日本透析医学会雑誌
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40 巻 , 2 号
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総説
第51回日本透析医学会シンポジウムより
原著
  • 齊藤 正和, 松永 篤彦, 横山 美佐子, 福田 倫也, 吉田 煦, 増田 卓
    2007 年 40 巻 2 号 p. 147-153
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    研究背景 : 薬物治療や血液濾過装置の進歩により, 長期間の血液透析歴を有する患者の割合が増加したため, 患者のactivities of daily living (ADL) やquality of life (QOL) の維持・向上が患者管理における目標になってきた. 運動機能の低下はADLやQOLの主な規定因子であるが, 加齢や身体活動量とは独立して, 血液透析期間の長期化そのものが運動機能を増悪する因子か否かは未だ一定の見解が得られていない. 目的 : 透析期間の長期化が血液透析患者の運動機能の低下に関与するか否かを検討し, 血液透析患者における運動機能の経年的変化を明確にする. 方法 : 外来通院している血液透析患者73例 (年齢62±11歳) を対象に, 透析期間によりA群 (透析期間<5年), B群 (5年≦透析期間<15年), C群 (15年≦透析期間) の3群に分類した. 患者背景因子として, 年齢, body mass index, 透析期間, 血液ヘマトクリット値とヘモグロビン値, 血清アルブミン値を診療録より調査した. また, 加速度計測装置付歩数計にて身体活動量を測定し, 腎疾患患者の疾患特異的QOL尺度であるKidney Disease Quality of Life Short Formから血液透析療法に伴う症状の重症度の指標として「症状」, ADLの指標として健康関連QOLの下位尺度である「身体機能」を調査した. 運動機能は, straight leg raising, 等尺性膝伸展筋力と握力, functional reach, 10m最大歩行速度をそれぞれ身体の柔軟性, 筋力, バランス, 歩行機能の指標として測定した. 統計学的解析は, 各運動機能の3群間の比較に一元配置分散分析および目的変数を各運動機能, 説明変数を患者背景因子, 身体活動量および症状の重症度を共変量とした共分散分析を行い, 有意水準は5%未満とした. 結果 : 握力は, C群がA群にくらべて有意に低値を示した (p<0.05). 透析期間の影響を明確にするため年齢と身体活動量の因子を除外すると, 握力以外の運動機能は透析期間の長期化によって低下し (p<0.05), 特にC群の歩行機能は他の群にくらべて有意に低値を示した (p<0.05). 結論 : 透析期間の長期化そのものが運動機能を低下させる因子となり, 特に15年以上に及ぶ長期血液透析患者では運動機能が著しく低下することが示された.
  • 大久保 泰宏, 白石 建, 小村 賢祥, 福田 実, 山中 真理子, 猪瀬 和人, 本多 正徳
    2007 年 40 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    長期透析患者にさまざまな骨関節合併症が生じてくることは広く認識されているが, 頸髄硬膜周囲への異所性石灰化による頸髄症については知られていなかった. われわれは7例の頸髄硬膜石灰化症の患者を経験し, うち4例に手術治療を行った. 7症例の臨床像について検討したところ, 全例が20年以上の透析歴を有しており, Ca×P積が高い傾向にあった. 診断には単純頸椎CTが最も有用であり, 頸椎単純写真・MRI・ミエログラフィーでは病変の描出は困難であった. 本症は靱帯の肥厚や骨化などによる脊柱管狭窄症と同様の臨床像を呈するが, 本症での脊髄を圧迫する原因は硬膜を被うように形成された石灰化線維膜による圧迫である点が大きく異なっていた. 手術に際しても単に椎弓を切除するのみならず, 脊髄硬膜周囲の石灰化膜を剥離・切除してはじめて肉眼的脊髄所見の改善が得られた. 症状出現後手術に至るまでの期間が比較的短かった2例は著明な症状の改善をみたが, 長期間経過していた2例ではほとんど改善がみられなかった. 以上から, 長期透析患者の重要な合併症の一つとして, 頸髄硬膜周囲石灰化症を新たに認識する必要があると考えられた. 頸髄症を呈する患者の診断に際しては, 本症を念頭におき, MRIだけではなく単純頸椎CTを施行すべきと思われた. さらに, 本症と診断された場合できるだけ早期に適切な手術療法を検討するべきであると考えられた.
  • 古賀 祥嗣, 平松 信, 中山 昌明, 中野 弘文, 中元 秀友, 政金 生人, 太田 和夫
    2007 年 40 巻 2 号 p. 161-167
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    高齢者に対するPD療法に関しては, その利点が推奨されているものの, 実際の治療成績の報告は限られ不明な点が多い. 本調査は, 多施設患者を対象として, 患者生存率, 治療継続率を検討した世界で最初の報告である. 高齢者PD患者の基本的問題点として, 身体 (医学), 精神・心理, 社会的な諸問題が存在し, 検討ではこれらを包括的に捉えることが必要である. そこで, 本調査では, 身体・医学的要因に加え, 精神・心理的要因 (治療に対する患者の意思), 社会的要因 (バッグ交換実施者) を解析項目とした. 本研究は, ゼニーレPD研究会に参画している全国37施設において, 2000年4月から2004年3月末までの4年間に新規PD導入された65歳以上の全患者, 410例を対象とした. 平均年齢75.7歳の410例を4年間観察し, 以下の諸点が明らかにされた. 50%治療継続率は30.3月, 50%生存率は48か月を超えていた. 総死亡に対する独立寄与因子として, 「PD選択の希望者」, 「導入時年齢」, 「合併症スコア」, 「バッグ交換の実施者」, 「Body Mass Index」, 「CRP」が同定された. 高齢PD患者においては, 生命予後, 治療継続に対して, 合併症などの身体条件以外に, 本人の希望や治療への能動的な関与が強い影響因子であることが示された.
  • 藤井 秀毅, 吉矢 邦彦, 金 鐘一, 阿部 貴弥, 梅津 道夫, 深川 雅史
    2007 年 40 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    心房細動を持つ透析患者の特徴について検討を行った. 対象は外来透析療法を施行されている心房細動を有する患者29例 (心房細動群) とこれらと透析歴に差がない正常洞調律の患者30例 (コントロール群) であった. これら2群に関して, 血液データ, 患者背景を調べ比較検討を行った. さらに心房細動のタイプにより比較検討を行った (慢性心房細動 : 12例, 一過性心房細動 : 17例). 心房細動群ではコントロール群に比して, 年齢 (p=0.040), 左房径 (p=0.001), 弁膜症の合併率 (p=0.023), 脳梗塞の合併率 (p=0.003) が有意に大きく, アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACE-I), アンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) の投与率 (p=0.017) が有意に低かった. 心房細動のタイプによる比較では, 慢性心房細動の方が透析歴 (p=0.049) が有意に長く, 左房径 (p=0.019), 弁膜症の合併率 (p=0.001) に関しても有意に大きかった. また慢性心房細動群で脳梗塞を発症した症例は抗血栓療法が不十分であり, 一過性心房細動群で抗不整脈薬を投与されている症例のリズムコントロールは不良であった. 以上より, 透析患者における心房細動発症には年齢, 透析期間, 弁膜症の関与が考えられた. また, その管理においてはリズムコントロールは困難であり, 発症抑制にはACE-I, ARBの投与が関係している可能性が推測された.
症例報告
  • 木村 記代, 米田 誠, 横山 広美, 村山 順一, 高橋 直生, 藤井 明弘, 木村 秀樹, 栗山 勝, 吉田 治義
    2007 年 40 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全であったが, 透析導入は拒否していた. しかし, 体液貯留過剰のため緊急導入となった. 週2回の維持透析にて尿毒症は改善したが, 入院時より傾眠傾向および意欲・食欲の低下を認め, 次第に増悪し, 看護への抵抗などの精神症状も出現した. 精神科にて, せん妄状態と診断された. 神経内科では, 頭部CT・MRI上は加齢に伴う脳萎縮・慢性虚血性変化を認めるのみであったが, 脳波で全般性徐波を認めたことから代謝性脳症や自己免疫性脳症の可能性が示唆された. 甲状腺機能は正常であったが, 抗甲状腺サイログロブリン (TG) 抗体が100U/mL以上と強陽性であったことより橋本脳症が疑われた. 橋本脳症で特異的な抗N末端α-エノラーゼ (NAE) 抗体が陽性であったため橋本脳症と診断され, PSL 30mgの内服が開始された. 精神神経症状は著明に改善し, 脳波も改善を認めた. 透析患者の意識障害の原因は多種に及ぶが, 橋本脳症の可能性も念頭におき, 甲状腺機能が正常であっても, 抗甲状腺抗体や抗NAE抗体を測定することが早期診断と治療に繋がると考えられた.
  • 菅原 宏治, 武田 一人, 三浦 修平, 福田 拓也, 飛野 杏子, 若杉 大輔
    2007 年 40 巻 2 号 p. 183-188
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 以前より狭心症と高血圧があり, 2000年7月7日当院循環器内科にて心臓カテーテル検査を施行した. 3枝病変と診断し, 同年7月14日経皮経管冠動脈形成術 (以下PTCA) およびステント留置を施行した. 同年8月10日頃より両下腿に及ぶ網状皮斑および両足趾痛があり, 8月16日精査加療目的で当院循環器内科に入院した. 8月17日皮膚生検にて, コレステロール塞栓症と診断した. 前回入院時血清クレアチニン値 (以下Cr) は1.1mg/dLであったが, 8月25日Cr13.6mg/dLと腎不全が進行したため, 高度医療目的で他院へ転院した. 同日より血液透析を開始した. 透析中の抗凝固薬としてヘパリンナトリウムを使用したところ, 両足趾の疼痛を伴う壊死領域および網状皮斑が以前より増悪した. 抗凝固薬をメシル酸ナファモスタットに変更し, 網状皮斑は改善したが, 好酸球増多は持続した. プレドニゾロン (以下PSL) 40mg/日 (0.6mg/kg/日) の投与を開始し, 好酸球増多は速やかに改善した. 2000年12月12日黒化した両足趾の切断術で疼痛も改善し, PSLを徐々に漸減し, PSL10mg/日に減量した時点で同院を退院した. 2001年1月20日当院へ転院し, 透析中の抗凝固薬を低分子ヘパリン (以下LMWH) に変更し, 外来血液透析を施行した. LMWHでの血液透析およびPSL10mg/日の投与で, 約5年間生存した. コレステロール塞栓症により血液透析導入されたケースは極めて予後不良と報告されているが, LMWHを使用した血液透析およびPSLの使用により, 長期生存を得られる可能性があると考えられた.
  • 杉本 俊郎, 向瀬 督, 金崎 啓造, 牧石 徹也, 高谷 季穂, 荒木 久澄, 宗村 万里子, 出路 奈緒子, 平田 邦夫, 中澤 純, ...
    2007 年 40 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は, 脳梗塞, 左片麻痺, 腹部大動脈瘤の既往を認める, 62歳の血液透析施行中の男性. 61歳時, 心不全・腎不全のため血液透析導入. 透析導入約6か月後に, 左足趾潰瘍を認めたため入院となった. 画像診断にて, 下肢の動脈の閉塞を認め, 閉塞性動脈硬化症による足趾の潰瘍と診断, 左側膝下切断術を施行した. しかし, 切断した足趾の病理検査にて, 血管内にコレステロールの針状結晶を認め, コレステロール塞栓症の合併も認めた. よって, 透析時の抗凝固薬を低分子ヘパリンから, メシル酸ナファモスタットに変更して退院となった. 維持血液透析患者は, 動脈硬化病変の強い症例が多く, かつ, 透析施行の度に抗凝固薬を投与することから, コレステロール塞栓症の発症・再発のリスクが高いと考えられ, 下肢の末梢循環不全の発症をみたときは, 単純に閉塞性動脈硬化症によるものと判断せず, 本例のようなコレステロール塞栓症の合併も考える必要があると考えられた.
  • 木村 将貴, 吉田 一成, 藤田 哲夫, 石井 大輔, 大草 洋, 須藤 利雄, 西 盛宏, 平山 貴博, 土田 繭美, 南田 諭, 池田 ...
    2007 年 40 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2007/02/28
    公開日: 2008/11/07
    ジャーナル フリー
    CAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis) にイコデキストリン透析液を使用することにより, 残腎機能が温存されるとの報告がなされている. 今回, われわれは移植残腎機能低下による腹膜透析への再導入にあたり, イコデキストリン透析液を使用して体液管理をすることにより, 移植残腎機能を保持し, さらにはQOLの改善を得た症例を経験したので報告する. 症例は70歳, 女性. 1999年に原疾患不明の慢性腎不全にて血液透析導入となり, 2001年に屍体腎移植術を施行した. その後, 徐々に移植腎機能低下を認め, 2004年6月からCAPD導入となった. 同年8月から, 夜間の腹膜透析を1.5%ブドウ糖透析液からイコデキストリン透析液に変更したところ, 1日尿量が平均542.9±248.6mL/日であったのに対し, ICO導入後から2005年6月までの1日尿量は平均1,033.0±340.5mLに増加し, それに伴う飲水量の増加も認めた. またイコデキストリン導入後より下腿浮腫の改善を認め, その後の体重は増加し標準体重に徐々に近づいてきている. 体液量に関しては, hANP (human atrial natriuretic peptide) が平均110.2±28.7pg/mLから平均36.2±6.9pg/mL, 心胸郭比が50.8%から44.7%と各々減少し, 体液量貯留が是正されていた. 移植残腎機能に関しては, イコデキストリン透析液導入後の平均s-Cr値, eGFR値 (estimated glomerular filtration rate) は安定しており, 悪化傾向を認めていない. 加えて, イコデキストリン導入後は総コレステロール値と中性脂肪値の低下を認めており, 脂質代謝は改善されていた. QOLに関しては, SF-36 (short form 36) を用いた結果によると, イコデキストリン導入前後で明らかな改善を認めている.
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