日本透析医学会雑誌
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39 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 寺脇 博之, 中山 昌明, 伊藤 貞嘉
    2006 年 39 巻 6 号 p. 1179-1185
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    本邦PD患者の減塩に対する意識と実際の食行動の実態を把握することを目的とする実態調査を行った. 東北地方15医療施設に通院しているPD患者96名を対象に調査票を配布, 回答結果より, 減塩意識および食行動について検討した. 減塩意識に関する設問では, 回答者83名のうち84.3%が塩分制限を指示されたと認識し, 64.4%がある程度の塩分制限を遵守できていると自己評価していたが, 具体的な減塩量を把握していたのは54.2%であった. 52.0%が減塩に対する心理的負担を感じていた. 減塩困難の最多理由は薄味に伴う食欲減退であったが, その他さまざまな要因が関与していた. 食行動についての設問では, 外食, 漬物, インスタント食, 加工食は摂取を制限している例が多かった反面, 味噌汁の摂取に関してはほぼ毎日摂取する例が30.5%を占め, 特に65歳以上群では41.9%が習慣化していた. 醤油も年齢・PD期間にかかわらず25.9%で制限を意識せずに使用していた. 以上のことから, 減塩の意識と実際の食行動には明らかな乖離が存在する実態が示された. 実効性の高い塩分制限を達成するためには, 患者の背景を十分踏まえた上で, より具体的な減塩教育と精神的支援を行うことが必要と考えられた.
  • 渡邉 早苗, 菅野 義彦, 吉沢 守, 北村 雄大, 松村 康男, 松本 郷, 雑賀 慶二, 鈴木 洋通
    2006 年 39 巻 6 号 p. 1187-1190
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に対する食事療法の一環として, 日常の精白米をリン含有量が少ないBG無洗米に変更した. 15名の透析患者 (男性8名, 女性7名, 平均年齢: 54.1歳, 平均透析年数: 10.1年, 原疾患: 慢性糸球体腎炎10名, 糖尿病性腎症5名) に対して1か月使用したところ, 血清リン値は7.2±0.2mg/dLから6.3±0.4mg/dLへ有意に減少した (p=0.0014). 15例中12例 (80%) で減少を認め, うち9例 (60%) では10%以上の減少を認めた. 食味の低下を訴える例もなく, 使用に際し大きな問題は認めなかった. また, 使用前の血清リン値, 透析歴と血清リン値の減少率には関連がみられなかった. 経済的な負担も大きくないため, リンの摂取量をコントロールする上で有用であると考えられた.
  • 福井 亮, 若林 良則, 塚田 有紀子, 末次 靖子, 林 良明, 圓井 芳晴, 横山 啓太郎, 細谷 龍男
    2006 年 39 巻 6 号 p. 1191-1195
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    1979年 (33歳時) から維持透析中の57歳男性. 二次性副甲状腺機能亢進症に対し, 1994年に副甲状腺摘出術および左前腕への自家移植術が行われた. その後もintact PTH (i-PTH) 1,000pg/mL以上が続き, 1999年に頸部の残存腺の摘出が行われた. 2003年6月頃から「右臀部が痛くて座れない」と訴え, 同年12月当院へ紹介され受診した. 血清Ca 13.2mg/dL, P 6.1mg/dL, Alb 4.4g/dL, i-PTH 360pg/mL, 骨盤X線写真で, 右臀部から大腿内側に手拳大の腫瘤状石灰化を認めた. 前医で使用されていた大量のビタミンD製剤, bisphosphonate, AI含有のP吸着剤を中止し, sevelamer hydrochlorideでの治療を行いCa・Pの正常化につとめた結果, 2004年12月i-PTHが2,022pg/mLまで再上昇したため, 自家移植後副甲状腺の摘出 (PTx) が施行された. 以上の治療により, 腫瘤状石灰化が数か月の経過で著しく縮小した. Sevelamerを使ったCa・Pのコントロールに加えてPTxを行うことで, ビタミンD過剰投与および二次性副甲状腺機能亢進症が関与した腫瘤状石灰化を縮小しえた1例を報告した.
  • 大関 正仁, 福島 達夫, 桑原 篤憲, 作田 健夫, 春名 克祐, 小林 伸哉, 浪越 為八, 小坂 義秀, 長洲 一, 依光 大祐, 大 ...
    2006 年 39 巻 6 号 p. 1197-1201
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性, アルコール性肝硬変の既往あり. 2003年9月に末期腎不全で血液透析療法を開始. 2004年6月30日, 内シャントが閉塞し当院血管外科受診. 術前の出血傾向検査では異常値を認めていない. 入院後, 透析用カテーテルを右内頸静脈に挿入, 穿刺30分後より挿入部から出血し, 呼吸困難となり気管内挿管後, ICUに入室. 入室時の検査では, 血小板数に変化は認めず, APTT, PTの著明な延長, Thrombo Test (TTO), Hepaplastin Test (HPT) の著明な低下を認めた. 急性Vit K欠乏症と診断しVit K製剤の投与を開始した. 投与開始後, カテーテル刺入部からの出血は止血し, 凝固時間も速やかに改善した. 入院直前に市販薬であるキチンーキトサン製剤 (1日30錠: 推薦容量1日10錠) を内服したことが判明した.
    以上より, 本例の出血傾向の原因としてキチンーキトサン製剤によるVit K欠乏症が考えられた.
  • 崔 啓子, 清水 英樹, 西 隆博, 三瀬 直文, 日野 春秋, 三浦 純男, 木川 幾太郎, 宮入 剛, 多川 斉, 杉本 徳一郎
    2006 年 39 巻 6 号 p. 1203-1209
    発行日: 2006/06/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    留置型血液透析カテーテル (パームキャス®: 以下留置型カテーテル) 先端周囲の右房内に血栓を形成し, 開心術で除去した2例を報告する. 症例1: 66歳, 女性. 慢性糸球体腎炎 (CGN) による慢性腎不全 (ESRD) のため64歳時血液透析 (HD) 導入. アクセス困難から留置型カテーテルを使用したが, 約1か月後に左下腿蜂窩織炎からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (methicillin resistant Staphylococcus Aureus, MRSA) 菌血症となり留置型カテーテル先端で右房内血栓を形成した. 肺梗塞も合併していたため, 速やかに開胸し留置型カテーテルおよび血栓除去術施行. 術後経過は良好で約1か月後に連続携行式腹膜透析 (CAPD) へ移行した. 症例2: 58歳, 女性. CGNによるESRDのため3年前にHD導入. アクセス困難から留置型カテーテルを使用したが, 脱血不可能となり神経性食思不振症に対する中心静脈栄養ラインとして使用していた. 約10か月後に偶然の経胸壁心エコー検査で, 右房内巨大血栓があり右室に落ち込む所見も認めた. 開胸し留置型カテーテルと血栓を除去した. 症例1は悪性リンパ腫深部静脈血栓症, 副腎不全のためステロイド剤内服などが, 症例2では摂食障害のため慢性的に脱水状態であったことが, 発症と増悪の危険因子と考えられた. 2例とも予後は良好であった. 結語: 留置型カテーテル先端に血栓を形成した2症例を経験した. 経食道または経胸壁の心エコー図で確定診断し, 開心術による除去が奏功した. まれな合併症であるが, 留置型カテーテル使用困難が認められた時には鑑別するべき重要な合併症である.
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