日本透析医学会雑誌
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39 巻, 5 号
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  • 角田 政隆, 千葉 尚市, 大宮 志寿加, 奥田 絵美, 中川 幸恵, 安田 卓二, 秦 温信
    2006 年 39 巻 5 号 p. 1133-1141
    発行日: 2006/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者は栄養不足であるといわれることが多い. 血液透析を施行することも生体で異化作用を亢進させると考えられている. そこで, 血液透析自体がエネルギー代謝に関与していることを調べるため, 血液透析患者23名を対象として, 間接エネルギー測定法を用いて安静時エネルギー代謝量 (REE; Resting Energy Expenditure) と, 呼吸商 (RQ; Respiratory Quotient) を調べた. 計測は, 週初め (中2日) とその2日後 (中1日) の2回, 透析前, 透析中 (1時間おき), 透析終了前, および終了後に施行した. 年齢, 性別, BMIをマッチさせた健常者を対照とした. REE・RQとも中1日と2日の間に有意差はなかった. 患者群の開始時のREEは対照群と比較して有意に低かった. しかし, 透析経過中のREEの変化に有意差はなかった. また, 開始時のRQは患者群は対照群よりも有意に高かった. RQは透析中に減少していった. さらに, 患者を過去1年間に, 十分栄養が摂取できたためにドライウェイトが上昇した群 (A群), また栄養が不十分で減少した群 (B群) に分類して検討したところ, 開始時のREEはA群がB群にくらべて有意に高く, 開始時のRQはA群が有意に低かった. また, 透析中のRQはB群が減少する割合は大きかった. 両群間でREEに差がみられることを考えると, REEは採血だけでは困難な, 透析患者の栄養状態の指標になる可能性がある. また, 摂取した食事の栄養素の割合が患者群では健常者群と異なっているため, 健常者にくらべて透析患者のRQが低い可能性がある. REE・RQをみることで効果的な栄養指導を行ったり, 透析中のエネルギー投与 (IDPN; Intradialytic parenteral nutrition) の指標となりうると考えられた.
  • 西 隆博, 清水 英樹, 崔 啓子, 三瀬 直文, 多川 斉, 杉本 徳一郎
    2006 年 39 巻 5 号 p. 1143-1147
    発行日: 2006/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    近年, 透析導入以前に虚血性心疾患 (IHD) に対して何らかの治療を受けている症例が増加している. そこで1983年から2002年までの20年間に当院で透析導入した1,060例の中から, 導入前または導入時のIHDの合併について分析した. このうち, 導入前, 導入時にIHDと診断され, 薬物療法, 経皮的冠動脈形成術あるいは冠動脈バイパス術を施行されている110症例を抽出し, その背景を検討した. HD導入以前にIHD治療を受けている患者を導入年により5年ごとにGroup I (1983-1987年, 10 patients), Group II (1988-1992年, 21 patients), Group III (1993-1997年, 38 patients), Group IV (1998-2002年, 41 patients) の4グループに分けた. DMは5人/10人 (50%), 10/21 (48%), 21/38 (55%), 22/41 (54%) とそれぞれこれらのグループの中の大きな背景疾患であった. IHD治療は, 6人/10人 (60%), 4/21 (19%), 17/38 (45%) と12/41 (29%) が薬物であった. PCIは3人/10人 (30%), 12/21 (57%), 15/38 (39%), 18/41 (44%) であった. 冠動脈バイパス術は, 1人/10人 (10%), 5/21 (24%), 6/38 (16%), 11/41 (27%) であった. IHDの診断から透析導入までの期間は長期化の傾向が認められた. 近年の透析導入例ではIHD症例が増えていることから, 透析患者の予後改善には保存期腎不全における虚血性心疾患の対策が望まれる, 一方, IHD患者の腎不全進行の予防も合わせて重要と考えられた.
  • 後藤 俊介, 井垣 直哉, 横田 一樹, 駒場 大峰, 田中 真紀, 竹本 利行, 前田 賢吾, 来田 和久, 廣末 好昭, 玉田 文彦, ...
    2006 年 39 巻 5 号 p. 1149-1155
    発行日: 2006/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    アディポネクチン (ADPN, 基準値5-10μg/mL) は抗動脈硬化作用および抗糖尿病作用をもつアディポサイトカインで, 非腎不全および腎不全患者における心血管リスクの減少や肥満やインスリン抵抗性の改善に関与している. 近年, ADPNがAMP activated protein kinase (AMPK) の活性化を介して, 左室肥大 (LVH) を抑制する働きもあるという報告がなされている. このことが血液維持透析患者にも当てはまるかは明らかにされていない. 今回われわれは当院における維持血液透析患者40人を対象に2年間にわたって心エコーによる左室心筋重量係数 (LVMI) の変化とADPNとの関連について検討した.
    結果, (1) 透析患者のADPNは糖尿病性腎症・男性: 15.8±5.3μg/mL, 糖尿病性腎症・女性: 14.1±6.4μg/mL, 非糖尿病性腎症・男性: 16.6±5.2μg/mL, 非糖尿病性腎症・女性: 16.1±6.5μg/mLであり, 各群で上昇していたが, 各群間で有意差はなかった. (2) LVMIの悪化群 (Progression: P群, LVMI: 120.9±39.2→174.6±60.5g/m2) は改善群 (Regression: R群, LVMI: 136.6±37.2→106.4±32.0g/m2) にくらべADPNの値は低値であった (13.1±4.6 vs. 18.3±5.8μg/mL, p=0.003). (3) ロジスティック回帰分析を用い多変量解析を行い, ADPN [オッズ比 (95%信頼区間) =0.815 (0.669-0.993), p=0.042] および収縮期血圧 [オッズ比 (95%信頼区間) =1.886 (1.019-3.493), p=0.042] が有意な因子として選択された.
    血液維持透析患者においてもアディポネクチンが左室肥大の抑制に関与している可能性が示唆された.
  • 駒場 大峰, 井垣 直哉, 土居 久子, 後藤 俊介, 横田 一樹, 竹本 利行, 田中 真紀, 前田 賢吾, 来田 和久, 廣末 好昭, ...
    2006 年 39 巻 5 号 p. 1157-1162
    発行日: 2006/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者は睡眠時無呼吸症候群 (sleep apnea syndrome: SAS) の頻度が高く, 心血管合併症との関連が注目されているが, その報告は少ない. 今回われわれは, 糖尿病性腎症血液透析患者にSASを合併し, 経鼻持続陽圧換気 (nasal continuous positive airway pressure: nasal CPAP) 導入により血圧日内変動と糖代謝が改善した一例を経験した. 症例は33歳女性. BMI 28.5で肥満体型であった. 30歳時に糖尿病性腎症のため血液透析に導入したが, 徐々に高血圧が増悪した. 血圧日内変動はreverse-dipper typeであり, 体液管理, 降圧薬投与を行うも治療抵抗性であった. 睡眠中の窒息感, 夜間不眠を訴えたので, ポリソムノグラフィー (polysomnography: PSG) を施行した. その結果, 無呼吸低換気指数 (apnea-hypopnea index: AHI) は30.1で, 閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断した. Nasal CPAP導入により自覚症状は改善し, AHI 14.7まで低下した. また, 血圧日内変動はdipper typeとなり, 随時血糖, HbA1cは低下した. 血圧日内変動と糖代謝が改善した一因として, nasal CPAP導入によって夜間の交感神経系の充進と, これに伴うインスリン抵抗性が改善したことが考えられた. 血液透析患者はSASの頻度が高く, 積極的なPSGの実施およびnasal CPAP導入により心血管合併症の発症防止, 予後の改善が期待される.
  • 石川 康暢, 柴崎 跡也, 伊藤 政典, 西村 佐代子, 眞岡 知央, 江端 真一, 清水 淳, 橋本 整司, 森田 研, 渡井 至彦, 望 ...
    2006 年 39 巻 5 号 p. 1163-1166
    発行日: 2006/05/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    α-galactosidase Aの酵素補充療法を開始後に腎移植を施行したFabry病の症例報告はこれまでになく, 私たちは貴重な1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は32歳男性, 13歳時にFabry病と診断された. 28歳で腎機能障害を指摘され, 32歳ですでに慢性腎不全であった. 2004年7月より慢性腎不全の改善を期待して保険承認された酵素補充療法を開始された. 酵素補充療法により, 四肢末梢の疼痛や血漿および尿中globotriaosylceramide (GL-3) は著明に減少したが, 徐々に腎機能障害は進行した. 2004年10月には血清クレアチニンが21.4mg/dLとなり, 尿毒症症状も出現したため, 血液透析を導入し, その約2週間後に父をドナーとした生体腎移植を施行した. 腎移植後の経過は良好であり, 現在も酵素補充を継続している. 腎移植後の酵素補充療法は移植腎へのGL-3沈着防止のために必要なだけでなく, むしろFabry病の重大な合併症である心血管疾患の予防に大変重要な治療であり, その指標には尿中よりも血漿中のGL-3を用いるべきと考えられた.
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