虚血性心疾患は血液透析患者の主要な死因の一つである. 冠動脈疾患の検出に心臓核医学検査は有用であるが運動・薬剤負荷を必要とし, 透析患者では, その実施・判定に困難を伴うことが多い. 正常心筋はエネルギー源の70%以上を効率のよい脂肪酸β酸化に依存しているが, 心筋虚血時には脂肪酸のβ酸化が抑制され, 代わってグルコースを利用した解糖系へ移行する. 透析患者の冠動脈病変検出における心筋脂肪酸代謝イメージング製剤である
123I-BMIPPの安静時検査の有用性を検討した.
慢性腎不全による維持血液透析患者130例 (平均透析期間88.5か月, 男性77例, 女性53例, 平均年齢63.8歳) に対し心筋血流製剤である塩化タリウム (
201TI) ならびに
123I-BMIPPのSPECT (single photon emission computed tomography) を施行し, その後60日以内に施行された冠動脈造影検査所見と対比した. 左室心筋を17分画し, TIおよびBMIPP SPECT所見を視覚的に判定, スコア化し (0: 正常-4: 欠損), その総計をTIならびにBMIPP summed scoreとした.
冠動脈造影の結果, 対象患者の71.5%に75%以上の有意狭窄を認めた. BMIPP summed score 6以上を陽性とした場合, BMIPP-SPECTの冠動脈病変の総合正診率は90.0% (感度: 98.0%, 特異度: 65.6%) であった. 一方, TI-SPECTでは, TI summed score 1以上を陽性とした場合, 感度84.7%, 特異度46.9%, 総合正診率75.0%であった. ROC解析の結果, 冠動脈病変診断能を示すAUC (area under the curve) は, BMIPP SPECT 0.895, TI SPECT 0.727であった.
BMIPP-SPECTはTI-SPECTに比して高い精度で冠動脈病変を検出できる. 慢性血液透析患者の冠動脈造影検査の適応判定ならびに冠動脈疾患合併の安全なスクリーニング検査として臨床的に有用である.
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