NO合成を阻害する内因性のNO合成酵素 (NOS) 阻害物質asymmetric dimethylarginine (ADMA) の維持透析患者における血中動態について検討した. 対象は96名で, 血液透析 (HD) 患者72名, 腹膜透析 (PD) 患者24名. 44例はHD後にもADMAを測定した. 健常者9名を対照群とした. 維持透析患者の血清ADMAは0.64±0.13nmol/mLで対照群0.42±0.06nmol/mLにくらべ有意に高値であった (p<0.001). HD患者のHD前値は0.67±0.12nmol/mLでありPD患者0.56±0.11nmol/mLにくらべ有意に高値であった (p<0.01). しかしADMAのHD前血清濃度は, 同時に測定したBUNやCrと相関を認めなかった. また, 1回の血液透析でのADMA血清濃度低下率は42.6±13.9%で, BUN, Crの低下率とくらべると有意に低く (vs. BUN, vs. Cr: p<0.0001), ADMAとBUN, Crの濃度低下率の間にはそれぞれ有意の正相関を認めた (vs. BUN: r=0.732, p<0.0001, vs. Cr: r=0,755, p<0.0001).
以上より, 本邦人の透析患者でも欧米人と同様に透析前血清ADMA濃度は健常者より高値であり, 一回の血液透析によりBUNやCrの除去率と高い相関性をもって除去される. しかし透析前血清ADMA濃度上昇機序はBUNやCrとは異なり, 体内での産生亢進または腎臓以外の組織・臓器での分解低下が関与していることが示唆された.
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