透析患者では各種の代謝異常, 特に, 脂質代謝異常がみられ, 肥満判定指標の基準値は一般人口と異なっている可能性がある. 今回, 透析患者の肥満とくに内臓脂肪型肥満を検討するために, 肥満判定指標と脂質について測定し, 腎機能正常者と比較した.
対象は, 平均年齢61.0歳の血液透析患者75例 (HD群) と平均年齢44.5歳の腎機能正常者58例 (対照群) である. 両群についてbody mass index (BMI), 臍まわりでの胴囲 (W), 胴囲/身長比 (W/Ht), 臍レベルCT画像上での内臓および皮下脂肪面積を計測した. さらに, 食後採血により, 血中の総コレステロール (TC), 中性脂肪 (TG), 高比重りポ蛋白コレステロール (HDL-C) を測定し, (TC-HDL-C)/HDL-CとTG/TCを求めた.
内臓脂肪面積 (TC-HDL-C)/HDL-C, TG/TCの平均値は, 対照群がそれぞれ37.4cm
2, 1.95, 0.52であったのに対し, HD群ではそれぞれ58.1cm
2, 2.31, 0.74とHD群が有意に高値であった. また, 内臓脂肪面積とBMI, W, W/Htは両群においてそれぞれ有意に正相関した. 対照群における内臓脂肪面積は (TC-HDL-C)/HDL-Cと正相関 (r=0.532, p<0.0001) したが, TG/TCとは関連が弱かった (r=0.286, p=0.0296). 一方, HD群における内臓脂肪面積は (TC-HDL-C)/HDL-Cと正相関 (r=0.397, p=0.0004) し, TG/TCとはさらに良好な正相関関係を認めた (r=0.568, p<0.0001).
血液透析患者における内臓脂肪面積はBMIに対して高値であり, BMIでの肥満判定には問題があることがわかった. また, 空腹時採血でなくともTG/TCは, 血液透析患者において内臓脂肪型肥満の指標となり得ることが示唆された.
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