日本透析医学会雑誌
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36 巻 , 8 号
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  • 藤田 哲夫, 吉田 一成, 矢内原 久, 齋藤 毅, 宇治橋 善勝, 瀧川 政和, 西巻 博, 池田 俊昭, 馬場 志郎
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1307-1313
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    内シャント不全の診断にはドップラ超音波検査 (Doppler ultrasonography: DUS) やdigital subtraction angiography (DSA) が多く使われてきたが, 得られる画像所見や侵襲度などに欠点を認める. そこで, それらの欠点が少ないmagnetic resonance angiography (MRA) を内シャント不全の診断に適用したので, その有用性について検討した.
    対象は, MRA, DUS, DSAにて診断を行った12症例 (男性5例, 女性7例) で, その後インターベンション (IVR) または手術治療を施行した. MRA施行時の平均年齢は59歳であった. MRAの撮影には0.2mL/kgのGd-DTPAを造影剤として使用した. MRAの所見と, DUS, DSAまたは手術所見との画像診断上の一致度を比較した.
    内シャント不全発症までの透析歴は平均8.3年で, 内シャントは自己血管10例, 人工血管2例であった. MRA所見と他の検査所見の一致率はDSAでは88.9%, DUSでは58.3%, 全体での一致率は91.7%であった. また手術所見との一致率は100%であった.
    内シャントに対するMRAは, 位相コントラスト法と, 造影剤を用いた方法とに分けられる. 前者は造影剤を使用しないが, 血流を感知して画像を作成するため, 狭窄を過剰評価し易い. これに対して後者では過剰評価がなく, 低侵襲でX線被曝もなしに, DSAに近い画像が得られた. 以上より費用の面での問題は残るが内シャント不全の評価にMRAは有用であると考えられた.
  • 岡田 一義, 今田 聰雄, 海津 嘉蔵, 川西 秀樹, 菅原 剛太郎, 鈴木 正司, 石川 勲, 佐中 孜, 奈倉 勇爾, 松本 紘一, 高 ...
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1315-1326
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    本邦では, 透析患者の終末期において, 血液透析 (HD) が安定して施行できている患者の自己決定を尊重し, HDを中止することについての生命倫理学的研究は殆どない. 今回, われわれは, 透析医 (552名) を対象として, 安定したHDを受けている悪性腫瘍終末期症例を提示し, いくつかのシナリオに対して, HDを中止するか, 継続するかの意識調査と, advance directives (AD), 尊厳死, 尊厳生についてどのように考えているかの意識調査を全国的規模で行った.
    434名 (78.6%) から回答が得られたが, 有効回答は427名 (77.4%) であった. ADおよび尊厳死が法的に認められていない現状において, ADの有無で比較すると, (1) 家族がHD中止を申し出た場合, (2) 家族がHD継続を申し出た場合とも, ADがあるとHDを中止する回答は有意に増加した ((1) 48.0%→78.9%, (2) 0.2%→2.6%). さらに延命療法を中止しても法的責任は問われないと仮定すると, ADがあるとさらにHDを中止する回答は増加した ((1) 90.9%, (2) 11.9%). ADと尊厳死を必要であると回答した透析医はそれぞれ74.0%, 83.1%であったが, 法制化も必要と回答した透析医は56.4%, 63.7%に減少した. 尊厳死と尊厳生の比較では, 尊厳生を支持する透析医は, 尊厳死を支持する透析医よりも多かった (47.1%, 15.9%).
    今回の結果は, 現状でも, 透析医および家族が患者の自己決定を尊重すると, ADによる尊厳死が行われる可能性があることを示唆し, 多くの透析医がADや尊厳死を必要と考えている. 一方, 尊厳生は人間にとって非常に大切なことであり, 尊厳死よりもこの言葉を支持する透析医が多かったと考える. すべての国民は個人として生きる権利を認められており, 本邦では, 終末期にも自分が考える尊厳ある生き方を貫くということから始め, 家族および社会が納得する範囲で, 先ず尊厳生によるADが自己決定のために重要であると認識させる努力をすべきである.
  • 青柳 貞一郎, 橘 政昭, 畠 亮, 田中 重光, 長沼 信二
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1327-1331
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    目的: 透析患者のbody mass index (以下BMI) の値が生存率と関わりがあるかを検討した. 方法: 外来透析の透析患者258名 (男性144名, 女性114名) のBMIを算出し, 3年後の生存率を性別, 年齢, 透析歴, 原疾患, 透析の安定性などに分けて調べた. 結果: 2名はBMIの変動により, また22名は転居などで確認できなかったため解析対象より除外した. 3年後, 生存者は191名, 死亡者は43名であった. BMI値の大小による死亡率を検討すると, 60歳未満の患者群ではBMIが概ね20を境にやせ過ぎ, 太り過ぎの者に死亡率が高く, 60歳以上の患者群ではBMIが大きいほうが死亡率が低かった. 死亡率に影響する因子はBMIの他に, 60歳未満の群では透析の安定性と原疾患, 60歳以上の群では年齢が影響した. 死因と原疾患, 年齢, BMIについて特定の関連はみられなかった. 結論: 60歳以下の透析患者はBMIが20くらいが死亡率が低く, 高齢者はより高めがよいと考えられた.
  • 大橋 照代, 中條 恵子, 鈴江 信行, 水口 隆, 水口 潤, 勢井 雅子, 川島 周, 島 健二
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1333-1335
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    最近, グリコアルブミン (GA) 測定法として酵素法に基づく試薬が開発され, 非透析糖尿病患者においては従来のHPLC法による測定値と高い相関があり, HPLC法に代わって使用しうることが示された.
    透析糖尿病患者においても, 酵素法試薬が従来法のHPLC法に変わって使用し得るかを検討した. 透析糖尿病患者165例においても, 酵素法による測定値はHPLC法のそれと良好な相関 (r=0.987) を示し, 血漿タンパク低値群 (TP; 6.0g/dL未満), アルブミン低値群 (3.5g/dL未満), 高度高尿素窒素血症群においても有用であることが示された.
  • 井垣 直哉, 松田 友和, 矢谷 宏文, 川口 貴行, 木田 有利, 柳瀬 公彦, 森口 林太郎, 坂井 誠, 玉田 文彦, 後藤 武男
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1337-1342
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ヘパリン起因性血小板減少症 (HIT) は本邦でも最近になって認知されるようになってきたが, 依然その認知度は低い. 今回われわれは, 糖尿病性腎症の透析患者の導入期に, 回路内凝血を繰り返したHITの1症例を経験したため報告する. 症例は69歳, 男性. 糖尿病性腎不全により, 平成13年12月3日血液透析導入となる. 血小板数はHD導入日19.8万/mm3であったが, HD導入後2週間目には9.7万/mm3と減少していた. ダイアライザー内凝血は著しく, 生食およびヘパリン加生食フラッシュで回路内を洗浄しHDを維持したが, ダイアライザー交換を頻回に要した. 透析膜変更やヘパリン増量, nafamostat mesilate (FUT) や低分子ヘパリンに抗凝固剤を変更するも回路内凝血は同様であった. 胃癌手術後血栓性静脈炎を併発した (FUT単独使用時). 抗PF4・ヘパリン抗体陽性であり, HITと診断した. 現在warfarin内服とFUT併用で回路内凝血なくHDを行っている. 血小板機能および血管内皮機能不全を持つ糖尿病性腎症による透析患者の増加は, 今後HIT患者の増加をもたらす可能性がある. ヘパリンを日常的に使用する透析医療従事者はHITという病態の認識をすべきであり, 早期発見および適切なる治療法の確立により, 致死的な血栓合併症を防止することが肝要である. HIT管理の基礎はあらゆる形態でのヘパリン投与の中止と代わりの抗凝固療法の開始である. 透析患者にHITが発症した場合, 最も理想的な抗トロンビン薬であるargatrobanが本邦では承認されておらず, 今後の課題と考える.
  • 小山 貴之, 南 聡, 河野 啓一, 掛川 哲司, 上條 浩司, 小林 信彦, 市川 透, 金子 洋子, 上條 祐司, 樋口 誠, 清沢 研 ...
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1343-1348
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性, 慢性腎不全に対し透析導入したところ頻回に血液回路内凝固を認め, 導入前17.8万/mm3あった血小板が第6回目の透析開始前1.6万/mm3まで低下した. DICの可能性が否定できずshunt血栓も生じたことからheparinの投与を増加したところ, 深部静脈閉塞, shunt閉塞, 肺塞栓症をきたした. Heparin加血小板凝集試験陽性からheparin起因性血小板減少症/血栓症と診断しheparinを全て中止したところ, 血小板数は速やかに回復した. その後, 抗PF4/heparin抗体も検出された. Heparin中止後も凝固異常が継続したが, 抗thrombin製剤のargatroban使用により改善した. また本症例は抗生剤によるアレルギー, 腹膜透析開始後の好酸球増多症, 複数の不規則抗体の出現などのアレルギー体質を認めた. HIT抗体産生のメカニズムは不明であるが, 背景にアレルギー体質などの免疫異常が関与する可能性も考えられ, 発症のリスクファクターを特定する意味において症例の蓄積が必要と思われた.
  • 森山 能仁, 武岡 幸代, 米田 雅美, 石塚 史乃, 雨宮 秀博
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1349-1353
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性, 1990年1月 (42歳時) 慢性腎不全の診断にて血液透析導入目的に当科第1回入院. 入院後血液透析を導入し, 検査にて血清総蛋白14.4g/dL, γ-グロブリン62.5%, immunoglobulin G (以下IgG) 9,650mg/dLと高値を認め, 免疫蛋白電気泳動検査にて血中M蛋白 (IgG-κ type), 尿中Bence-Jones蛋白を認めた. また血清カルシウム値は7.6mg/dLであった. 骨髄穿刺検査にて形質細胞は59.1%と増殖しており, 多発性骨髄腫IgG-κ typeと診断した. 治療としてdouble-filtration plasmapheresis (以下DFPP) を計8回施行し, さらにmelphalanとprednisoloneの併用療法 (以下MP療法) を2クール施行した後の3月には血清総蛋白9.6g/dL, γ-グロブリン53.6%, IgG 6,240mg/dLと低下し退院した. 以後週3回の維持透析を継続し, 1994年4月までにMP療法を計13クール施行, 血清総蛋白7-8g/dL, γ-グロブリン50%前後に低下し, その後も安定して経過し, 12年以上生存している. 多発性骨髄腫の透析患者の生命予後は不良で多くの文献で数か月程度と報告されている. 本症例の長期生存の一因としては, 初期治療としてのDFPPとMP療法が著効しM蛋白の増加が抑えられ, その後も多発性骨髄腫の活動性が長期にわたり抑えられたこと, 化学療法中に敗血症などの重症感染症の合併をきたすことがなかったことなどが考えられた.
  • 朝田 啓明, 鳥羽 貴子, 川島 司郎, 山瀬 裕彦, 杉山 敏
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1355-1360
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    二次性副甲状腺機能亢進症を合併し, 副甲状腺ホルモン-インタクト (intact-PTH) が500pg/mL以上を呈したCAPDの3例にマキサカルシトールによる治療を行った. 症例は男性1名, 女性2名で平均年齢は51.3歳である. 平均透析歴は5.7年で, 全例CAPDでのみ治療されてきた. マキサカルシトールの投与方法は, 最初週1回10μgの静脈内投与で開始し, intact-PTHが低下しない場合には10μgずつ増量し, 最高週1回30μgまで増量してintact-PTHが100pg/mL-250pg/mLで維持できるように調整した. その結果3例ともintact-PTHは低下し, 骨形成マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ, オステオカルシンも低下した. しかしうち1例は高Ca血症のためマキサカルシトールを減量したところintact-PTHが再上昇し, 1例はCPKの上昇およびしびれなどの神経症状が出現したため中止した. 以上より二次性副甲状腺機能亢進症を呈した症例にマキサカルシトールの週1回投与は有効であったが, intact-PTH低下後に急激な再上昇を招かないよう急速な減量を避けること, CPKの上昇などの副作用に注意する必要があると考えられた.
  • 冨永 芳博, 貴田岡 正史, 秋澤 忠男, 深川 雅史, 弓田 滋, 角田 隆俊, 小岩 文彦, 小野田 教高, 黒川 清
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1361-1369
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 篠田 俊雄, 秋澤 忠男, 栗原 怜, 中井 滋, 吉田 豊彦, 渡邊 有三, 宇田 眞紀子, 川崎 忠行, 内藤 秀宗, 山崎 親雄
    2003 年 36 巻 8 号 p. 1371-1380
    発行日: 2003/08/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    平成12年度の厚生科学特別研究事業, 「透析医療事故の実態調査と事故対策のマニュアルの策定に関する研究 (主任研究者: 平澤由平)」 の全国実態調査の結果, 透析事故の定義が施設ごとにまちまちであることが判明した. そこで本年度の研究では, まず各施設における透析事故の定義を改めて調査し, あわせて各施設における事故報告制度の実態を調査した. また, 平成12年度の実態調査の結果をまとめ, 全国の透析施設に配布した 「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」 がどの程度診療現場に浸透しているかを調査するとともに, マニュアルの効果を検証するため, 透析医療事故の実態調査を重篤な事故に限定して再調査した.
    透析事故の定義と報告制度の有無は施設ごとに多様であったが, 透析事故については6段階分類でレベル3以上の事故をアクシデントとして扱う施設が多かった. 報告制度が確立されていない小規模医療施設も散見され, 今後, 普及のための啓発活動が必要と考える.
    透析医療事故の実態調査では, 重篤な事故件数が平成12年調査の31件/100万透析から40.4件/100万透析へと残念ながら増加し, 死亡事故も透析との因果関係が明らかでないものを含め18件を数えた. この結果は事故の絶対数の増加というよりは, むしろ事故報告制度の普及に伴う報告の増加とも解釈される. 一方, 先述のマニュアルの勧告にもとづいて, より安全な透析操作へ変更した報告も認められ, たとえば空気返血を実施する施設は前回の24%から7.7%へ減少し, ルアロックの普及率は40%から83%へと上昇した. しかし, 前回にみられなかった新しい事故が報告され, 透析患者が高齢化・重症化していることも考えあわせると, 従来とは視点を異にする事故対策の工夫が必要と思われる.
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