日本透析医学会雑誌
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39 巻, 7 号
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  • 内臓脂肪型肥満と脂質代謝との関連について
    對馬 恵, 寺山 百合子, 福原 陽子, 山谷 金光, 水野 宏, 齋藤 久夫, 三國 恒靖, 百瀬 昭志, 舟生 富寿
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1227-1236
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者では各種の代謝異常, 特に, 脂質代謝異常がみられ, 肥満判定指標の基準値は一般人口と異なっている可能性がある. 今回, 透析患者の肥満とくに内臓脂肪型肥満を検討するために, 肥満判定指標と脂質について測定し, 腎機能正常者と比較した.
    対象は, 平均年齢61.0歳の血液透析患者75例 (HD群) と平均年齢44.5歳の腎機能正常者58例 (対照群) である. 両群についてbody mass index (BMI), 臍まわりでの胴囲 (W), 胴囲/身長比 (W/Ht), 臍レベルCT画像上での内臓および皮下脂肪面積を計測した. さらに, 食後採血により, 血中の総コレステロール (TC), 中性脂肪 (TG), 高比重りポ蛋白コレステロール (HDL-C) を測定し, (TC-HDL-C)/HDL-CとTG/TCを求めた.
    内臓脂肪面積 (TC-HDL-C)/HDL-C, TG/TCの平均値は, 対照群がそれぞれ37.4cm2, 1.95, 0.52であったのに対し, HD群ではそれぞれ58.1cm2, 2.31, 0.74とHD群が有意に高値であった. また, 内臓脂肪面積とBMI, W, W/Htは両群においてそれぞれ有意に正相関した. 対照群における内臓脂肪面積は (TC-HDL-C)/HDL-Cと正相関 (r=0.532, p<0.0001) したが, TG/TCとは関連が弱かった (r=0.286, p=0.0296). 一方, HD群における内臓脂肪面積は (TC-HDL-C)/HDL-Cと正相関 (r=0.397, p=0.0004) し, TG/TCとはさらに良好な正相関関係を認めた (r=0.568, p<0.0001).
    血液透析患者における内臓脂肪面積はBMIに対して高値であり, BMIでの肥満判定には問題があることがわかった. また, 空腹時採血でなくともTG/TCは, 血液透析患者において内臓脂肪型肥満の指標となり得ることが示唆された.
  • 秋葉 隆, 中井 滋, 若井 建志, 新里 高弘, 奈倉 勇爾
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1237-1244
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症は末期腎不全の原因としてもっとも頻度が高く, 合併症が多く予後不良で, 多くの医療資源を要する. 糖尿病性腎症による透析導入患者数の今後の動向により, 透析医療が大きな影響を与える可能性がある. そこで, 国民人口動態調査と日本透析医学会統計調査委員会調査をもとに予測を試みた.
    1995年から2004年のわが国の糖尿病性腎症を原疾患とする慢性透析新規患者の性年齢別新規患者数と, わが国の性年齢別人口とその推測値から, 2005年から2015年の糖尿病性腎症による新規慢性透析患者数を推計した. 糖尿病性腎症による慢性透析患者推計値は, 2010年では男12,579, 女5,756, 計18,335名, 2015年では男14,813, 女6,575, 計21,388名と2004年に比べ総計はそれぞれ30.6%増, 52.2%増と推計された. 50-54歳, 55-59歳では2004年までの増加傾向が消失ほぼ平坦に, 60-64歳では2010年から増加傾向が減少傾向に変化した. これらの世代の導入率には大きな変化がないので, これは年齢別人口の変化によるものであった. 65歳~の世代では, 各年齢とも増加傾向を示し, もっとも導入数が多い年齢は従来の65-69歳から70-74歳に移行することが確認された.
    医療統計による推計には, 将来の医学の進歩, 健康保険制度の変化など, 予測不能などの危うさがある. この欠点を認めた上で, 本研究は, 今後の透析医療が立ち向かうべき対象として, 糖尿病性腎症による慢性透析患者の増加, しかも高齢導入患者の増加があることを明らかにした.
  • 松下 芳雄, 山内 英治, 松岡 潔, 有薗 健二
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1245-1250
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    塩酸セベラマー投与により血清HCO3-濃度が低下することが報告されている. 一方, 沈降炭酸カルシウム (炭酸Ca) はアルカリを供給し, 血清HCO3-濃度を上昇させる. われわれは, 塩酸セベラマーに炭酸Caを併用することによる, 代謝性アシドーシス緩和の可能性について検討した.
    対象は当院の慢性血液透析患者16名 (男性8名, 女性8名), 年齢51.0±9.6歳, 透析期間58.0±56.0か月であった. 塩酸セベラマー2.25g/日を2週間投与, さらに増量し (2.95±1.4g/日) 2週間投与. この間, 炭酸Caは中止した. つぎに8週間塩酸セベラマーを休薬しwash outした後, 炭酸Ca 1.5/日を投与した状態で, 塩酸セベラマー2.25g/日を2週間, さらに2.95±1.4g/日を2週間投与. 透析開始前の血清HCO3-濃度を測定した.
    塩酸セベラマー投与により, 血清HCO3-濃度は有意に低下し, 開始前23.2±1.86mmol/L, 2週間後20.3±1.40mmol/L (p<0.0001), 4週間後19.9±2.07mmol/L (p<0.000001) であった. 炭酸Ca併用時は開始時23.0±1.68mmol/L, 2週間後21.5±2.23mmol/L (p<0.05), 4週間後20.9±2.37mmol/L (p<0.01) であった. 炭酸Ca併用により, 代謝性アシドーシスは有意に軽減された (塩酸セベラマー投与4週間後vs. 炭酸Ca併用4週間後; p<0.01).
    透析患者に塩酸セベラマーを投与する際には, 代謝性アシドーシスの面からcalcium (Ca) 含有phosphate (P) 吸着剤を併用するべきである.
  • 木村 敏樹, 大石 秀人, 三井 憲, 草深 裕光
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1251-1256
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性. 1997年12月, 糖尿病性腎症による慢性腎不全のため血液透析導入. 2004年5月上旬より発熱, 右胸痛, 胸水貯留あり, 5月24日入院. 抗核抗体陽性, LE細胞陽性, 胸水検査所見などから自己免疫性疾患に伴う胸膜炎を疑い, 6月1日よりプレドニゾロン40mg/日投与を開始した. 胸膜炎は改善したが, 6月15日, 突然右下腿痛を訴えショックに陥った. 右下腿の発赤腫脹があり, 同部位および足背に出現した水疱の穿刺液と血液培養からG群レンサ球菌検出. 下肢MRI所見と合わせ, 化膿性筋炎と診断. アンピシリン2g/日の投与を開始し, 2週間で改善した. ステロイド治療中で免疫不全の状態にあり, G群レンサ球菌による化膿性筋炎に, toxic shock様の病態を合併したものと考えた. ステロイド治療中など免疫不全の透析患者に突然の四肢痛を認めた場合, 鑑別診断の一つとして化膿性筋炎を考える必要がある.
  • 坂口 俊二, 山崎 寿也, 池藤 仁美, 川上 智津江, 中吉 隆之, 遠藤 宏, 楳田 高士, 若山 育郎, 宇治田 卓司
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1257-1263
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病透析患者で間欠跛行を呈した1症例に対する鍼治療の効果を検討した.
    [症例] 59歳男性, [主訴] 一定距離の歩行によるアキレス腱から下腿後側の痛み (左>右). [現病歴] 糖尿病にて加療中の1998年頃に間欠跛行が出現. 2000年には糖尿病性腎症から透析療法開始. 間欠跛行については専門医を受診せず放置. [現症] 百数十mの歩行で下肢痛が出現し歩行困難となるが, しばらくの休息で再歩行可能. 下肢の痺れ・冷感なし. 挙上・下垂試験陰性. 左右足背・後脛骨・右膝窩動脈の拍動触知困難. [鍼治療] 腰下肢の経穴に鍼治療を週1回の間隔で20回実施. [評価] 治療前と治療5回毎に包括的QOL尺度としてMOS Short Form 36 Health Survey (SF-36v2TM), 末梢循環の指標として左右母趾の趾尖容積脈波を測定した. さらに, 患者には万歩計を手渡し, 外出時の歩数距離などを詳細に聴き取った. [結果] 20回の鍼治療により, SF-36の8下位尺度得点のうち, 5下位尺度の得点上昇がみられた. 特に「精神状態 (MH)」が初診時54.5点から20診時65.1点に, 「日常役割機能【身体】(RP)」が49.4点から56.2点に「身体機能 (PF)」が27.0点から34.0点にそれぞれ上昇した. 治療継続により左右母趾の趾尖容積脈波の波高は高くなり, 歩行距離は初診時168mから20診時378mまで延長した.
  • 栫井 成彦, 浅野 友彦, 伊藤 敬一, 中村 宏, 早川 正道
    2006 年 39 巻 7 号 p. 1265-1268
    発行日: 2006/07/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    28歳の男性. 2003年5月, 以前から指摘されていた左内シャント動脈瘤をネコに咬まれ受傷した. 左前腕部の腫脹, 熱感, 疼痛のため当科を受診した. 来院時, 動脈瘤の直上に2箇所の咬傷を認め, 内シャントは完全に閉塞していた. 蜂窩織炎の疑いで緊急入院となった. amikacin, piperacillin, clindamycinを併用し, γ-グロブリンを投与した. 後日, 創培養からパスツレラが検出されたためpanipenem/betamipronとminocyclineの併用に変更した. 炎症反応は改善傾向にあったが, 22病日に動脈瘤が突然破裂した. 用手的に圧迫止血し, 緊急に内シャント動脈瘤切除を施行した. 28病日に左肘部に内シャントを再建し, 維持透析を行っている. ネコ咬傷後のパスツレラ感染症は増加しているが, シャント感染をきたした報告例は世界初と思われる.
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