近年, 透析導入以前に虚血性心疾患 (IHD) に対して何らかの治療を受けている症例が増加している. そこで1983年から2002年までの20年間に当院で透析導入した1,060例の中から, 導入前または導入時のIHDの合併について分析した. このうち, 導入前, 導入時にIHDと診断され, 薬物療法, 経皮的冠動脈形成術あるいは冠動脈バイパス術を施行されている110症例を抽出し, その背景を検討した. HD導入以前にIHD治療を受けている患者を導入年により5年ごとにGroup I (1983-1987年, 10 patients), Group II (1988-1992年, 21 patients), Group III (1993-1997年, 38 patients), Group IV (1998-2002年, 41 patients) の4グループに分けた. DMは5人/10人 (50%), 10/21 (48%), 21/38 (55%), 22/41 (54%) とそれぞれこれらのグループの中の大きな背景疾患であった. IHD治療は, 6人/10人 (60%), 4/21 (19%), 17/38 (45%) と12/41 (29%) が薬物であった. PCIは3人/10人 (30%), 12/21 (57%), 15/38 (39%), 18/41 (44%) であった. 冠動脈バイパス術は, 1人/10人 (10%), 5/21 (24%), 6/38 (16%), 11/41 (27%) であった. IHDの診断から透析導入までの期間は長期化の傾向が認められた. 近年の透析導入例ではIHD症例が増えていることから, 透析患者の予後改善には保存期腎不全における虚血性心疾患の対策が望まれる, 一方, IHD患者の腎不全進行の予防も合わせて重要と考えられた.
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