日本透析医学会雑誌
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36 巻, 7 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 第47回日本透析医学会ワークショップより
    山下 明泰, 川崎 忠行
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1245-1248
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 長沼 早苗, 新井 浩之, 深沢 篤, 鈴木 幸恵, 三浦 明, 鈴木 恵子, 久保 和雄, 鈴木 利昭, 杉本 章彦
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1249-1254
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    RO水のエンドトキシン (ET) 値低減を目的として, RO水供給ライン自動洗浄システムを導入した.
    本システムは, 従来, 手動操作で行っていたRO水ライン洗浄 (ライン洗浄) を自動で行うものであり, 東レメディカル社製RO装置TW-HIにソフトウェア的な改良と追加を行うのみで稼働できる. 洗浄条件入力は, 液晶画面にて行い, 各工程終了ごとにブザーとともにガイダンスを表示する.
    本システムを用いてライン洗浄を月1回, 計8回行った. 洗浄剤は過酸化水素系洗浄剤 (末端濃度2%) を使用し, RO水ラインを120分間薬液封入した. 洗浄効果の指標として, ET値の測定を行った. サンプリングは, RO膜後, RO水タンク後, ETカットフィルター後, 透析液供給装置, 末端個人用装置 (RO水・透析液), 末端コンソール (ダイアライザー入口) にて, 月曜日の朝治療開始前に行った.
    末端RO水では, 洗浄施行前ET値は, 12.53EU/Lであったが, ライン洗浄を施行することにより, 測定感度以下となった.
    本システムを使用することにより, 簡便かつ安全にライン洗浄を施行でき, ET値を低値に維持できた.
  • 柳沢 良三, 峰 正英, 雨宮 裕, 矢崎 恒忠, 菊池 史
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1255-1258
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: シャント不全の早期診断における超音波Bモード・パルスドップラー複合法の有用性を検討した. 対象と方法: 対象は慢性血液透析患者53名で, 超音波Bモード・パルスドップラー複合法によりシャント側上腕動脈の血流量と抵抗指数およびシャント静脈の最小血管内径を計測した. 血液透析時の最大脱血速度が150mL/min未満のものをシャント不全と診断した. 結果: シャント不全例はシャント発育不全5例と狭窄への経皮的血管形成術を施行した3例であった. 上腕動脈血流量と抵抗指数の間 (r=-0.65), 最小血管内径と上腕動脈血流量 (r=0.60) または抵抗指数 (r=-0.45) との間に有意の相関を認めた, ROC (receiver-operating-characteristics) 曲線よりシャント不全の境界値を検討したところ, 上腕動脈血流量は600mL/min, 抵抗指数は0.67であり, 感度は各々88%と100%, 特異性は98%と96%で精度はいずれも96%であった. 最小血管内径では感度と特異性の良好な境界値は設定できなかった. 結語: 超音波検査によるシャント不全の早期診断にはシャント側上腕動脈の血流量または抵抗指数が境界値付近の症例について超音波断層像に加えてシャント造影等による血管内径の検討を行うのがよいと考えられた.
  • 平中 俊行
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1259-1264
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析のためのブラッドアクセスとして人工血管内シャントは, 長期成績が不良であることが問題とされてきた. しかし, 近年ブラッドアクセストラブルの治療法としてインターベンション治療が導入され, シャントが閉塞する前にアクセス不全を発見するためのsurveillanceも導入されるようになり, 人工血管内シャントの開存成績が向上するものと期待される. そこで, 1996年1月から2000年12月の5年間にブラッドアクセスとして使用した人工血管362本の長期成績を, 2001年12月までの6年間を観察期間とし検討した. 使用した人工血管はexpanded polytetrafluoroethylene製342本, polyurethane製20本で, 植え込み部位は前腕170本, 前腕-上腕78本, 上腕108本, その他6本であった. 経過観察期間中の主要な合併症は血栓閉塞38.7%, 静脈狭窄37.8%, 感染7.2%であり, グラフト廃絶 (89本) の主要な原因は血栓閉塞62.9%, 感染20.2%であった. 全グラフトの開存率は一次開存が術後1年, 2年, 3年, 4年においてそれぞれ48.4%, 32.2%, 20.5%, 13.4%, であり, 二次開存が術後1年, 2年, 3年, 4年, 5年においてそれぞれ, 81.9%, 77.1%, 69.0%, 54.7%, 50.8%であった. 年次別二次開存率は, シャント狭窄に対するsurveillanceとインターベンション治療の導入後向上しつつあり, 今後さらに向上することが期待される.
  • 平澤 由平, 鈴木 正司, 伊丹 儀友, 大平 整爾, 水野 紹夫, 米良 健太郎, 芳賀 良春, 河合 弘進, 真下 啓一, 小原 功裕, ...
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1265-1272
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換えヒトエリスロポエチン製剤 (rHuEPO) が6か月以上継続投与されている慢性維持血液透析患者 (血液透析導入後6か月以上経過例) 2,654例を対象に, 維持Ht値と生命予後との関係をretrospectiveに調査, 検討した. Cox回帰分析による1年死亡リスクは, 平均Ht値27%以上30%未満の群を対照 [Relative Risk (RR): 1.000] とした場合にHt 30%以上33%未満の群でRR: 0.447 [95%信頼区間 (95% CI): 0.290-0.689 p=0.0003] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 0.605 [95% CI: 0.320-1.146 p=0.1231] と有意差を認めなかった. 一方, Ht 27%未満の群ではRR: 1.657 [95% CI: 1.161-2.367 p=0.0054] と有意に予後不良であった. また, 3年死亡リスクも1年死亡リスクと同様, Ht 30%以上33%未満の群ではRR: 0.677 [95% CI: 0.537-0.855 p=0.0010] と有意に良好であったが, Ht 33%以上36%未満の群ではRR: 1.111 [95% CI: 0.816-1.514 p=0.5036] と有意差を認めず, Ht 27%未満の群ではRR: 1.604 [95% CI: 1.275-2.019 p<0.0001] と有意に不良であった.
    これらの調査結果より, 1年および3年死亡リスクはともにHt値30%以上33%未満の群で有意に低値であり, 生命予後の観点からみた血液透析患者のrHuEPO治療における至適維持目標Ht値はこの範囲にあると考えられた. ただし, 1年死亡リスクは, 例数が少ないもののHt値33%以上の群についても低値であったことから, このレベルについては今後再検討の余地があると考えられた.
  • 堀田 義雄, 田所 正人, 田浦 幸一, 中村 貴, 塚崎 祥子, 宮崎 雅也, 須山 尚史, 平島 定, 宮崎 正信, 河野 茂
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1273-1277
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    無痛性急性膵炎を契機に高血糖性意識障害を発症した慢性透析患者を経験した. 症例は慢性腎不全で維持血液透析療法中の51歳の男性である. 全身倦怠感出現, その際の中性脂肪は1,963mg/dLであった. 徐々に意識レベルの低下がみられたため受診, 血糖値1,811mg/dLより糖尿病性昏睡と診断した. 補液, インスリン持続投与および連日の血液透析を開始した. 意識が清明となった後も高血糖は持続した. 膵酵素の上昇およびCT上の膵腫大から急性膵炎の合併と診断したが腹部症状は認められなかった. 膵炎の治癒に伴い血糖コントロールも改善した. なお, 抗GAD抗体は陰性であった. 本例は, 入院前に1,963mg/dLの高中性脂肪血症を呈しており, これが急性膵炎の原因と考えられた. 慢性腎不全に無痛性急性膵炎を合併した症例と考えられた.
  • 則行 敏生, 嶋谷 邦彦, 新宅 究典
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1279-1283
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症, 門脈大循環系シャントによる高アンモニア血症を有する慢性腎不全患者に対して血液透析を導入し, ラクツロース, 分岐鎖アミノ酸製剤の投与および維持血液透析で血清アンモニア濃度のコントロールと症状の改善維持を認めたので報告する. 症例: 76歳, 女性. 臨床経過: 1999年6月より, 腎機能障害を認め, 保存的治療が行われていたが, 2001年4月27日腎機能の悪化, 5月1日無尿, 意識レベルの低下を認め血液透析目的で当院紹介入院となった. 肺うっ血, 代謝性アシドーシス, 高アンモニア血症 (369μg/dL) を認め緊急血液透析導入. 腹部CT, 腹部血管造影検査で肝硬変所見を認めず, 門脈全体の狭小化, 左胃静脈を介する門脈下大静脈系シャントが存在した. 特発性門脈圧亢進症に伴う高アンモニア血症と診断され, 透析導入初期には高アンモニア血症による精神症状を認めたがラクツロース, 分岐鎖アミノ酸製剤の併用により症状の改善を認め, 現在外来透析中である.
  • 石津 昌直, 黒岩 三佳, 田中 謙二, 長谷川 善之
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1285-1288
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    著明な出血傾向を示し, 血液凝固第V因子インヒビターの存在を確認しえた一例を経験したので報告する. 症例は55歳, 男性. 慢性糸球体腎炎による末期腎不全のため1994年から維持血液透析を受けていたが, 2002年6月から出血傾向が出現した. PT, APTTが著明に延長しており, 第V因子活性が1.4%と著明に低下していたため当院に紹介入院となった. PIVKA-IIは正常であり, 正常血漿添加補正試験で補正されなかったため, 先天的な第V因子インヒビターにビタミンK欠乏を合併した可能性は否定され, 第V因子インヒビターの存在が疑われた. 著明な貧血と筋肉内への出血がみられ, 第V因子インヒビターが17ベセスダ単位/mLと高値であったため凍結血漿の輸注や血小板輸血, ステロイドホルモンの投与と血漿交換を行ったが, 第6病日, 突然死した. 透析患者における第V因子インヒビター発現の報告はなく, まれな症例であると考えられた.
  • 藤田 喜一郎, 梶原 隆広, 山田 大介, 遠藤 瑞木, 古屋 徹, 金子 昌司, 堀部 良宗, 石井 泰憲
    2003 年 36 巻 7 号 p. 1289-1293
    発行日: 2003/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    61歳, 男性. 1988年慢性糸球体腎炎を指摘されるも放置. 1991年9月慢性糸球体腎炎の増悪を認め透析導入となった. 2000年9月にたまたま施行したCTにて, 両側腎臓の萎縮性変化と多発性嚢胞および左腎の腫瘤を指摘され入院となった. 2001年1月10日根治的左腎摘除術を施行. 紡錘細胞癌 (肉腫様癌) と診断された. 補助療法を勧めるも患者が拒否したため断念. その後, 外来にて経過観察していた. 同年3月16日に左上下肢の麻痺を訴えたためCTを施行したところ, 脳転移が疑われ当院脳神経外科に入院となった. MRIでは右頭頂葉に腫瘤を認めた. 4月12日腫瘍摘出術を施行. 病理組織学的に腎細胞癌脳転移と診断された. その後, 頭部に50Gyの放射線照射を行ったが, 脳転移の再発をきたし, 9月28日死亡した.
    紡錘細胞癌 (肉腫様癌) は極めて予後の不良な腎細胞癌の一細胞型として知られている. しかし最近, 肉腫様変化は腎細胞癌の全ての細胞型から生じ得る, 異型度の高い表現型であると考えられるようになってきた. これまで透析腎癌の予後は良好とされてきたが, 透析患者に発生する腎細胞癌にも肉腫様変化が生じ得ることを認識すべきであると考えられた.
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