経過観察されていた. しかしそのうちの1例は腫瘍の実質浸潤による閉塞性黄疸を合併し死亡した. 剖検は得られなかったが, 膵病変は膵管内乳頭腺癌に由来する浸潤癌と考えられた. 膵管内乳頭腫瘍は腎不全もしくは透析患者に併発しやすい合併症の可能性が示唆された.
  • 児玉 浩一, 長野 賢一, 宇野 傳治, 秋元 学, 川島 篤弘
    2002 年 35 巻 11 号 p. 1465-1468
    発行日: 2002/10/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全にて1995年6月血液透析を導入された. 1999年3月無症候性肉眼的血尿を自覚し, 腹部単純CTにて右腎に腎実質と等吸収値を示す3×2cmの腫瘤を指摘されたため, 1999年4月27日当科紹介された. 一日尿量10-20mL, 尿路感染所見はなかった. 尿細胞診はclass IIであった. 腎動脈血管造影にて腫瘍はhypervascularityを呈し, 同時に施行した腹部CTにおいて腫瘤は早期濃染を認め, 遅延相では周囲実質よりも低吸収値を示した. 腎細胞癌を強く疑い, 1999年6月10日右腎摘除術を施行した. 病理組織学的には腎髄質に浸潤した右腎孟移行上皮癌 (PIT, G3>G2, INFβ, pT3, pR0, pL0, pV0) と診断された.
    腎機能低下により造影剤の使用が制限されるため, 血液透析患者に発生した尿路上皮癌の術前診断は困難である. 透析患者に血尿がみられた場合, 尿路上皮癌の検索のため一連の検査が必要であると考えられた.
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