日本透析医学会雑誌
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35 巻 , 5 号
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  • 岡 良成, 宮崎 雅史, 高津 成子, 国友 桂一, 国米 欣明
    2002 年 35 巻 5 号 p. 269-273
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    日本透析医学会では1995年に透析液の末端でのエンドトキシン (ET) 濃度の許容上限を250EU/L, 達成目標を100EU/L以下と制定した. しかしこれらの数値の臨床的妥当性については, 制定当初より, 具体的なデータの裏付けがあったわけではない. 達成目標値として100EU/L以下で十分に安全なのか, 制定後にも十分な臨床的検討が加えられないまま容認されている現状である. 今回われわれは, 達成目標値以下のETレベルをさらに検出限界以下に清浄化して, この透析液の変化が生体に及ぼす影響を酸化ストレスの観点から検討したので報告する. 対象は当院で2型ダイアライザーを用いた通常透析を行っている透析歴1年以上の患者37例. 1999年12月に透析液供給システムの全面的改修を行い, 透析液末端のET濃度は平均39.0から1.0以下 (EU/L) に改善した. 改修前, 半年後, 1年後での酸化LDL (MDA-LDL, Ox-LDL), sCD-14, サイトカイン等の変動を検討した. 改修前と1年後の透析前データを比較すると, MDA-LDLが5.7±1.5から4.7±1.3 (nmol/mg LDL protein) に有意に低下した (p<0.001). Ox-LDLも2.39±1.00から1.54±1.03 (ng/μg LDL protein) と有意に低下した (P<0.001). sCD-14も6.4±1.1から5.4±0.9 (μg/mL) と有意に低下した (p<0.0001). これらの結果はET濃度が50EU/L以下の透析液であっても, マクロファージを刺激し, 酸化ストレスの要因となることを示している. これは低濃度のETであっても透析患者の動脈硬化および透析アミロイドーシスの増悪因子となりうる可能性を示唆するものである. 以上より, 末端透析液中ET濃度は治療モードのいかんを問わず可能な限り1.0EU/L以下を目標にすべきであると考えられた.
  • 幾高 敏晴, 宮本 匡哲, 村瀬 克典, 石原 毅, 藤吉 晃彰, 大熊 俊男, 皆川 太郎, 平野 高弘, 宇野 裕己, 石黒 源之
    2002 年 35 巻 5 号 p. 275-279
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    分子量の異なる低分子ヘパリン (LMWH), ダルテパリンナトリウム (フラグミン; FR), パルナパリンナトリウム (ローヘパ; LH), レビパリンナトリウム (ローモリン; LM) の特性を出血時間と凝固能から比較し, 臨床での有用性を検討した.
    対象は当センターにて透析施行中で, 出血性病変および出血傾向を有する7症例 (男性5例, 女性2例, 平均年齢71.4±11.5歳) とし, 各LMWH, 透析開始時15-20IU/kg, 持続7.5-10IU/kgの投与量にて, クロスオーバーにて各1週ずつ使用した. 臨床評価は, 抗Xa活性, 抗IIa活性, 出血時間, 止血時間, さらに, ダイアライザーおよび回路内の残血の程度からLMWHの有用性を比較検討した.
    1. 透析終了時における抗Xa活性/抗IIa活性は, LH, FRに比してLMが有意 (LM vs LH (p<0.001, LM vs FR p<0.01) に高かった. 2. 各LMWHが出血時間に及ぼす影響は, LMとLHにおいて, LMが有意 (p<0.05) に短かった. 3. 抗Xa活性/抗IIa活性と出血時間の関係は, 相関係数r=-0.54と有意 (p<0.05) な負相関を認めた.
    LMは, 出血性病変および出血傾向を有する透析症例に対し, より有用なLMWHであることが示唆された. LMWHはどれも同じではなく, 個々の薬剤特性を良く理解し臨床使用することが望ましいものと考えられた.
  • 小野 健一, 久保 充明, 利田 忠陽, 二宮 利治, 柏木 稔, 平方 恵理子, 金井 英俊, 平方 秀樹, 藤見 惺
    2002 年 35 巻 5 号 p. 281-286
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院では透析液のエンドトキシン (endotoxin: ET) 濃度低減化を目的として, 平成9年より通常洗浄に加え, ホルマリンによる逆浸透 (reverse osmosis: RO) 装置の膜洗浄およびRO水, 透析液供給ラインの洗浄を開始した. 当院はAとBの2つの透析室を有しているが, これにより透析室Aでは, 逆浸透タンク内, セントラル, 末端コンソールともにET濃度は有意に低下した. しかし, 透析室BではROタンク内のET濃度の低下がみられず, セントラル, 末端コンソールのET濃度も透析室Aに比べ高値であった. この原因として透析室BのRO装置の膜圧が透析室Aの約2倍と高いことが関与している可能性が考えられた. 透析室BのRO装置を改良して膜圧をA室と同程度まで低下させたところ, ROタンク内のET濃度は, 高膜圧時 (膜圧1.67MPa) のET濃度15.9±5.3EU/Lから低膜圧時 (0.86MPa) 5.5±1.8EU/Lへと低下しこれはA室のET濃度と同程度であった. さらに, 膜圧を変動させ検討したところ, ブレイク圧は存在せず, 膜圧とET濃度には正の相関を認めた (r=0.65, p<0.05). 以上の結果より, RO装置の膜圧を低下させることによりET濃度は低下すると考えられた.
  • 石川 勲
    2002 年 35 巻 5 号 p. 287-293
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    過去9回のアンケート調査で報告された透析患者の腎細胞癌1,451症例のうち848例 (腎細胞癌診断時平均年齢: 53.2±11.6歳, 平均透析期間: 119.1±76.7か月) を対象に平均56.1±41.7か月の経過観察で予後を検討した. まず透析患者が腎細胞癌を合併する例と腎細胞癌を合併しない例を比べるため, 日本透析医学会のデータより推測されるほぼ同年齢・透析期間のものを腎細胞癌を合併しない例とした. 腎細胞癌を合併する例では診断後2年以内の生存率が大きく低下するため生存曲線は大きく下降するが, その後2-6年までは合併しない例と平行して14.1%低下していた. また腎細胞癌患者の実測5年生存率は64.0%, 腎癌特異的5年生存率は81.5%であった. しかし手術例では実測5年生存率が79.5%と良好で, 腎細胞癌を合併しない患者の5年生存率78.1%とほぼ同様であった. また11項目の予後決定因子のうち単変量解析では, 腫瘍進展度ステージ3, 4, 年齢53歳以上, 腫瘍径5cm以上, 嚢胞を伴わないもので不良であった. ステップワイズ変数選択法によってこれら11項目の中から予後決定因子として2項目 (年齢と腫瘍進展度) が選ばれ, 多変量解析によって, 生存に対する年齢の相対危険度 (ハザード比) は3.156倍, 腫瘍進展度のそれは3.120倍であることが分かった. 症状があって発見された腎細胞癌はスクリーニングで発見されたものより腫瘍のサイズが大きく, 腎細胞癌死も多かったが, 単変量解析では両者の生存率に差はみられなかった. なお両側腎細胞癌は15%にみられ, 以前考えられていたより高頻度であった. 結論として, 透析患者には腎細胞癌の合併が多いが, 日本において現在のスクリーニング法と早期手術を続けている限り, 透析患者が腎細胞癌で死亡することは多くないといえる.
  • 鈴木 勝雄, 石坂 寿賀子, 市川 恵彦, 野田 亮輔, 長谷川 徹, 笹尾 寿貴, 遠藤 明太, 老松 寛, 高田 竹人, 渥美 進一, ...
    2002 年 35 巻 5 号 p. 295-300
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 女性. 平成8年より糖尿病のため近医にて加療中であった. 平成11年からは慢性腎不全のため当院通院中. 平成12年11月5日頃よりタール便と全身倦怠感・見当識障害が出現し入院となった. 入院時WBC 1000/mm3, RBC 114×104/mm3, Plt 2.0×104/mm3と汎血球減少を認めた. 骨髄有核細胞数も4.0×104/mm3と減少していた. 当院での治療内容には変更を加えていなかったことから, 入院約1か月前, 通院中の眼科から眼圧低下目的に処方されたacetazolamideによる再生不良性貧血と考えた. Granulocyte-colony stimulating factorの投与と赤血球輸血・血小板輸血を行ったが反応乏しく, ステロイドのパルス療法も無効であった. その後, Cr 8.3mg/dLとなり血液透析を開始した. Cyclosporineの投与も奏効せず, 12月5日敗血症のため死亡した. 剖検では著明な脂肪髄と多臓器でのアスペルギルスの繁殖が認められた. Acetazolamideは優れた眼圧低下作用を有することから主に眼科領域で頻用されるが, まれに再生不良性貧血を合併することがあり, 投与に際しては定期的に採血を行う等, 注意が必要と考えられた.
  • 岸本 典子, 森 泰清, 内山 葉子, 能勢 敦子, 柴崎 泰延, 井庭 理, 来島 泰秋, 加藤 泰則, 蔦 幸治, 正木 浩哉, 松原 ...
    2002 年 35 巻 5 号 p. 301-306
    発行日: 2002/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は糖尿病性腎症による慢性腎不全透析導入期の67歳男性. 血液透析導入を計画され入院したが, 特に誘因なく著しい下血をきたした. 下血以外の腹部症状は認めず, 上下部消化管内視鏡・赤血球スキャンでは出血源を同定できなかった. 一旦は自然に止血したが, その後も輸血を必要とする下血を繰り返した. 透析導入と同時に腹部血管造影を施行し, 回結腸動脈の流入動脈拡張, 流出静脈の早期描出および末梢での異常血管集簇を認め, angiodysplasia (AGD) が考えられた. 維持透析に移行し, 全身状態が安定した時点で回結腸動脈とその支配領域の回盲部腸管切除術を施行. 摘出部の血管造影や病理組織像より回盲部AGDの確定診断を得た. その後, 下血は完全に消失した.
    慢性腎不全の合併症として消化管出血は臨床上重要である. 特に下部消化管出血ではその原因同定に困難を要することが少なくないが, AGDも鑑別診断として常に念頭に置く必要がある. これまでの本邦での報告では, 最終診断には腹部血管造影を要した症例が多く, 治療については外科的切除, 経カテーテル的動脈塞栓術, 内視鏡的電気焼灼, ホルモン内服治療等が試みられてきた. 今後は患者背景や長期予後からみた各種治療法の適応について, 多数例での比較検討が必要である.
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